第3話 不思議な話は記録に残して

「落ち着いて。ククルさんに、ちゃんと治して貰わないといけないんだから……」

 保健室に着いてすぐ、ククルという名の看護師に、傷薬を塗って貰っているララ。傷口に染みるのか、ツムギに抱かれながらも、ジタバタと落ち着かない。痛そうな顔をしているララを側でルトが不安そうに見守っている

「その子、レアスの子よね。後で職員室に連れてくの?」

「はい。さっきも連れてくるように言われてて……」

 ぎゅっと抱きしめ少し元気の無い返事に、ツムギの傷のある腕を取り確認しはじめた

「元気ないわね。そんなに傷が痛い?」

「いえ。私、レアスと一緒のグループだったので……それで……」

 困ったように笑って話すツムギ。つかんだ腕にあった傷の治療が始まって、少し傷口が痛むのか表情がゆがむ

「魔法使ったの見たことないし、さっきもずっと、空ばっかり見てて、ちょっとムカついて、嫌なこと言っちゃったって……」

「えっ?あなた、レアスが魔法使ったの見たことないの?」

「はい。でも、私達と一緒だから魔力は高いんじゃないかって、ナオとカホ達と、さっきまで話してたんですけど……」

 話をしながら段々とうつ向いていくツムギとは対照的に、ルトとララがまたドタバタと騒ぎはじめた

「二人とも。喧嘩はダメだよ」

 無理矢理、喧嘩を止めさせようとルトを抱きしめ頭を撫でると、ちょっと苛立ちが収まったのかニコニコと笑ってツムギを見るように少し顔を上げると、ツムギと目があって、ツムギもクスッと笑うと、ふと目の前で険しい顔をして考え込んでいるククルの姿に、恐る恐る声をかけた

「あの……ククルさん」

「分かったわ。あなたの治療も終わったから、さっさと職員室に行って、今日は休むように」

「……はい。ありがとうございます。ララ。帰るよ」

 ツムギの言葉を聞いて、また肩に乗っかったララ。ルトがララを見上げムッと怒っている顔をしても知らないふりをしているララ。二人の様子にツムギが少し呆れつつ保健室を後にした






「不思議ですね。魔法を見たことないって、必ず魔術検定は受けたはずですし」

 ツムギとララの怪我の治療の片付けをしていると、ツムギの話を聞いていた助手が話しかけてきた。

「……そうね。不思議ね」

 小声で返事をするククルに、助手が不安な顔をしているとコンコンと扉を叩く音が聞こえ、扉の方に振り向くと同時にリンが保健室に入ってきた

「おや、大事な話の最中だったかな?」

「いえ。大丈夫よ。どうしたの?」

「負傷者が思っているよりも出ているそうで、治癒能力のある術者が足りないそうだ。応援に行って欲しい」

「分かったわ。でもその前に、報告書を書くから、あなたは先に行ってくれる?」

「はい」

 ククルに言われ急いで保健室から出ていく助手を見届けたリンが、机に向かって報告書を書きはじめたククルの姿を見ながら不思議そうに声をかけた

「報告書?何かあったのかね?」

 リンの問いかけに、報告書を書いていた手を止め振り向くと、リンの顔を見てクスッと笑った

「ええ、とても興味深い話を聞いたの。とても面倒な事が起こりそうよ」

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