第六十一話 カモミール
仕事から疲労困憊して帰宅した俺は、お風呂にゆっくり浸かっていた。そこへ現れた妻はすでにお風呂を済ませて部屋着だ。コップを片手に持って何か飲んでいる。
「家を買うとするでしょう。お風呂がヒノキ風呂なら良いと思わない?」
「ヒノキ……。いや、ヒノキも花粉があるからね」
「え……そうなの?」
「そうそう。それに、木のお風呂なんて手入れが大変だから無理無理」
「ま、高いし夢の話」
「……何飲んでるの? 変な臭い」
「カモミールティーだよ。変な臭い?」
妻がコップを傾けて見せてきた。コップには本物のカモミールの花と紅茶が入っている。
「うわっ。いらない」
「何よーその言い方! ちゃんと専用のを買ってきたの! 映えるでしょ! 映え!」
「映えねぇ……。くさっ」
「ひどぉ。あ、そうそうカモミールの花言葉は逆境に耐えるだって。袋に書いてあった!」
妻は、「チョコレートも開けよ〜」と洗面所を立ち去った。
「……耐えてるの俺の方だから」
俺は小声で呟いた。
カモミールの香りが良いとか? ヒノキの香りが良いとか?
全てを花粉が台無しにしている。
そんな、アレルギー体質の俺に幸あれ。
『ヒノキ 花言葉 不死不滅
カモミール 花言葉 逆境に耐える』
実は稲にも『神聖』という花言葉があります。さすが、日本で昔から食べられてきた主食ですね。
以上、花粉症シリーズでした。
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