プロローグ
カーテンを開けなくても、部屋の中が明るいのは分かった。
わずかな布の
反射的に
──
三秒後に失われるまどろみの中に、エマ・グレイス・シーグローブはいた。
「エマ! いつまで
「……ええ……もう少しだけ……」
言葉にできない
「今日は
──ああ、やっぱりここはまだ夢の中なのだ。
だって、自分はもう十九歳。とっくに独り立ちをしている。魔法学校に入寮したのは十五歳の春のこと。昨日起こった悪夢のせいで、一番幸せだった時期の夢を見ているのかもしれない。
もっとも、あれは悪夢ではなくて現実だったけれど。
とりあえずこの眩しさを何とかしよう、とベッドの中から手を
エマの部屋は一年前からこのローウィル王国の王宮に置かれていた。ベッドのすぐそばには窓があって、魔法を使わなくても寝転がったままカーテンの開閉ができるところがお気に入りだ。
頭からブランケットを被ったまま、ぬっ、とベッドから手を伸ばす。あるはずのものがそこにないことを知る前に、その手はぴしゃりと
──痛い。
「いい加減に起きなさい!」
しがみついていたブランケットから引きはがされ、その反動でエマは
「い……痛い」
「エマ、もう十五歳なのよ。いい加減になさい。今日からあなたは魔法学校の寮に入って一人暮らしをするっていうのに……そんなんじゃ、心配だわ」
目を
どちらにしても、美人と評判で
「……エマ? 何か様子が変ね。……予定にはないけれど……あなた、『
「まさか」
母のありえなすぎる問いに、エマはつい反射的に否定した。
「そう。そうよね。……あ、今日はあなたの
──ああ、あのバーナード様ですか。
せっかくの祖母
「……はーい」
心の中で毒づいたけれど、あのふてぶてしい彼の顔を夢でまで思い出したくなくて、適当に返事をする。
エマが床から立ち上がってベッドに
『……カーテンを』
人差し指を窓に向けて軽く
やっぱり、窓は開いていた。そこから
「……それにしても、本当にリアルな夢」
あるはずがないとは分かっていながらも、エマは自分の右手の
『印を』
昨日を最後に、ここに
──けれど、予想に反して手の甲に浮かんだのは『∞』だった。
「……!」
エマは息を
そして最後に、
彼が口づけたのは、
(……い、痛い)
信じがたい違和感に、エマは
──えっ、待って。もしかして、これは夢ではない?
ぼうっとしたままの意識の、
エマはやっと察した。自分は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます