第1話…エピソードⅦ…冬営地ジェンド《jend》

★中央アジアの人々のことわざ

馬の癖は主人が知っている、嫁の癖は彼女の両親が知っている。

1364年1月下旬の水曜日朝9時……冬営地ジェンドjend

 父のミハイルが血相変えてやって来た。

ミハイル「トグリ・テムルがエカチェリーナを探している。

アドリアンよ。お前のところにも来るぞ。

まさか匿っているんじゃないだろうな」

アドリアン「心配するな。ここには居ないよ」

ミハイル「何処かにかくまっているということか。

ここには連れて来るんじゃないぞ」

アドリアン「分かった。心配するな。なんとかする」


 トグリ・テムルが兵隊を連れて捜索に来た。

トグリ・テムル「おい若造。早くエカチェリーナを出せ。

お前のところに居ると分かってるんだ」

アドリアン「俺は知らん。

そんなに自信があるならバイ中を探したらどうだ。

言っておくが居場所はここだけじゃないぞ。

キジルクム砂漠全域に散らばっているんだ」


 トグリ・テムルは部下に命じてジェンド中のユルタを調べたが

エカチェリーナは居なかった。トグリ・テムルは諦めて引き揚げた。


 アドリアンはトグリ・テムルの様子から何となく

きな臭いものを感じた。

お母さんの出身部族のコンギラトに頼ってクリルタイを

開いて貰おう。


1月下旬の水曜日午後7時……冬営地ジェンドjend

 コンギラト部族とアドリアンのバイとでクリルタイを開いた。

事情は分かっているようだ。

部族長コメリク「エカチェリーナの居場所を知っているのか。

本当のことを言え」

アドリアン「妊娠しているので、出産が終わるまでテレングト部族

のところに預けた。子供は騎馬鷹狩猟を仕込むつもりだ。

ほとぼりが冷めるまでエカチェリーナは預かって貰う」

コメリク「ここに連れてこないのなら何とかしよう」

アドリアンは手間賃として金のインゴット100枚を支払った。


 これでトグリ・テムルは小部隊しか出せない筈だ。

攻めてくるのは分かっているのでバイの構成員総出で準備した。

バイのユルタを1ヶ所にまとめ、まわりを高さ5mの木の柵

でおおった。木の柵が燃えないようにモルタルでふさいだ。

柵の足場の上に鉄製の盾を並べた。盾の間から弓矢で攻撃するのだ。

物見櫓ものみやぐらを建てて1日3交代でまわりを見張った。

小高い丘の上なので敵の動きは瞬時に一望できる。

柵の10m、20m四方には鉄菱てつびしを撒いておいた。


1月下旬の土曜日朝5時……冬営地ジェンドjend

 物見から報告があった。正面から敵が突進してきている。

総勢3,000名の騎馬弓部隊だ。

射程距離30mまで近づくまで待った。

遊撃隊を裏から回らせた。いよいよ射程距離内に敵が入った。

弓部隊に総攻撃の司令を発した。

ばたばたと倒れていくが敵の数が多すぎる。

どんどん敵は突進してくる。

あわやと云うとき撒菱まきびしが役に立った。

ひずめに蹄鉄を付けていない馬は撒菱まきびしの痛みで

大暴れして騎馬兵は半数以上落馬した。

2ヶ所の撒菱まきびしのおかげで

敵の騎馬兵は400名に減った。

上から容赦なく弓矢を浴びせて騎馬兵を討ち取った。

残るは本営の400名だけである。

遊撃隊が襲いかかり、アドリアン自慢の槍部隊も出撃した。

トグリ・テムルとその息子2人を捕えた。

アドリアンの兵は無傷であった。


 直ちにコンギラト部族の長コメリクに知らせ、クリルタイを開いた。

アドリアンの有利に交渉は進んだ。

アドリアンをスルタンとし、ジェンドの領有とエカチェリーナとの

婚儀を認める。トグリ・テムルはアドリアンに対して賠償金として

金のインゴット1,000枚を支払う。

アドリアンは直ちに捕虜3人を解放する。


★セメントの製造過程

①原料調合

 各原料「石灰石……カルシウム、粘土……シリカ・アルミナ、鉄……鉄分」が

一定割合で混ぜられ、それを乾燥して、原料粉砕機で細かく砕き、粉末にして

サイロに貯蔵されます。

②クリンカ焼成

 粉末となった原料をキルンと呼ばれる回転かまに入れ、キルンが回転して

原料が窯内をゆっくり移動していきます。窯内温度は最高1450度Cに達し、

これにより化学反応が行われて、セメントの元となる「クリンカ」という石状の

鉱物ができます。

③セメント粉砕

 石状のクリンカと石膏を混ぜ合わせ、ミル粉砕機で粉末状に粉砕し、これで

セメントができあがります。

★アドリアン14歳

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