第五十九話 スギ
毎年恒例、このシーズンがやって来た。
寒い冬を超え、暖かな春の訪れはスギ花粉のシーズンの到来を俺に告げた。
幼少期から花粉症の俺は、毎年このシーズンは目を充血させながら涙を流し、鼻水は止まらない、くしゃみは止まらない……と定番のパターンで花粉症に苦しんでいる。
「だからぁ、花粉症シーズン前に耳鼻科に行っておいたらって言ったでしょ」
妻は呆れ顔で言ってくる。妻はまだ花粉症になっていない。花粉が多い日に、ちょっと目が痒いとか言うくらいだ。
『早く花粉症になってしまえ……そしてこの苦しみを味わうんだ……』
俺は妻に念を飛ばすが、今年も念は通じなかったようだ。
「あ、そうそう、スギ花粉に花言葉があるの知ってた? 君のために生きるって意味なんだって。スギ花粉は今年も君のために生きている!」
妻はケタケタ笑っている。俺はソファーに転がったまま妻に悪態を付いた。
「早く花粉症になっちまえー!」
はぁ。スギなんて枯れ果てちまえ。
『スギ 花言葉 君のために生きる』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます