霊能力
海鮮かまぼこ
霊能力
「はあ?冗談きついぞ」
同僚が呆れたように言って来た。
「ホントだって」
俺は真面目な顔で答える。まったく、みんな揃いも揃って俺の「霊が視える」能力を信用しない。確かに今、同僚の後ろになんとも表しがたい何かがいた。俺は少し腹立たしい思いをしながら
「あっそ、もう知らね」
と言ってその場を去った。思えばこの能力、大学の時くらいに発現した。子供の頃に能力バトル漫画を読み漁っていた俺は、そういった能力が欲しいな。と心のどこかで思っていて、能力に気付いた時はものすごく嬉しくて、興奮して、夜通し一睡もできなかった。自分だけが視えて、他人には視えない事の優越感に浸っていた。しかし、しばらくするとその事で怖くなった。自分だけが視える。だからどれだけ怖い霊を視ても、誰にもすがれない。バトル漫画のように、頼れる仲間がいるわけでもない。そして俺はバトル漫画の主人公のように強い精神や機転の良さ、強靭な体がある訳ではない。ずっと1人でこの能力と向き合わないとならないと思うと、心が潰れそうだった。そして、霊を視るのが怖くてたまらなかった俺はだんだん外に出ることがなくなっていった。しかし、そんな自分を変えるきっかけがあったのだ。一つ上のその先輩は、俺と同じく霊が視える人だったのだ。その先輩は俺の友人のサークルの人で、友人から俺が「視える」事で悩んでると相談を受けていたようなのだ。先輩に支えられ、俺は立ち直る事ができた。あの時、先輩に出会わなければ今の俺はいなかっただろう。そして今、俺は順風満帆とは呼べないが、それなりにまともな生活を送れている。あっ、そういえば来週は会社の健康診断だ。まあ大丈夫だろう。そう思って受けた健康診断から少しして、結果が帰って来た。その中で、1つの項目が俺の目を引いた。
「アルコール中毒 本人曰く霊が視えるらしいが、おそらくアルコール中毒による幻覚の症状だと思われる。血中アルコール濃度が異常に高い事からも、アルコール中毒で間違いないだろう。」
霊能力 海鮮かまぼこ @Kaisen-kamaboko
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