ひまわり完結

大西洋一

第1話最初で最後の恋

また、新しい学校か

何度も父親の仕事の転勤の度に、転校を繰り返している水樹。

性格は明るく、少し勝ち気な性格の高校三年生で、見た目は髪は肩まであり、何処にでもいる感じの女の子。


高校三年の夏休み前の転校となると、友達が出来ても、直ぐに卒業だし、今回は少し田舎街で、全校生徒400人位の小さな高校だったので気乗りはしていなかった。

『木下水樹と言います。宜しくお願いします』

私は、黒板の前に立って挨拶をした。

『木下さんは、窓際の席に座って下さい』

優しそう先生がいった。

私は言われた席に行くと、後ろの女の子が

『私は、山本玲奈宜しくねっ』

私を見て言ってくた。

もう早友達が出来たと思い

『此方こそ、宜しくね』

私は満面の笑顔で答えた。

席に着いた私は、校庭の方を見ると

青い海が見えていて、海のある街に住むのは初めて、こんな街に住めて幸せだと思った。

そして、後ろの玲奈ちゃんも感じのよさそうな女の子だし、早速一緒に帰ろねと言って来た。

私も案の定、直ぐにクラスに馴染む事も出来て、これからって言うときに、明日から夏休みだった。

『明日から夏休みだけど、何処かに行くの』

私と玲奈ちゃん、そして香住の3人で

明日から夏休みなので、カフェでも寄って帰る事になり、3人は校舎を出た。

『あれっ』

私は鞄からスマホを出そとした

『ない、スマホがない』

私は教室の机の中にスマホを忘れて来た事に気が着いた。


『先に行っていて...後から行くから』

そう言うと走って校舎に戻った。


明日からは夏休み、その為、部活も休みで校舎内には人影も無く、水樹は廊下を走って教室に、古い校舎でドアを開けると、木と木が擦れた音が静な校舎内に響いた。

水樹は教室の中に足を一歩踏み入れた時、1人の男の子の姿があった。

『えっ…誰』なのと思いながら

窓際の机の椅子に座っている男の子、その席は水樹の席で、どうして私の席に座っているのと思いながら、先ほどまでとは違い足音を忍ばせる様に後ろから男の子の所に近づいた…

『あの、そこ私の席だけど』

水樹は男の子に声を掛けた。

『ごめん…』

男の子は此方とチラッと見た。

なんか感じの悪い男の子

このクラスに転校して2週間、クラス全員の名前は覚えていなかったが、顔だけは覚えたつもりでいたが、初めて見る顔だった。

男の子は椅子から立ちあがり、窓際の方に行って、私を無視するかの様に外を見ている。

水樹は慌てて机の中からスマホを出して鞄の中に入れて、教室から出ようと入って来た入り口の方に向かったが、外を見ている男の子が気になり近づいて

『さっきから何を見ているの?私は木下水樹…君は…』

水樹は後ろから声をかけた…

『俺、誠也…桜井誠也』

誠也は愛想ない顔をして面倒くさそうに答えた。

何を見ている?何を見ようと勝手だろうと思ったが

『アソコの向日葵畑、凄く綺麗なんだよ』

誠也は指を差して微笑みながら言った。

誠也は、満開と言うのには程遠い、黄色よりも緑が目立つ五分咲き程の向日葵畑をじーっと見ていた。

『うーん....そうね』

水樹も誠也の横に立って校庭を眺めながら…

男の子なのに、お花が好きなんて少し変わった男の子と思い、誠也を見ると、水樹よりも少し背が低く、あどけない表情の男の子だった。

ひまわり、確かにひまわりはあるが緑の方が多く、黄色い絨毯とは言えなく、私はまだまだ広く、綺麗なひまわり畑を知っているよと思いながらも、何となくここから見るひまわり畑もいいかと男の子と一緒に見ていた。

あっ…もう行かないとと思った水樹は窓際から少し離れて教室を出ようとしたが、やはり男の子の事が気になった水樹...

『ねぇっ…一緒に見に行ってくれないの』

少し大声を出して...

それを聞いたのか男の子は、無言のまま水樹の所に近寄り、そして水樹をチラッと見て教室を出て廊下を一人で歩き始めた。

なんか変など奴…水樹は慌てて後を着いて行く

『そんなに早く歩いたら、転んでしまうよ…ちょっと待って』

急ぎ足で着いて行く、水樹を振り返る事も無く、誠也は玄関に行って靴を履きかえ校庭を歩いて、明後日から台風が来るらしく、グランドには強い日差しが2人の影だけがグランドに映っていた。

私達は向日葵畑に着いた。

誠也君は

大きく両手を上げて、深呼吸して

『綺麗でしょう・・いい香り』

微かに花の香り、土の香りがしていた。

『ここに来ると、落ち着くんだ』

それを見た水樹も、黒い鞄を放り投げる様にして、大きな声で夏の空に向かって

『私、向日葵大好き…』

水樹は向日葵、向日葵と言うよりも向日葵畑には、大切な思い出があった。

『どうして、落ち着くの』

水樹は、誠也を見て聞いた。

『自分でもわからないけど、こうやって見るのが好きなんだ』

誠也は膝を曲げて、向日葵より小さくなり向日葵を眺めている。

『変なの』

変わった男の子と思ったが水樹は、鞄からスマホを出して

『せっかくだから、写メ撮ろう』

この位置がいいかな、独り言を言いながら向日葵畑の中を歩いて

『夏休みが終わった、向日葵は無くなるねぇ』

〈カシャッ〉

スマホからシャッター音が

水樹は向日葵畑の中を歩き回りながら何度も写メを撮った。

『わぁー大変…ない、ストラップ…誠也君も探して』

慌てて、中腰になり探し始めた水樹だった。

『私の宝物なの』

少し顔を赤らめて、必死に探す水樹、それを見た誠也も探し始めた。

どんなのストラップとも聞かずに探す誠也は、向日葵のストラップを見つけて

あれっ、誠也は向日葵のストラップを拾って、それを右手に持ちながら探していたいて

『誠也君、教室かも…』

水樹は誠也を見て言った

『そ…それ、誠也君だったら』

校舎に戻ろうとする誠也の右腕を軽く叩いて

『早く言ってよ、ありがとう』

水樹は誠也の右手に持った、向日葵のストラップに手を掛けた

『これ、俺のだよ』

誠也は少し驚いた顔をした

『だって…』

水樹は誠也を見て不思議そうな顔をして

『それ、私のだよ』

誠也君、誠也、せーちゃんなの頭の中であの日がよみがえった水樹。

あの、5年前の夏休み

私は両親と千葉にある向日葵公園に1泊旅行に行った時だった。

私が一人で向日葵畑を歩いていたら、一人の男の子が土手に座ってテレビゲームをやっていた。

こんな所だゲームなんてと思い、こっそり男の子の後ろに行って

『ねぇー、そこで何しているの』

私は声を掛けたのだった。

男の子は、此方を見てから無言のまま

向日葵畑を歩きだし、私はちょっと面白そうだったので、後を着いていった。

『俺の後、着いて来るなよ』

『そんなに忙しいで歩かないでよ、転んじゃうよ』

あの時の男の子なのと男の子を見て思った

ジーンズにŢシャツ姿で、私より少し背が低くて、初めは年下の男の子かと思っていたが、私が何度も話しをかけたので、立ち止まり

『少しだけなら付き合ってあげる』

男の子は微笑みながら言った。

それが私と、誠也との長い恋の始まりだった。

『もしかしてせーちゃん、私、ミーだよ、覚えている』

誠也の手にしている向日葵のストラップを取って

『これ…見て』

ストラップの向日葵の裏には、相合い傘がが書かれていて、そこにはせーちゃん、みーちゃんと書かれていた。

それは、あの時に二人で書いた相合い傘だった。

二人は、向日葵畑の横にあった、売店に寄って

『友達の証に、何か買おう』

私はせーちゃんを見て言うと、せーちゃんは向日葵のストラップを手に持つて

『これ買おう』

そのストラップは向日葵の可愛いストラップだった。

私達はストラップをレジに持って行くと、レジにはおばあちゃんがいて、私達を見て

『おばあちゃんから買うと、幸せになれるんだよ』

そう言って袋に入れて、渡してくれた。

そして二人はストラップを持って、土手の所に言って紙袋からだした。

『ちょっと待って』

私は、鞄からクラスで流行っている蛍光色のマジックを出して

『私のクラスで相合い傘が流行っているんだ』

『相合い傘って?』

せーちゃんは、此方を見て言った。

『相合い傘って』

私は買って来た、向日葵のストラップの裏に相合い傘を書いて見せた。

『ただの矢印なんだ』

せーちゃんって、何も知らないの、キチンと学校行っているの?そう思った私は相合い傘にみーって書いた。

そして、せーちゃんにマジックを渡して

『横にせーちゃんって書いて』

せーちゃんは、私の言った通りに

せーと書いた。

その向日葵のストラップが

それを見た誠也は驚いて、自分のスマホを見た。

少し色褪せた向日葵のストラップがスマホに付いていた。

『みーちゃん…』

驚いた誠也は水樹の方を見て

『本当にみーちゃん』

会いたかっ…絶対、もう一度会えると思っていた。

誠也は水樹の両肩に手を軽く掛けて

顔を少し確認する様に見て

『右目の横にホクロがある、みーちゃんだね』

そう笑って水樹を見た

『ごめん…』

そして水樹も誠也君を見て

『ごめん…』

二人はお互い顔を見合わせてすまなそうな顔をした。

あの日、水樹は、次の日の朝早く誠也と待ち合わせをしていたのだった。

将来の夢の話しの続きをすること約束だったのに、朝、目を覚ますと大雨、コテージを出ようとした時

『みーちゃん、何所に行くの、こんな大雨なのに』

水樹の母親の声が、水樹は誠也に会いに行く事が出来なかった。

『ごめん…俺も、、朝行かなかったんだ』

誠也は、明日、台風が来るからと言われて、その夜に両親とここから30㌔離れた父親の実家に帰っていたのだった。

『そうなの、よかった』

今はこうして、誠也君にもう一度会えたのだから、夢の続きの話しは、いつでも聞けると思った水樹。

夏休みが終わったら向日葵はなくなっているけど、誠也君には、いつでも会えると思った水樹は

『もう、行かないと…』

『また、休みが明けに』

そう口にして水樹が帰ろうとした時

『明日、向日葵畑行かない』

背中を誠也に向けた時、後ろから水樹を呼び止める声が

あの時と全然誠也君は変わっていないと思った。

愛想ない話し方、相手の事なんて気にしないで話しをする誠也君だった。

明日…うーん、ここからだったら

バスで二時間、日帰りで行けるし

確か、朝の早いバスが駅前からあるかもと思って『うん…それって…デートの誘い』

そう言おうとした時に

『水樹…』

大声で叫びながら、先に帰っていたはずの、友達二人が走って来た…

水樹も花畑を少し出て

『ごめーん、ちょっと』

『なにしての、こんな所に一人で』

慌てたた水樹、勘違いされても

『向日葵を見ているの?』

友達の怜奈が水樹を見て言った

『うーん』

早く誠也君、私から離れて、勘違いされちゃうよ、そう思いながら、後ろを振り向く誠也君の姿はなかった。

いつ、いなくなったの…明日の事の返事もしていないのに、誠也君だったらと思った。

明日はどうしようかと思いながら玲奈達とカフェに寄って家に着いた。

家に帰った私は

『ママ....』

食事を食べ終わり、リビングでテレビを見ている時

『ママの若い頃に着ていた洋服あるよね....』

『あるけどどうして...』

テレビを見るのをやめて水樹を見て

『明日、お出かけするけど、それで貸して欲しくて』

『別に好いけど、地味でないかしら...』

水樹は、それでよかった

『ママの白のノースリのワンピースを貸して欲しいな』

あの服って、水樹には大人っぽくないのかと思いながらも

『みーちゃん....もしかしてデート』

水樹にも彼氏が出来てもおかしくない年頃だと思って聞いた。

『違うよ....怜奈ちゃん達とランチに行くの』

何故か、誠也君と遊びに行くと言えなかった、それは、ママに初めてついた小さな嘘だった。

『そうなの、怜奈ちゃんはお洒落だから、水樹も少しお洒落になったのかな』

そう笑いながら寝室から、白のワンピースを持って来て、水樹に渡した。

受け取った水樹は、部屋に戻りジーンズ、Tシャツを脱ぎ捨てて、ワンピースを着て、自分の姿を見ている。

うーん...似合わないかな?いつもジーンズの水樹はとは違い、少し大人になった水樹に見えた。

だって、あの時も私、白のワンピースだったから、白のワンピースを着て行きたいし、これにピンク色のカーディガンを羽織ったらと大丈夫と思い、水樹はそれを着て行く事にした。

明日は、晴れます様にと、白のワンピースをハンガーに掛けてベッドに。

白のワンピースは、まるでてるてる坊主の様に思えた水樹だった。

目が覚めた水樹、部屋には夏の日差しがさして

やばい...もう、こんな時間、時計を見て、慌てて起きた水樹。

ワンピースに着替え、ピンク色のカーディガンを羽織、昨夜のうちに用意をした置いた鞄を手にして、階段を駆け下りた。

『ママ....ご飯いらない』

キッチンに立っている母親に言った

『こんな早く怜奈ちゃんの所に...』

あっ、そうだった

昨日、怜奈とランチに行くと言ったのだった。

『うん....遊園地に行ってからランチなの...』

テーブルのパンを少し口にして

『いって来るね...』

『気をつけて行ってくるんだよ』

水樹は慌てて家を出た。

水樹は、履き慣れていないお母さんから借りた赤いパンプスを履いて、急いで駅に向かっていた。

昨日は、返事もしなかったし、誠也君は本当に居るのかなと思いながらも、駅まで急いで歩いた。

もう少しかな....

駅前のバス乗り場で待っている誠也。

ジーンズにシャツ姿、そして黒い鞄を肩から下げていた。

そう言えば、昨日は行くともハッキリ返事が貰えなく不安だが、きっと来ると信じて、遠くを見ていると、

白のワンピース姿の水樹が目に映った。

誠也は大きく手を振ろうとしたが、照れくさいのでやめ、水樹が来るのを知らない振りをして待っていた。


あっ、誠也君だ

水樹は誠也の後ろからこっそりと行って、少し大きな声で

『おはよう....』

水樹は微笑みながら

誠也君は振り返って

『おはよう』

『少し待ったかな?昨日...知らぬ間にいなくなるんたも..』

少し怒った振りをしながら

『塾だったから...』

微笑みながら誠也は言った

『何か飲む....』

誠也にとっては、初めてのデート

緊張しているのか、喉が渇いた誠也。

『うん』

二人はは自販機の所に行って

『私はオレンジジュース...』

誠也は、ポケットから小銭を出して、小銭を自動販売機に入れると、

ガタンと音がして、オレンジジュース、そしてメロンソーダが出て来た。オレンジジュースを水樹に渡して、誠也はメロンソーダを手に持ってバス停に....

朝早いのに日差しが強く、誠也の目にはピンク色のカーディガン、そして白のワンピース姿の水樹が眩しく、あと家族連れ、カップルなどの10人がバスが来るのを待っていた。

『あっ...来た』

遠くに青色のバスが....

二人は不思議な気持ちを覚えて、バスに乗った。

水樹は窓側、そして誠也は通路側だった。

『誠也君は向日葵の里に行くのはいつ以来なの?』

『水樹に会った時からは行っていないんだ』

『そうなの...私は毎年家族で行っているんだ...まだ、少し古くなったけど、あのカフェあるよ』

『本当に....そこに行って見たいな』

誠也は声を弾ませて言った。

『そう...あの時のソーダ水、覚えている?』

誠也の右手に先ほど買ったメロンソーダを見て笑いながら

誠也も覚えていた。

ペパーミント色したカフェ、二人は向日葵畑を歩いていると、水樹は誠也に

『喉渇いたよ....アソコ行かない』

水樹はペパーミント色の壁のしたカフェに指をさした。

二人は、まだ小学6年生、誠也、水樹にとっては大きな冒険だった。

2人ともカフェになんて入った事もなくく、幼い二人がカフェ、大丈夫かな?怒られるかな?そんな事を話しをしながらもカフェに....

誠也は店内の奥に行く勇気がなく

オープンテラスの所に向かって無言のまま座った。

それに続いて水樹も、木製のアンティーク調の椅子に座った水樹

『本当、喉渇いたね...』

『うん...』

二人は二時間前に出会って、学校の事、勉強の事、今はクラスで流行っている事を沢山話しをしたので、本当、喉がカラカラだった。

『みーちゃんは何にするの?』

誠也はメニューを見た。

高い...そう思ったが、お小遣い貰ったから大丈夫と自分に言い聞かせて誠也は

『俺....メロンソーダにする』

じゃあ私は『炭酸飲めないから、オレンジジュース』

そこにオーダーを店員が聞きにに来た。

『メロンソーダとオレンジジュース』

誠也は生まれて初めて注目をした。

『はい、わかりました』

微笑みながら誠也を見て言った。

『よかったねっ...怒られるかと思った』

水樹は、小学生が二人でカフェなんて駄目かと思っていた。

二人が座っているテラスからは右手には向日葵畑、そして左手には青色の海が見えている。

『せーちゃん...見て、海が見えるよ』

『本当だ...』

身を乗り出して二人は見ている。

『お待ちどうさま...オレンジジュースは?』

誠也は慌てて、水樹の方に指を指した。

水樹にはオレンジジュース、そして誠也にはメロンソーダがテーブルに並んだグラスは細長くお洒落なグラスだった。

『わー、せーちゃんの綺麗....』

誠也のメロンソーダは綺麗なグリーン色をしていた。

水樹は誠也のメロンソーダのグラスに顔を近づけて縦長のグラスを横から、水樹は見ると

『わぁー、こうやって見たら海が綺麗に見える』

グラス越しの海はエメラルドグリーン、そしてグラスの中は炭酸が遊ぶ様にグラスの中を動き回っていた。

聖也はそんな水樹の姿を見ると、何故か胸がキュンとした。

そして聖也も、水樹の顔に自分の顔を少し近づけて見た。

そして二人は株主を出ると

二人は土手に並んで座っていた。

『みーちゃんは何になりたいの?』

『私は保母さんなんだ』

私は幼稚園に行っている時に、凄く優しい先生がいて、その先生に憧れていた。

『せーちゃんは』

『俺、歌を唄う仕事したいんだ』

唄う仕事って?いったい何だろうとと思い

『音楽の先生なの』

せーちゃんは私を見て笑っていた。

『違うよ、歌を唄ってテレビに出たいんだ』

『アイドル?』 

まぁ可愛い顔をしているし、もしかしたら大丈夫かもと思ってせーちゃんを見ると

『自分で歌を作って、唄いたいたいんだ』

凄いと思った私だった。

そんな事を思い出していたら

『次は終点、向日葵の里』

アナウンスが流れた。

もう着いたのと思った誠也、もう少し並んで座って居たかった、バスが揺れる度に、二人の距離は近くなっていたのに、そんな事を思っても可笑しくない年の頃の誠也。

二人はバスを降りた...

花の甘い香り、そして夏の日差しが二人を照らしている。

『ここだね....』

二人は少し歩いて向日葵畑に

夏休み、沢山の人、そして売店、カフェあの時と変わっていなかったが、向日葵畑が少し小さくなって見えた。

『向日葵畑、こんなにせまかったかな?』

水樹を見て

『変わっていないけど....』

笑いながら

『だって、私達が大人になったから小さく見えるだけだよ』

そう言うと水樹は誠也の右手を、軽く触れてからゆっくり握って

『早く、向日葵畑の中に行こう』

誠也を引っ張る様に花畑に...そしてあの時はこんな感じだったかな、少し膝を曲げて背を小さくなり誠也を見た。

あの時、全然変わっていないなと思いながら向日葵畑の中に、誠也も膝をかがめた。

『これじゃ...私の姿見えないネ

水樹は、ひまわりを下から見上げながら。

二人は花畑で背より高い向日葵畑の中で隠れんぼをしていて向日葵の背が高く、水樹の姿を見つけられなかった。

『でも、今は...』

誠也は立ち上がり

『水樹の事、もう見失わないよ』

『誠也君って、大げさだよ』

そう言うと

『早く....新しいストラップ買いに行こう』

私は、新しい向日葵のストラップが欲しかった、誠也の手を引いて、向日葵のストラップの買った売店に...

黄色の壁の小さなお店だった。

中に入った二人....

愛想の良さそうな、誠也達と同じぐらいの女の子が『いらっしゃいませ...』大きな声が店内に響いた...

『同じの、まだあるよ』

誠也はストラップを見て、水樹の手を引いて見せた。

『本当....』

水樹はスマホを手にして、自分のストラップを見て

『誠也君、新しいの買おうか?』

『そうだな...』

でも、今持っているストラップには、相合い傘が書かれているからと思い、少し迷っていると

『今度は、誠也、水樹と書こうか?』

顔を少し赤らめて水樹が

『どっちでも、いいよ』

誠也も顔が熱くなったのがわかった。

『照れてる...』

水樹は、誠也の顔を覗き込んで

『照れてなんていないよ』

誠也は、ストラップを手にして

レジの所に

あっ、あの時のおばあちゃんが店の奥に、おばあちゃんのレジがあって

椅子に座っているのを見つけて、おばあちゃんのいるレジの方に行こうとしたが

『誠也....こっちだよ』

水樹は、もう1つのレジの方に誠也の手を引っ張り連れて行った。

おばあちゃんの方のレジに行きたかったなと思ったが、強引に違うレジに行ったのだった。

あと時、おばあちゃんが

『おばあちゃんのレジは幸せのレジなんだよ』

そう言ったのを思い出していた。

二人は店を出ると

『まだ、おばあちゃんいたね...』

誠也は、店の中で椅子に座っていたおばあちゃんの事を話しをした。

『いたっけ....』

少し考える様な顔をして

『奥の方で、座っていたよ』

『私、気がつかなかったわ...』

少し失敗した、そんな仕草をして

店の方に戻って、外から覗き込んで

『誠也君....いないよ』

誠也も、一緒に覗き込み

『本当だ...あの椅子に座っていたのに』

店の奥に、少し古い椅子があった。

『あとで、また、この店に来てみよう』

水樹は、そう言って

『ウーン、お腹空かない?』

すでに、太陽は誠也達のちょうど頭の上....お昼になっていた。

『ペコペコ』

グウーッ...お腹がなった誠也

『アソコに行く...』

ペパーミントいの壁のカフェに指をさして水樹を見る。

『そうだね....』

水樹は、毎年家族とここに来ていて

必ずカフェに寄って、テラスの席に座っていた。

水樹は、誠也に背を向けて

『私ねっ...誠也君ともう一度カフェに来たかったんだ』

ここは、あの日待ち合わせしていた場所だった。

『行こう....』

今まで水樹が誠也の手を引いていたのに、今度は誠也の方から、少し早足で....

店内に入った二人

『空いていた』

誠也は建物の中から見えるテラスを見てテラスに出た。

『確か、ここだね』

空いていた、白いテーブル、そして白い椅子を見て水樹を見て微笑む

『覚えいたの...』

水樹は椅子に座り

二人はメニューを見る前に

『誠也君、見て...』

水樹は向日葵畑の逆の方に指を指した。

『綺麗だ、後で行こう』

誠也は水樹の指の差した方向を見ている。

指の先には海、そして海の直ぐ側には線路があって、無人駅があった。

無人駅の改札口を出るとホーム、そして線路、線路の直ぐ側には海...海の近い駅で有名な所だった。

二人は海の方を見ていると

女性店員が

『お決まりでしょうか?』

それを聞いた誠也はメニューも見る事もなく

『メロンソーダと、ハンバーガー...水樹は?』

『じゃあ、私はオレンジジュースと、ハンバーガー』

そう言って水樹は此方を見ている。

『あの時と変わらないね...』

『覚えているんだ』

誠也は水樹を見て笑った。

オーダーした物が来た....水樹はテーブルのメロンソーダのグラスに顔を近づけて

『変わらないね...』

グラス越しの海を見ている...エメラルドグリーンの海が懐かしいと同時に、またこうして二人でここにいる事が出来て、不思議な気持ちになった。

2人はハンバーガーを食べていると

小さな男の子の声が水樹の耳に入って来た...

『バスが来ないの?』

男の子は父親に尋ねる声だった。

『そうだよ...』お父さん見たいな男性が、奥さんなのか女性に崖崩れがあって、国道が通行止めになったと話しをしている。

がけ崩れか?私には関係ないと思い聞いていたら、公園内のスピーカーが大きな音で

『本日、崖崩れがあり国道が通行止めになりました...普及のめどがたっていません』

そう二度程聞こえて来た。

『がけ崩れって』

二人は、一瞬驚いた顔で

『どうしよう....』

水樹は思わず口にしてしまった。

『ちょっと待ってよ』

誠也君は席を立ち上がり、カフェから出てバス案内所の所に行った。

誠也は案内所の中に入ると、数名の人がいて、東京方面のバスはと聞いていた。

耳を傾けて聞いていたら、今日は運休が決まりましたと案内所の女性が言っていて、掲示板に運休の文字が出た。

どうしようと思った誠也は、電車で帰ろうと思いカフェに戻った。

『大丈夫だよ...バスは運休だけど電車があるから』

誠也は笑いながら

『無いよ...だってあの線路は、もう廃線になっているんだよ』

慌てている水樹....

『どう....』

そう言いかけたが誠也は、ここでどうしようと言ったら水樹を不安にさせるだけと思い、スマホを見て電車を調べると

『ここから10キロ離れた所に駅があるから、そこまで歩こう』

スマホの画面には電車の路線図が書かれていたし、高校生の二人なら歩ける距離だった。

『無理だよ』

水樹は足を少し出して

『この靴では....そして...』

水樹は、履き慣れていない赤いパンプスを履いていて、それを脱いでかがとを見せて

『靴擦れが...』

かがととが少し赤くなっていた。


困っている水樹は、海側を見ると

古いペンションが目に入った。

歩いて最寄り駅に行くのも無理だし誠也君に同意を求める様に

『それよりも、泊まる所を探さないと...』

水樹は、誠也を無視をするかの様にスマホの画面を見ている。

『あった...』

スマホを誠也に見せた。

そこには【ペンション夕日、夏祭り、花火大会開催中】と書かれていた。

水樹はペンションを探していたのだった。

『いいよね....』

誠也君は無言のままだったが、野宿なんて嫌だし、どうせ明日も休みだし泊まって行こうと思った、水樹はスマホをいじりながら、ツインないから、じゃあダブルで、独り言の様に言って

『いいよね』

『俺は大丈夫だけど、水樹は大丈夫なの?』

『大丈夫だと思うよ』

誠也を見てから、目をつぶって

『確定...』

そう言って、目を開いて笑いながら言った。

『ダ....ダブル』

『ダブルって、ベッド一つだよ』

驚いた誠也は、少し大きな声をあげて....

『そうだよ....でも....』

顔を赤くした水樹は

『約束だよ....変な事はしないでねっ

指切りね』

水樹はテーブルに肘をついて右手の小指を出して

それを見た誠也も、小指を出して

『指切りげんまん、嘘ついたら...』『何ににしようか?』

水樹は誠也に聞いた。

『ずーっと、これから水樹は僕の友達』

誠也はとっさに、そう言ってしまった。

変なのと思った水樹だったが、二人は回りの事を気にする事なく

『嘘っいたら、ずーっと友達』と言った。

指切りをした水樹は立ち上がり

『ちょっと待っててね』

そう言って化粧室に....

どうしようかな?化粧室の鏡の前で自分を見て

この格好だったら、どう見ても高校生だし、もしばれて断られたらと思い、水樹は羽織って来たピンク色のカーディガンを脱いだ。

そして、鞄から口紅を出して不慣れな手つきでピンク色の口紅にを塗って『うーん』もう少し目をハッキリさせてと、目にアイラインを引いた。

肩より少し伸びた髪の毛を茶色のシュシュでまとめて白いうなじを出した、これで少しは大人っぽく見えるかな?

そんな事を思いながら鏡の中の自分を見た。

白のノースリーブのワンピースからは白く細い肩が少し見えて、唇は薄いピンク色、そして肩まであった髪の毛はアップされて幼い水樹は美しい女性に変わっていた。

『これで、大丈夫....』

微笑みながら、化粧室を出て誠也の所に...

誠也はスマホを見ている。

人の気配に築いて顔を上げると

水樹が誠也の前で立っていた。

『えっ....』

ワンピース姿の水樹を見て驚いた。

『どうしたの?』

水樹は、誠也の耳元に顔を近づけて

『少しは大人っぽく見えるかな?だって、高校生同士だとばれたら、泊めて貰えなかったら....』

誠也は、水樹は泊まる事を楽しみにしているかの様に思えた。

水樹は、そう言って誠也の向の椅子に座った...

『誠也君は.....』

誠也をジーと見て、誠也はブルーのシャツを前のボタンをして、ジーンズだった。

『前のボタンだけ外して見てくれる』

誠也は立ち上がり、ボタンを水樹に言われるままに外した。

外すと白のTシャツが見えて、多少はラフな感じになった...

『それでいいかも...あとは』 

水樹も立ち上がり、誠也のきちんと整えていた髪の毛に触り、雑な手つきで誠也の髪の毛をぐちゃぐちゃにして自然な感じにした。

少し嫌がる誠也を見て

『これで大丈夫....』

『そうだね....これなら断られないね』

誠也も、硝子に写った自分の姿を見ている。

硝子には、幼い二人だったが、二人にとっては大人っぽく見えていた。

気づいたら時計を見ると三時を回っていた。

そして回りからは、今夜、この場所に泊まるのか、回りから花火大会、縁日が楽しみだとか声が聞こえている。

『誠也君...無人駅行ってみる?』

幼い時に出会った時は、親から公園から出たらダメだと言われていて、二人にとっては凄く遠い場所だった。

『行こうか....』

誠也は立ち上がり、水樹と肩を並べてカフェを出た。


カフェを出た二人

公園は無人駅よりも少し小高い所にあり坂道を降りると無人駅が...

『誠也君は、今でもミュージシャン目指しているの?』

幼い時に出会った時に、誠也の夢はミュージシャンと話しをていたのを

水樹に思いだし誠也に聞いた。

『そうだね....卒業したら東京に行って、先ずは路上ミュージシャンかな』

大人しい誠也が自慢する様に

『そこで、スカウトされて、CDを出して、絶対に有名になるんだ、沢山の人の前で唄いたいんだ』

『凄いな....私は...』

『水樹は保母さんだったよね』

誠也は足を止めて、水樹を見た。

『うん、短大に行って保母さんになるんだ』

少し平凡だけど、水樹が幼稚園の時に優しい先生がいて、その先生の様になりたかった。

『でも、誠也君が有名になったら、水樹と会えなくなるね?』

『水樹とは、ずーっと友達だから大丈夫だよ』

ずーっと友達....誠也、水樹はある事を頭に浮かんでしまった。

それは嘘をついたら....ずーっと友達...指切りげんまんをした事だった。

二人は、坂道を降りて無人駅

木で出来た古い駅だった。

二人以外にも数名いる観光客が古びた駅舎で写真を撮っていた。

駅のホームに抜ける改札口からはホームが見えて、そして青い海が見えた。

『わー、綺麗....』

水樹は走ってホームに出た。

ホームからは線路、そして10メートル程の下には海が....

『ここって、よくドラマに出てくる所だよね...』

『うん...』

誠也も、ホームに出た。

『誠也君、ベンチに座ろう』

水樹はホームにある白いベンチに指をさした。

『私は、ヒロインで誠也君は、何がいいかな?...』

そう言って水樹はベンチに腰を下ろした

そして、誠也もベンチに。

『お願いします...』

水樹は近くにいた、同じ位の年の頃のカップルに声を掛けて

スマホを渡して、これで撮って下さい....明るい性格の水樹は恥ずかしがる事なく言った。

『誠也君いいよね...』

そう言うと水樹は誠也との間に、もう一人座れる距離を置いてポーズを取った。

誠也も、少し照れながらも一緒のポーズをとった時にカシャッとシャッターチャンス音が...

『もう一枚お願いします』

今度は水樹は誠也にぴったりとふっついた...

カシャッとシャッター音が.....

『ありがとうごさいました...』

水樹はスマホを受け取りベンチに座った。

海を見ると少し夕日で、海はオレンジ色に変わっていた。


『帰ろうか....』


ぼそりと誠也は水樹を見て

『そうだね....まだママに連絡するのも早いし....』

二人はベンチからは立ち上がり、駅舎の中に

先ほどまでは賑やかだった駅舎には人影もなく二人だけだった。

木で出来た壁....そこには落書き、来る事の無い電車の時刻表が書かれていた。

『水樹....ちょっといいかな?』

誠也は立ち止まり、水樹を見た。

誠也は水樹に近づき、驚きたい水樹は木の壁に、それを見た誠也は右手を壁に着いて水樹を見た。

これって、壁ドンなの...水樹は驚いた。

大人しい誠也君が....

胸が張り裂けそうと思いながらも、水樹はゆっくりと目を閉じた。

それを見た誠也は

『一度、やって見たかったんだ』

そう言って笑いながら、小走りで走りだした。

『誠也のいじわる....』

そう叫んで、水樹も誠也のあとを追って、降りて来た坂道を一気に上がった。

二人は、坂を上がり切った所で足を止めて後ろを振り返ると、真っ赤に染まった海、そこに無人駅が寂しげに見えた。

『もう、そろそろママにメールしないと...』

水樹は、なんてメールをしたら良いか迷っていた。

頭には怜奈にお願いするしかと思って怜奈にメールを送った。

母親には怜奈の所に泊まるとメールをした水樹、疑う事もなくいいよと言ってくれた。

怜奈には、誰と一緒なのと聞かれたが、結局、誠也の事は言えなかった。

『誠也君は大丈夫なの?』

『うん...もう少ししたら電話するから大丈夫だよ』

そう言いながらペンションに向かって歩いている。

道端には出店が出て賑やかで、本当にがけ崩れなんかあったのと思う位天気が良かった。

『縁日が出ているね』

水樹は誠也の手を握り

『誠也君、今夜見に来ようね』

『うん....』

誠也も、笑いながら頷いた。

二人はペンションの前に、黄色の壁に真っ赤な屋根の、外には白いテーブルに椅子....

『大丈夫だよね』

誠也は水樹を見て

水樹は高校生には見られないけども、自分はと思い硝子に映る姿を見て

『俺も、大学生に見えるかな?』

『見えるよ...』

水樹は笑いながら

大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせながら、誠也はペンションのドアを開けた。

カラカラとドアを開けると音がして

茶色の床を二人は歩いて、宿泊受付のフロントに、カウンターの中には60代の白髪交じりの老人

『いらっしゃいませ』

静なかな、ペンションに合わせた感じで小声で言って来た。

『予約している櫻井ですが』

ここは僕がしっかりしないとと思い誠也が言った。

『櫻井様ですね...ダブル一部屋御用しています』

老人はカウンターに白い紙を出して

これにご記入お願いします。

紙には名前と、住所、電話番号を記入する所があった。

えっ....もちろん誠也も水樹も初めだった、誠也はペンを受け取り、櫻井 誠也と書いて、そして苗字を書くこと無く水樹と書いた、そして電話番号をゆっくりと書いて老人に渡した。

老人は無表情のまま受け取り、ルームキーを誠也に渡し、

それを受け取った誠也達は、急いでその場を離れ様とすると

『お客様....』

もしかして、高校生とばれたと思いドキッとして足を止めて、恐る恐る振り返ると

『今夜は縁日、花火大会があるけれど、良かったら浴衣が部屋にありますので、遠慮お使い下さい』

老人は、微笑みながら言った。

『ありがとうございます...』

水樹ははしゃぎながら答え

『誠也...私、浴衣着るねっ』

そう言って二人は部屋に向かった。

部屋の中はアンティークな部屋でソファに可愛いらしいテーブル、そして大きなベッドが1つあった。

部屋に入った水樹は窓の方に行って

『誠也、見て...』

水樹は窓を開けて外を見た。

窓からは向日葵畑、そして奥の方に海の夕日に染められて、今にも地平線に太陽が沈みそうだった。

『綺麗だね...』

誠也も水城と並んで見ている。

外では賑やかな声が聞こえ始めて来た...

『誠也君...水樹の浴衣姿見たい?』

少し照れた顔をして

『どっちでもいいよ』

ぶっきらぼうな答え方をした

『どちらでもなの?』

水樹は誠也の右袖のシャツを少し引っ張りながら、少し口を尖らせて

『見たいと言ってよ...』

『見たい....凄く見たいよ。一緒に縁日に行こう』

顔を赤くして笑った。

『でしよう....初めから素直に言えばいいのに』

水樹は部屋の中にあった紺色の生地に大きな向日葵の書いてある浴衣を見つけて

『一人で着る事が出来ないから頼んで来るね』

水樹は、そう言い残して部屋を出た。

部屋を出た水樹は走って、フロント

『お願いします...』

慌てた水樹はフロントの老人に

『浴衣、浴衣を着せて貰えないですか?』

老人は笑いながら

『おーい』

フロントの奥を見て、声を少し大きめに

『どうしたの?』

笑いながら、おばあちゃんが出て来た。

『浴衣、着れないのかな?』

焦っている水樹を見て

『こっちにおいで...』

水樹をフロント横の部屋に招き入れた。

『お嬢さんは高校生かな?』

そう言いながら、浴衣を見てから水樹を見た。

『はい...』

やばいと思ったが、素直に高校生と認めた。

『仕方ないよね....国道が通れないのだから.....服の上から浴衣着るのかな?』

おばあちゃんは水樹を見て笑った。

『いいえ』

慌ててワンピースを脱いだ。

それを見た、おばあちゃんは手慣れた手つきで、水樹に浴衣を着せた。

紺の生地に黄色い向日葵、そして真っ赤な帯が....

『お人形さん見たいだよ』

おばあちゃんは、水樹を鏡の前に立たせて姿を見せた。

『似合うかな?』

ジーンズ姿とは違う自分に、自信を持ってと自分にいい聞かせて

部屋を出てフロントの老人に

『これで大丈夫だよね?』

訪ねながらフロントの前で回って見せた。

『高校生の彼氏が待っているよ』

笑いながら廊下の方を見た。

『ばれていたの?』

老人にウィンクをして、慌てて部屋に戻って行った。

水樹は、部屋のドアを勢いよく開けて

『誠也、可愛いいでしよう?』

あれっ、部屋の中には誠也は居なかった。

『水樹...』

開いた窓の方から声がした。

水樹は窓に近づき外を覗き込むと、誠也は外にいた。

『これっ...』

誠也の右手には真っ赤な下駄が、誠也は水樹が着替えている時に、フロントの老人に教えて貰って下駄を買って来たのだった。

『ちょっと待ってよ...』

水樹は1メートル程あるの窓から浴衣のまま登り、窓から外に出た。

『その下駄どうしたの?』

『パンプスだったら合わないかと思って』

『ありがとう...』

裸足のまま外に出た水樹は下駄を履いた。

『縁日、見に行こう』

誠也は水樹の手を軽く引っ張りながら歩いた。

すっかり外は薄暗く、出店の黄色い灯り、親子連れ、カップルが笑いながら歩いている。

『あ...林檎飴....食べようか』

誠也は、林檎飴を二つ買って、それを口にしながら...

『来年も、来れたらいいね』

『うん....でも....』

今度は絶対、彼氏と彼女としてと思った水樹だったが、そんな事言える訳でもなく

『でも、来年になると、私は短大だし、誠也はミュージシャンだよね...来年の今頃は、誠也は唄っているよね....私、応援するからね』

『俺も、水樹の事、応援するよ』

『約束だよ、いつか街中、誠也の歌でいっぱいにしてよ...』

『大丈夫....絶対約束するよ...』

パーンと大きな音が

空には大きな花火が上がった。

『あっ、花火』

夜空に赤、緑色、金色の花火が

『誠也、早く近くで見よう』

二人は夜店を通り抜けて、ベンチに座った。

『でも、本当は私バスが動かなくなって良かったと思っているんだ』

空を見上げながら

『俺もだよ...』

もしバスが動いていたら、今頃は別々だし、こうして二人では居る事が出来なかったと思っていた。

『見て、あれはきっと向日葵だね』

向日葵の型の花火が

『誠也は、どうして向日葵のストラップ捨てなかったの?』

水樹も、大切に持っていたけど聞いた。

『捨てたら水樹に二度と会えないかと思って』

『同じなんだ...私もだよ』

きっとストラップを捨てなかったから、誠也に会えたんだと思い誠也の横顔を見ている。

花火が始まって30分が経って

もうそろそろ終わりかなと思い花火を見ていると

〈麦わら帽子ももう消えた、田んぼの蛙ももう消えた、今でも待ってる夏休み、絵日記付けてた夏休み、姉さん先生もういない....今でも待っている夏休み〉

水樹達には初めて聞く、静に歌がスピーカーから流れ

派手とは言えないオレンジ色の花火が夜空に1つ上がりパーンと音がして消えて、そしてまたオレンジ色の花火が夜空に上がった

『水樹、こんな静かな花火もいいよな』

水樹を見て

『うん...そうね』

そう言うと、水樹は誠也の腕に体

を任せる様に寄り添って来た。

『水樹....』

誠也は夜空を見ながら

『ねー何?何....』

誠也の顔を覗き込んだ時、誠也と目があった。

『俺、今日、ここに来れて良かったと思っているんだ...』

私は少し驚いて、私も...と言おうとしたが

『急に何....当たり前でしょう....この大下水樹が一緒しているのだから』

ドキッとしたのを隠す様に水樹は立ち上がり

『誠也、お腹空いたよ』

二人は、考えたらお昼にハンバーガーを食べてから何も食べてなかった。

私達はお腹が空いていた。

財布の中身を考えると少しは残して置かないと、明日の事を考えると不安だった。

『誠也、お腹空かない?』

『少し…』

誠也も明日の事を考えると少しは残して置かないと

そして、花火が終わりに近づくと、こうして二人でいる事が不安になって来たのだった。

今頃、ママは玲奈に電話していないのか、そんな事を考え

『誠也、屋台で売ってた焼そばでも買って帰ろうか?』

『そうだね』

二人は立ち上がると、花火のフィナーレを合図する花火が上がった。

二人は屋台で焼そばを買ってペンションに向かい、夕方入った時とは違い、外にあったテーブルとかもなく、何となく靜かだった。

私は誠也の後を着いて、ペンションのフロントの前を通った

ペンションの中は、いい匂いがして、奥の方で何名かのお客様が食事をしていた。

絶対、今度来る時は、テーブルに座って食事を誠也としたいと思って誠也を見ると

『水樹、ごめんね』

『何が?』

私は何故誠也が謝ったのかと思った

『焼そばで』

『今度来た時、あそこで座って食べようね』

『静かだね』

テーブルには2つの、屋台で買った焼きそばが...

外からは虫の鳴き声が聞こえて来た。

初めて二人だけになり、お互い無口なってしまった。

『食べようか?』

水樹は焼きそばに手を伸ばした時

〈コンコン〉

ドアのノックする音が.....

えっ、お互い顔を見合わせた。

もしかして、ここにいる事が

親にわかったの、そんな顔をした二人。

『フロントの者です』

誠也は立ち上がり、恐る恐るドアを開けた...

