一人っ子の人生

長谷川 ゆう

第1話 一人っ子、鍵っ子

令和に入り、子供に関わる事件が多い中、「鍵っ子」と言う言葉は、死語かもしれない最近



私の子供の頃は、両親が共働きだったので、家の鍵を持たされ、家に独りで帰りました。



「ただいま」と言えば「おかえり」と言う人もいない、真っ暗な部屋に帰るのが当たり前で、

大人になり、家の事情で数ヶ月、独り暮らしをしていましたが、ホームシックにもかかりませんでした。



周囲からは、「寂しくないの?」といわれましたが、そもそも、家に帰っても誰もいない子供時代を過ごした私は、寂しいと言う感覚すらつかめませんでした。


逆に「寂しいって、どんな気持ち?」と聞くと「家族が恋しいとか、帰りたいとか」と言われて戸惑いました。


行きたい場所があるとしたら、初孫の私を可愛がってくれた祖父母の家や、会いたい人は、血の繋がりもない叔父だったからです。



私が困ったのは、小学生の時、玄関に置いてある鍵を忘れて、家に入れなかった時くらいです。


学校は、すでに終わり、児童館のような場所にも行っていなかった私は、近所の顔見知りのおばさんの家に勇気を出して行き、パートの母親が帰る時間まで、待つことでした。


一人っ子の私が頼れるのは、家の鍵だけだったのです。


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