第六十話 ブタクサ

 夏から秋にかけて花粉症を引き起こすブタクサ。スギ花粉よりもマイナーな植物のせいで、『ブタクサのアレルギーなんだ』と言うと『ブタクサって何?』と聞かれる。


 ブタクサは、ヨモギの葉にも似た植物で花も咲かせる。花粉を飛ばすのは夏から秋にかけて。


 俺は高校生くらいからブタクサの花粉症になり、今も軽度ではあるがアレルギー反応が出る。


「はぁ……。一年中アレルギーって嫌な体質だよな」


 俺はソファーに横になりながら妻に話しかけた。妻はダイニングチェアで珈琲を飲みながら俺を見る。


「アレルギーがあっても健康なんだし、良いじゃない」


 俺はもう一度妻に『花粉症になれー!』と念を送った。


「今調べてみたらブタクサって、よりを戻そうって意味があるんですって」


 妻はケタケタ笑った。


「俺、ブタクサと付き合った経験は無いし、今後も絶対に無い!」 


「じゃあ、喧嘩の後に元カノからブタクサもらったらどう思う?」


「俺はアレルギーなんだよ! ヨリを戻すどころか……へし折ってやるわ!」


 俺はソファーの上でへし折るジェスチャーをした。

 まさか、花粉症を引き起こす植物にまで花言葉があるとは。ブタクサをプレゼントしてヨリを戻すカップルは世界中どこを探してもいないだろう。


『ブタクサ 花言葉 よりを戻そう』

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