第四十五話 クレマチス
美代はクレマチスの鉢植えを手に自宅マンションのエレベーターを待っている。
隣に男性がやって来たのでそっと隣を見ると偶然にも男性もクレマチスの鉢植えを持っていた。
「あっ」
美代が思わず声を出すと男性はこちらを向いてニコッとしてくれた。爽やかな青年という印象だ。
「奇遇ですね。クレマチス」
「はい。びっくりして思わず声が出ちゃって……すみません……」
エレベーターが到着したので二人は乗り込んだ。
「今日、実家から分けてもらってベランダで育てようと思ってるんです。この白と青のクレマチスがすごく綺麗でずっとベランダに置きたかったんです!」
男性のクレマチスは紫だ。
「良かったですね。私は部屋の彩りに置こうかなと思いましてね」
「クレマチスの花言葉は精神の美なんですよ。まさに部屋の彩りにピッタリですね!」
「へえ……。私が知っているのは束縛でしたので……。意外ですね」
「へ……? 束縛……?」
「クレマチスは蔦化の植物で、一度絡みついたら離れない意味合いから束縛という意味があるんですよ。甘い束縛という意味ですが……」
エレベーターのドアが開いた。
「では、失礼します」
美代は男性が降りていく後ろ姿をじっと見つめた。
『クレマチスハガネ 花言葉 束縛』
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