なんだかわからない話

フジセ リツ

第1話

あるところに男がいた。

男は、30を過ぎてもぶらぶらしている。

部屋には閉じこもってはいない。

至って元気に過ごしている。

お腹の脂肪を気にしては、たまに、筋トレをしたりする。

男は、毎日をつつがなく過ごしている。

退屈するでもない。地震が起きようが、周りの同級生が結婚しようが、おかまいなしである。


男には、家族がいる。


両親は早くに死んでしまったが、妻がいた。

妻は男が28歳のころ出会い、結婚した。

男がある日、女がパチンコ店の前で、空っぽの財布を覗きこみ、ため息をついていたので、なけなしの金で、缶コーヒーを買い、女に差し出した。

女は黙っていたが、男の家についてきた。女は、そのまま女の家に居ついて、男の妻になった。


男は女の名前や年齢も知らない。国籍すらわからない。


女は男の家に居つくと、ぶらりと出かけ、2,3日帰らないこともあったが、しばらくすると、戻ってきた。


女は数ヶ月経つころ、妊娠した。

女は妊娠してからは、出かけることが少なくなった。

出産が近づいたころ、女は男に、甘酒が飲みたい。と言った。

男は、甘酒を買いに出かけた。

男が甘酒を買い家に戻ると、居間に

女の姿はなく、女の赤ん坊が泣いていた。


男は、女が誰であったかわからない。赤ん坊の親も誰だか知らない。


男はぶらぶらするだけである。

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