死神協奏曲
秋之 鵺
プロローグ
死神の姿を見るための条件は大きく分けて二種類ある
一つは、すでに死んでいる事
死んでいるにも関わらずそれに気付かない者や認めようとしない者の元に訪れる場合が多い
一つは、三日以内に確実に死ぬことになる者。但しこの場合、はっきりと死神の姿を捉える事が出来る者はほとんどいない、特殊な条件下でのみ、姿を見る事が稀にある程度だ
病気、事故、自殺、何で死ぬかは決まっていないが、それを覆す事は決して出来ない
死神を目撃したが最後、明日なのかあさってなのか、確実に訪れる死を覚悟し受け入れねばならない
ごく稀に他の要因によって死神を目撃する者もいるにはいるが、ほとんどの場合死んでいるかこれから死ぬかに分けられる
死神の姿を目撃したとして、それは喜ばしい事ではないということだ
但し勘違いをしてはならない事がある、死神が死を運んでくるのではない、死神は魂を運んでいくのだ、道を外さないように
「人間の魂というものは、どうしようもなく道に迷っている。」
・・・・・・
「はい、ただいまっと」
靴を脱ぎながら誰もいない真っ暗な部屋に向かって呟く
廊下に面した台所のシンクで顔を洗い、軽く酔い覚ましをしてからドアノブを回し部屋へと足を踏み入れた瞬間、中から何者かの気配を感じた
空気は凍えるほどに冷たく、一瞬で手足が冷え切っていくのが分かる
廊下と部屋の狭間で立ち止まったまま耳を澄ましてみるが、とくに何かが動いている様子は感じられない
ただすぅすぅと寝息のような声が聞こえてくる
(合い鍵は誰にも渡したことなんてない。泥棒の類が侵入していたとして、その場で寝るなんてことがあるのだろうか?)
考えながら少し深呼吸をする、普通なら心臓の音が聞こえるほどのシチュエーションなのかもしれないが、不思議と鼓動を感じることはなかった
(いつまでもこのまま立っているわけにはいかない。気配の正体を掴み、場合によっては警察に連絡しなければ)
心の中でそう呟くと意を決して部屋の電気を付ける
パチンっとスイッチの音が鳴ると共に
光に照らされ浮かび上がったその正体は
一人の少女だった
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