『じつわ、今夜お泊まり予定だったお客様ががけ崩れでキャンセルになり、もし良かったら、お食事を食堂の方で用意していますが食べませんか?』

老人は微笑みながら誠也を見て言った。

誠也は慌てて水樹を見ると

水樹は立ち上がりドアの方に来て

『本当....食べたい、誠也いいよね』

誠也も頷いた。

二人は老人に連れられ、アンティーク調の家具等が置かれある食堂に

『食堂....カフェ見たい』

回りを見渡して、誠也に言った。

テーブルにはサラダ、高そうなお肉が焼きたてなのか湯気を上げて、そしてスープ等がテーブルにあった。

『こんなにいっぱい...』

水樹は老人の方を見て言った。

『どうぞ食べて下さい』

老人は席から離れた...

『いただきます...』 

水樹は手を前で合わせた

誠也もそれに合わせて

『いただきます』

『美味し...』

水樹はスープにスプーンを付けて飲んだ。

スープはコーンスープで甘い味がした。

誠也はスープにも目を向ける事なく

美味しそな肉にフォークとナイフで慣れた手つきとは言えないが肉をナイフで切って口に入れた...

『こんなの初めて...』

口に入れながら水樹に言った。

水樹は回りを見渡すと

奥の方に一人の女性がコーヒーを飲んでいるのを見つけた。

よく見て見ると

『誠也、あそこに座っているの

売店のおばあちゃんだよね..』

水樹も直ぐに思い出した。

その時、フロントにいた老人が

『デザートです』

そう言いながら

ショートケーキに、紅茶を持ってテーブルに置いた。

二人がおばあちゃんの方を見ているのに気づいた老人は

『知り合いなのかな?』

『いいえ...』

誠也は言った

『あのお客様は、..』

.少し羨ましく思った水樹

『裕子さん....』

老人はおばあちゃんの方を見て

『此方に来て、一緒にどうだい』と言うと、老人は誠也の横の椅子に座った。

それを見たおばあちゃんも誠也達のテーブルの所に来て

『いいのかい...お嬢さん』

あっけにとられた水樹は

『はい....いいですよ』

水樹は横の椅子を少し引いて、おばあちゃんを見た。

『お嬢さん達は、何所から来たのかな?』

『東京です...』

水樹は微笑みながら返事をした。

『確か、おばあちゃんは売店の所にいたよね』

水樹も、何年か前に、このおばあちゃんからストラップを買ったのを思い出していた。

そして水樹はスマホに付いた向日葵のストラップをおばあちゃんに見せて

『これを持っていると幸せになるんだよね...』

『そうだね、お嬢さんは幸せになれたかな?』

『うーん...』

『聞かなくても見たらわかるよ..』

老人は笑いながら言った。

『おばあちゃんはよく此処に来るの?』

水樹は羨ましかった。

おばあちゃんになっても、コーヒーを飲みに、こんな素敵なペンションに来る事が出来て

『そうだね、夏になると毎年来ているよ』

なんか凄いなと思って聞いていると、老人が

『裕子さんは、待ち合わせしているんだよね』

『今日は、待ち合わせの相手は来ていないの?』

私は気になり聞いた。

『毎年、夏になるとここに来て待っていたけど、今日やっと会えたよ』

『うわぁ、よかったね』

老人は、その会話を聞いていて

『裕子さんは何年待ったのかな?』

『何十年待ったか、忘れたよ』

笑いながらおばあちゃんは言った。


『でも私なら、直ぐに電話するけどね』

『誠也だったら、待てる?』

『僕は無理だよ』

そんな話しをしていると、壁に掛けてある時計が10時を知らせるボーン、ボーンと懐かしい音がなった。

『もう、こんな時間、二人の邪魔をしては..』

老人は言って笑いながら

『せっかくだから、写真でも撮ろうか』

そう言って時計の前に椅子を並べた。

『お嬢さんと、お兄ちゃんは前に座って』

言われるままに誠也達は前に座り

そして、水樹のスマホを借りて

テーブルの上に置いて、四人は写真を撮った。

『なんな家族写真見たい』

水樹は、スマホを老人に見せて笑いながら

『また、このペンションに必ず来ます』

『僕も...』

誠也も、頷きながらい言った。

そして誠也達は部屋に戻った。

『今日は疲れたね、水樹はベッドでいいよ、僕はソファで寝るから』

『うん..』

『それよりも、誠也買って来たストラップ見せて』

水樹はおどける様に言った。

ストラップをテーブルに置いた誠也は

『どうするの?』

水樹は鞄から、マジックを出して

ストラップの裏に、相合い傘と水樹と書いた。

『書いて..』

そう言って誠也を見た

何て書いたらいいのと思った誠也だったが、隣には誠也と書いた。

『これでいいかな?』

少し照れた顔をして水樹を見た。

『ありがとう、じゃあ、私のも書いて』

そう言って水樹も、ストラップをテーブルに出した。

二人のストラップには、せ-ちゃん、水樹ではない、誠也、水樹と書かれたストラップがテーブルの上に並んで置かれていた。


指切りげんまん...ずっと友達

私の頭の中に、その言葉何度も繰り返す様に響いていた。

ずーっと友達、嘘ついたらと

二人は青い月の光に包まれていた


『水樹...』

『おはよう..』

『教えてよ』

怜奈は水樹と並んで歩いている

今日は夏休み中の一日登校日

『誰と一緒だった..』

『言えないよ...』

水樹は、青空をみやげて、あの日の事を思い出している。

誠也はもう教室かな?

なんて話しをかけよう、それとも知らないふりでもした方がいいかな

あの日から2人は話しすらしていなかった。

教室に入り回りを見渡すと誠也の姿はなかった。

遅いなと思い、校庭を見ると向日葵畑は土色に変わっていた。

ガラガラとドアが開いた音がした。

もしかして誠也と思い見ると先生だった。

先生は教壇に上がり

『今日の休みは、山口と斎藤か...』

えっ、誠也の名前は言われなかった。

もしかして隣のクラスだったの?と、思いった

それなら早く言って欲しかった。

ドキドキして損したと思いながら誠也の事を考え

そうだ、今日帰りに誠也の家に寄って帰ろ...

水樹は誠也がペンションに泊まった時、住所を書いたのを見て番地が水樹の誕生日と同じだったので覚えていたのだった。

水樹はホームルームが終わると、

誠也の家に向かった。

桜井、桜井と住宅街を探して歩いていると、桜井と書いてある表札の家を見つけた。

あっ、ここだ...居るかなと思いながら、玄関横にあるインターフォンのボタンを押した...

『大下水樹と申しますが...』

『少々お待ちください』

女性の声が聞こえて来た。

水樹が玄関前で立っていると、ドアが開いた。

1人の40代位の優しく顔のした女性

『大下水樹さんて...もしかしてみーちゃん?』

えっ、もしかして誠也、外泊の事がばれてしまっていたの?

どうしよう?怒られると思いながら

『はい...そうです』

女性は水樹の事をじーっと見てから

微笑みながら

『よく来てくれたね...』

『どうぞ入って下さい』

優しい声で言ってくれた。

『はい、おじゃまします...』

水樹は女性に案内されるがままにリビングに...

水樹はリビングのソファに座り

ベランダの窓を見ると庭には向日葵が2つ太陽の方を見るかの様に咲いていた。

やっぱり誠也は花が好きなのかなと思って見ていると誠也のお母さんが

メロンソーダを持って来てテーブルに置いた

『誠也がメロンソーダが好きでね』

やっぱり..いつもメロンソーダばかり飲んでいるんだ

『ちょっと待ってね』

そう言ってお母さんは奥の部屋に入って行った

もしかして、まだ寝ていてるの?

水樹が来たのだから直ぐに出て来てよと思いながらメロンソーダに口を付けた。

その時、お母さんがやって来て

『誠也ね...みーちゃんに会いたがっていましたよ』

水樹は少し顔を赤くして

『私も、本当はずーっと誠也君に会いたかったの?内緒だけど...』

『ありがとう...誠也も喜ぶわ』

『お母さん、誠也君には言わないでね』

『ええ...』

それにしても、もう来てくれてもいいのに..もったえつけないでよと思いながらお母さんと話しをしていると

『じゃあ、...』

お母さんは立ち上がり

『誠也ね...』

そう言うと水樹を連れて奥の部屋の方に行った。

『誠也...みーちゃん来たよ』

いい加減に起きてよ

『いい加減に起きて...』

2人で初めて迎えた朝、水樹は誠也にかけた言葉だった。

誠也はベッドの中

水樹に背を向けて、本当に寝ているのかを確かる様に声をかけた。

あの時と同じだと思いながら、

お母さんがドアを開けるのを待った。

お母さんが

『どうぞ..』 

そう言ってドアを開けた。

水樹の目にはシングルベッド、布団には向日葵の柄が、そして高校生の誠也には小さすぎる机..部屋には誠也の姿はなかった。

『あの...誠也君には?』

水樹はじーっと机を見ているお母さんに聞いた。

お母さんは机と反対側を見た。

えっ...そこには誠也の写真、それも初めて会った時の誠也の写真があった。

写真の横には向日葵のストラップ、そして写真の前には花が飾られている。

『誠也君の弟か、お兄ちゃんなの?』

頭の中が混乱している水樹..

だって、二週間前に私、誠也君と...

そう言おうとした時

『でも、誠也の思いが通じたのかな?みーちゃんが来てくれるなんて、私達は今でも誠也が帰って来ると思っているの』

『帰って来るって...』

『だって...』

水樹は言葉が詰まった。

だって...何を話しをしてよいかわからなく

『みーちゃん、ごめんね。確か次の日誠也と待ち合わせしていたんだよね、でも私達は台風が来るからと言って、前の日の夜に帰って来たの...誠也はみーちゃんと待ち合わせしていると何度も言っていたけどね』

そんな事、私は知っているし誠也から聞いたと言おうとしたが

『夢の続きの話しと何度も言っていたけど、元々あの子は慢性白血病で

帰って来てから直ぐに体調を崩して』

私にはおばさんが何を言っているのか理解出来なかった。

おばさんは、写真立てに入った写真を見て話しをしている。

その写真の男の子はせーちゃんそっくりの男の子だけど

白血病、体調を崩していってと思い呆然としていると

『ちょっと待ってよ』

おばさんは写真立ての横に置いてある黄色の封筒を手にして私に渡してくれた

封筒にはみーちゃんへと書かれていた。

『開けて見てくれるかな?』

『私が?』

『これは貴女に書いた手紙なの』

私は封筒を開けて手紙を開いた。

やっと書いた様な幼い文字が

〈みーちゃん、保母さんになってね、僕は病気でミュージシャンは無理かも知れないけど、初めて友達が出来て嬉しかった。沢山学校の事を教えてくれてありがとう。

絶対、絶対、また会いたい、死にたくない、絶対生きるからね〉

手紙を読んだ私は、どうして、だってに二週間前に誠也と会っているし、写メだってあると思い

水樹はおばさんに写メを見せようとした。

慌てた水樹はスマホの画面を開いた

そこにはベンチに座った2人が写っている

『おばさん..』

水樹はスマホを見せると

『この駅って、公園の近くの?』

坦々と話しをして来た。

それよりも隣の男の子を見てと言おうとして、スマホを見ると、そこには水樹しか写っていなかった。

エッ...そう思い、今度はペンションで四人で撮った写メならと思い、その写メを出すと、四人が写っていたが、おばさんに見せようとした時、老人、誠也の姿がゆっくりと消えていって、写っているのは水樹とおじいちゃんだけの二人だけだった。

どうして?私、誠也と二日間一緒だったのに、おばさんにどう説明しては良いかわからなくなった水樹は、誠也の家を飛び出した。

行くあても無く、気づいたら校庭横の向日葵畑に立っていた。

私は意味がわからなく、玲奈に電話をした。

『玲奈、同じ学年に櫻井誠也っている?』

珍しい、電話なんてと思った玲奈だった。

『櫻井誠也なんて、いないと思うよ』

どうしていないの?少し無言になった私だった。

『でも、何処かで聞いた名前かも』

もしかして、違う学年なのと思いながらいたら

『ちょっと待ってよ、一度電話切る』

私は電話が切れたあと、もしかして双子?それとも違う学年、あたまの中で渦巻いていると

スマホにメールの着信音

玲奈からだと思いメールを開くと

〈この男の子〉の文字と

一人の男の子の写メが送信されて来た。

一人の男の子がステージの上でギターを手にして歌っている写メだった。

これって、せーちゃんだと思い

私は玲奈に

〈この男の子だよ〉

〈水樹、誠也と知り合いだったの?〉

〈もちろんだよ〉

私は誠也が同じ学年でなく、玲奈とも知り合いだから、直ぐに連絡取れると思った。

そして玲奈から、またメールが

〈誠也は中学の同級生で1年の夏に亡くなったよ〉

頭が真っ白になった水樹だった。

いったい、私は誰と…

また、玲奈からメールが

それを開くと

〈あの夏の日、君と出会った事を忘れはしない。君の為に、君に届く様に僕は唄う....ひまわりの恋〉

一人の男の子が唄う動画だった。

『ママ...』

1人の女性がカフェのテラスに座って海を見ていた。

白のワンピースを着て、優しい笑顔の顔に麦わら帽子をかぶって

『どううして毎年ここに来るの?』

高校位の女の子が少し暇そうな顔をしてテーブルにはオレンジジュースが2つ、そしてメロンソーダが1つ置かれていて

『本当...こうやって見ると海が綺麗だね』

そう言いながらグラスを横から覗き込んで

『いつまで一緒にで来るかな?』

『でも、私は来年から大学生だから一緒によって来れないよ…』

女性は娘を見て

『今度、ひまわりも素敵な恋をしたらわかるよ』

ふと横を見ると小さな少年と少女がテラスに座ってハンバーガーを食べているのが見えた。

あの時食べたハンバーガー、壁ドン

そんな事を思い出していると

『また、花火は見ないで帰るの?本当は見たいのになっ』

ひまわりは花火大会のポスターに目をやっている

『帰ろうか?』

2人はカフェを出て車に乗り

エンジンをかけるとラジオから

『麦わら帽子はもう消えた、...今でも待っている夏休み...今でも待ってる夏休み』

あの曲が流れ、ルームミラーを見ると向日葵畑の横に1人の少年が手を振っていた。


また、来年来るからね、貴方に会える日が来るまで

そして私はあの子に出会うまで、この場所に毎年来る事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ひまわり完結 大西洋一 @830e

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る