第六話
その日の夜。
『春川さん?』
俺は勇気を振り絞って春川さんにLINEを送った。
とても緊張した。
でも、今日の勢いを消したくなかった。
しばらくすると、『どうしたの? 耕平くん?』と返事が返ってきた。
『改めて、よろしくを伝えようと…』
『なにそれw、まぁ……よろしくwwかな?』
『うん……よろしく…」
俺はスマホを置いて「くそぉお!!」と叫んだ。
ダメだ、話を続けられない……何か見つけ出さなければ……。
明日だな。
明日、翔太を使うとしよう。
○
そして次の日、俺は翔太に聞いた。
「あのさ、春川さんって好きなものとかある?」
「んだよ? そんなこと聞いて……もしかして、桜のことが!?」
「そうじゃない。うまく喋れなくてよ……ほら、お前の手伝いを……」
「ごめんよ、俺、あいつの好きなもの知らないんだ……」
こいつ、使えねぇな。
結局、お前は身体目当てで春川さんを好きになってんだろ?
そんな思い、すぐに潰してやるよ……俺が。
仕方がない。
本人に聞くか……。
「そうか、ならいい……」
「おうよ!」
いや、待てよ……別に好きなものを聞く必要はない。
確か、今日は文化祭の役員を決める日だ。
そこで、整備役員と言った一クラス一人ずつで掃除の中心になったりする役員になれば、春川さんと話すことができる。
その為には、春川さんがやろうとしている役割を把握しておく必要がある。
しかも、そういう役割になるように誘導する必要も。
「なぁ? 翔太?」
「ん? どうしたよ?」
きっと、こいつと春川さんは同じ役割に就くと事前に話しているはずだ。
なら………。
「今日ってさ、文化祭の役割決めるだろ? それで、お前と春川さんはどこの役割をやる予定なんだ?」
俺がそう言うと驚いた表情をして。
「なんでそれ知ってんだよ……」
やはり、そのようだ。
だったら、簡単だ。
「それで、どこだよ?」
「俺と桜は掲示をやる予定だよ」
「そっか………ならさ、翔太。俺とそこ代わってくれないか?」
翔太と代わればいいんだ。
そうすれば、春川さんとなれる。
しかし、これにはそれなりの理由が必要だ。
でも…………。
「なんでだよ?」
当然の反応をする翔太。
「いや、よ? 確かに、翔太が一緒になる方法もあるけどさ、そうするとよ? 春川さんと俺が一緒にいる時間が減るだろ?」
「なんだそりゃ? 別にいいじゃねぇかよ?」
「それがだよ。そうなると、春川さんが俺に翔太のことについて相談するのも減るって意味じゃねぇかよ? 別に俺はそれでいいならそれでいいけど……その分、お前たちがこの先に行けるかはわからん」
今の翔太は春川さんとヤることしか考えていない。
だから、この口実でいけるはずだ。
「ほんとにそれで、できるんだろうな?」
「あぁ、もちろん。任せておけ! 相談されなくとも、俺はお前のいいところを沢山伝える」
「そっか………」と大きくため息をつく翔太。
まぁ、もちろん全部嘘だけどな。
俺はただ、春川さんとの関係を築きたいだけだ。
できれば、文化祭終了までに。
きっと、それ以上は翔太に怪しまれる可能性がある。
「どうだ?」
「確かに、お前の通りだよ。だから……わかった……………」
「ほんとか!?」
「あぁ、でもな。念のため聞いておくけど、お前は桜のことを狙ってないよな?」
「あぁ………」
そして、俺は自然と流れそうになった涙を堪えて笑顔で。
「俺にはうららがいるからな!!」と言った。
なんで、俺、泣いてんだ……?
全く、そのことに対しては理解できなかった。
「なら、わかったよ。代わろう……」
ふん、ちょろい奴め。
これで、春川さんとの関係を……築き上げることができる。
そして、翔太を地獄に落とす準備ができる。
○
その後、俺は無事に掲示係になることが出来た。
そして、今は顔合わせだ。
俺は指定された空き教室に行くと──。
「あ、春川さん……」
「え? ………翔太は?」と不思議そうな顔をしながら言う春川さん。
それもそうだ。
だって、ほんとは翔太が来るはずだったのに俺が来たから。
「ちょっと、翔太、推薦で実行委員行っちゃってよ」
「はは、そうなんだ………よかった……耕平くんで……」
「え?」
「だって、知らない人来たら怖かったから……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます