魔女は! 杖で!! ぶん殴る!!!~Witch hits with a wand!~

キノハタ

第1話 はじまりはじまり

 これは魔導が廃れて、もう生活に機械がすっかりなじんだある日のこと。


 「お母さんは、いつもそう! 私が何かをする前に全部、失敗するからやめとけって!?


 それじゃあ、わたし、これからなんにもできないじゃん! 嫌だよ!! たとえ失敗してでも、私は魔導戦がやりたいの!


 一回くらい、応援してよ! 


 私、ずっとお母さんの言うこと聞いてきたよ?! 大人しくしてたし、学校で問題も起こさないように頑張ったよ!?


 わたし、こんなんだからさ! 魔力のせいで気持ちも落ち着かないけどさ! それでも頑張ってきたんだよ!?


 私、ちゃんとわがまま言ったのこれが初めてだよ?! だから聞いてよ!!


 なんでなの!! お願いだからさ!! ちゃんと聞いてよ!!!」


 「そうは言ってもねえ、あんた。あんなのちゃんと生活できるの一握りよ? 成功できる保証もないのよ? 私はあんたにちゃんとした職に就いてほしくて。だって介護の勉強とかしといたほうがくいっぱぐれもないし……」


 「うがーーー!! もうしらーーーーーん!! こんな家出てくーーー!!」


 「こら?! かんな?! かんなーーーーー!!」


 そんな友達の親子喧嘩が巻き起こったのがおよそ、二か月前の大学入学直後のことらしい。


 以降、彼女は一人暮らしをしている私の部屋に寄生することで、半家出状態となっているわけである。


 「かんな、家帰んないの?」


 「いっやっだっ!! あと長いこと居座ってごめん!!」


 「家賃割り勘してくれてるから、私は別にいいんだけどさ……」


 「ありがとう!! まり大好き! 愛してる!!」


 「えらく安売りされた愛だなあ……」


 私は軽くため息をついて、部屋でごろごろしながら謝罪と、愛の告白を重ねる友人を眺めていた。


 ちなみに家出の原因になったのは『魔導戦』っていうスポーツだ。


 時代遅れの魔法をエンターテイメントスポーツとして復興させたもので、目下、大流行中。


 かんなは結構、魔力があるから向いてはいるんだろうけれど。


 さてさて、この時代遅れの才能を持っちゃった親友は、果たして大成できるか。


 てなわけで、これが私とかんなが『魔導戦』を人並みに頑張る、そんなお話。


 万を超す人の命運とか、世界の頂点とか、この世の全ての魔法の秘密とか。


 そういうのは別に関係ない、私たちが、それなりに頑張るそんなお話。










 Tips:梅ノ木 かんな:今年から大学生の少女、大学生って少女でいいのか。情緒不安定なアホの子。親と喧嘩して友人のまりの家に泊まり込む。魔導刻印数は6。魔導の才能はあるのだが、現代ではもはや無用の長物。むしろ、魔力が高い=感情の振れ幅が高いということなので、結構、偏見で苦しんできたらしい。大学の入学を機に、念願の魔導戦デビューを果たす。ちなみに、友人たちの総評は『突き抜けたアホ』。最近、興味を持ったことは、「ふぐを最初に食べようと思った人は何を考えていたのか」。

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