9.見かけによらない
「そっか。
短い間だったけど、グランさんと過ごせて楽しかった。
なるべく怪我とかしないで、これからも元気でね」
レンが少し寂しそうに笑う。
あれ、何か今生の別れみたいになってないか?
「レン、俺はまたここに戻って来るつもりなんだが、迷惑か?」
「え、戻るってまた遊びに来てくれるの?
でもファルはいいの?」
「その獣はお前の番らしい。
お前が拒否しないのなら森には入れてやっても良い。
だが伴侶にするのはまだ駄目だ。
レンの事を話しても良いと思った時に決めろ」
レンが驚いて目を見開く。
「番って、お爺ちゃん達みたいな関係でしょ?!
駄目だよ、グランさん!
ファルの時もそうだけど、僕にはそういうのやっぱりわかんないし、特にグランさんは森の中でいるような僕なんかより、もっと素敵な人がいるはずだよ!」
レン、そんな精一杯に拒否しないでくれ。
「前にも説明したが番は選べない。
番と自覚してしまったら他は目に入らないし、無理に引き離せば俺達は気を狂わせる。
見ろ、そいつ落ち込んで耳がへなってるぞ」
「え?!
嘘、違うよ!
えっとそういう意味じゃなくて····」
「なら、どういう意味だ?
年も離れているし気持ち悪いか?」
やばい、どんどんへこんでいく。
「気持ち悪いとかじゃないし、グランさん格好いいよ。
背も高いし、締まってる筋肉も素敵だし、顔もクール美人で金髪に瑠璃色の目も神秘的だよね。
でも僕は何も持ってないし、背もちっちゃいし、黒目黒髪だから変に悪目立ちするし、ちょっと色々訳ありだから森から出るつもりもないの。
体も強い方じゃないから何もしてあげられないし、かといってずっとかまわれるのも好きじゃないし、かなり自分勝手だし、絶対物足りないし、いたらない人間だと思う。
それに正直愛とかわかんない····番とか、何····」
顔が段々と俯いていき、声が小さくなって最後は聞き取れなくなってしまう。
「俺の顔とか匂いは嫌いか?」
側に行き、膝立ちになって両手でレンの顔を包む。
膝立ちしても俺の方が高いな。
レンはフルフルと首を振る。
「グランさんはお日様みたいな匂いだし、顔も綺麗で20年後には僕好みのイケオジになりそうで好きよ?」
「そっか、イケオジが何かわからんが、好きなら良かった。
レン、何かして欲しいんじゃない、側でお前を見守りたい。
人属のレンに俺達の番への感覚や感情を理解して欲しいわけじゃない。
訳ありなのも自主的に森に籠ってるのも気づいてる。
それにまだ小さいレンが愛なんて知ってたら、それこそびっくりするぞ?」
そう言った時だ。
レンが訝しげに首を傾げる。
黒竜がレンもとうとう気づいたか、と小さく笑った。
「えっと、グランさん····僕、いくつの子供だと思ってるの····」
「····ん?
10才いかないくらいじゃ····え、レン?
お前、いくつだ?」
まさか、嘘だろ?
「····体年齢でも14才前後はあるのに····10才····いかない? ····ひどい····」
レンはあまりにも子供に見られていたのがショックだったようで、あからさまに絶句した。
俺も絶句したが、黒竜だけが笑っていた。
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