第七話 真紅の薔薇
特に入れ違いで退勤した
フロアにいる敦の彼女もことあるごとにキッチンに顔を出すと「寂しいなぁ」と言って泣きそうな顔をしてくれた。ひとつ下の彼女と付き合い始めたのは三ヶ月前のことだ。
秘密にしていたが、みんな、二人の関係を知っている。
バイトを終えて外で彼女を待っていると飯塚さんが突如現れた。短いデニムのスカートを履いて派手な化粧をしている。
「終わる時間待ってたの。良かったらこれ……」
手渡されたのは真紅の薔薇四本と手紙だった。敦は戸惑いながらもお礼を言った。
「わざわざ、ありがとうございます」
飯塚さんは彼女が出てくるのを見るとすぐに立ち去った。
「あれ? 飯塚さん?」
「なんか……わざわざ持ってきてくれたみたい……」
手紙を開けた。
『敦君へ
今日でアルバイトを辞めてしまうなんて、すごく寂しくて残念です。あなたに会うことだけが私の生き甲斐でした。彼女ができたと知ったときすごくショックで今でも嫉妬で怒り狂いそうです。
彼女さんと別れたら私と付き合って結婚して下さい。大好きです。愛しています』
四本の真紅の薔薇には、花言葉が添えてあった。
『死ぬまで気持ちは変わりません』
二人は青ざめた。
飯塚さんはこの店の店長だ。
彼女がすぐにアルバイトを辞めたのは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます