第59話 丸く収まった?

「……」


とりあえず状況確認だ。


俺は自分の家の空き部屋に居る。

隣で吉野が寝ていた。

以上である。


「……どうしたこうなった?」


と、俺がつぶやくと――。


「……う。ぅぅ――うん!?」


吉野が目を覚まし……俺と目が合った。


「……先輩。何してるんですか」

「俺が聞きたい」

「……なんで?私ここに」


そう言いながら吉野がキョロキョロとする。


「それは昨日誰かが人の背中に乗って来たから。ということは覚えている」

「……今……朝。なんで私が寝ている横に先輩……ふぇ――!?」


――バシン!


だから。なんで俺はこんなに後輩に叩かれないとダメなのだろうか。昨日の夜から何度も言っているが暴力反対である。


「何したんですか!」


とか怒っている後輩が居る。布団を手繰り寄せて……うん。防御しているが。

何もないんだが……。


「いや、昨日普通に吉野がどんどん話すから……まあそのまま2人とも力尽きた。的な?」

「そ、そんなこと言って実は……」

「ないし。なら確認でもしてろ」

「しませんよ!!この変態!!」


とまあ朝からまた大騒ぎ。ちなみに――。


まだ普通なら学校に行く時間だった。

うん。俺たちが起きるの早かったな。休みなのにもったいない。

なんで目が覚めたのか……って待てよ。これもしかして吉野が先に起きていたら……。俺刺されていたんじゃないか?抵抗なしであの世へ。と――。


――うん。早く起きてよかった。俺の身体ナイスである。


とまあそれからまあいろいろありまして――。


「朝から疲れた……」

「それは吉野が悪い」

「むぅ――」


現在俺たちはリビングにてちょっと距離をとって座っている。というか吉野が1人分空けて座っているだけか。


「先輩にうまく言いくるめられた……」

「俺何もしてないのにそのうち捕まりそう」

「っか……よくよく考えたら着替えもしてなかったか」

「……私連れてこられたので着替えとかなにもないんですけど」

「連れてきてないし。勝手に乗って来たんだろうが」


とまあ俺たちバタバタ騒いで腹減ったから朝食はパンをかじっていたが……うん。今落ち着いて?かはわからんが。着替えてないことに気が付いた。うん。バタバタするといろいろ忘れるんだよ。


「なら早く帰るんだな」

「……そりゃ……帰りますけど」

「なんだよ」

「……1人で帰らします?」

「朝だぞ?明るいぞ?オバケは太陽に弱いのか?」

「……飛び降りる準備でもしましょうか?」

「それは俺がか?吉野がか?」

「先輩ですね」

「強制的に記憶を消しに来たか」

「はい」

「すんなり答えやがったよ」


と、その時だった。


♪♪~


俺のスマホが鳴っている――どこで?

どこだ……あっ、棚の上か。


「……もしもし」


電話に出てみると……って誰からか確認すらしないで出たか。


「あっ。葛先輩!大変です!!」

「元気だな……そっちも。ってどうした古市?」


電話口の向こうからはよく知った声が聞こえてきていた。ってみんな休みの朝から元気だな。マジで。


「……古市さん」


とか俺の近くでは吉野がなんかつぶやきつつ。

こちらを……睨んでいた。なんで次は俺睨まれてるんだよ。


「夜空ちゃんと連絡が取れないんです!」

「……吉野と?」


と。俺は隣に居る奴を見つつ返事をする。


吉野も自分の名前が出てきたからかきょとんとしてこちらを見ている。


「昨日あれから夜空ちゃんに電話したんですが。その時は出なくて……その後私時間を空けて連絡しようとしたら寝ちゃったんですが……その間に夜空ちゃんから折り返しがあって――少し前にそれに気が付いて。電話かけているんですが……つながらなくて――」

「う、うん。まだ寝てるんじゃないか?」

「もうお昼前ですよ?何回もかけてるのに出ないので……夜空ちゃんもしかして風邪ひいて寝込んでいたりするんじゃないかと――」

「……風邪ね」


俺は再度目の前に居るやつを見ながら言う。


「先輩。心配してないんですか?昨日は変な感じで別れちゃったのに……」

「いや、まあうん。風邪はひいてないだろ」

「わからないじゃないですか。寝込んじゃって昨日の夜何とか私に連絡。そしてその後倒れたりとか……」

「古市よ。そこまで気になったなら。様子を見に行けばよかったのでは?」


と、まあ俺の前にさっきから吉野はいるから……留守でそれはそれでまた俺に電話がかかって来たか。とか思っていると――。


「あっ……それがですね――」

「うん?」

「足……さらに痛めてベッドから動けなくてですね……てへへ」


てへへ……とかかわいい事言っているが……ってそうじゃなくて!


「—―はい!?」


と、俺が言うと――。


「きゃ……びっくりした――」


と、俺が声を出したからか。隣でそっと聞いていた吉野が悲鳴を上げた。


「—―うん?先輩。今なんか悲鳴聞こえませんでしたか?」


すると古市側にもちょっと聞こえてしまったらしいが……まあごまかしておいて……。


「それはいい。で、どういうことだよ。さらに痛めた?」

「ま、まあ……てへ?」


と、それから俺は古市の現状を聞いたのだった。

結局それから半時間後くらいして俺と吉野は古市の家に居た。


古市の家に着くと……古市の母親に案内されて……ベッドに大人しく座ってる古市と先ほど会ったところだ。


ちなみに古市の母親。

めっちゃくちゃ美人であった。うん。さすが古市親子である。ってそれはいいか。とりあえず今は……。


「……つまり俺が捨てたのが原因か?」

「いえいえその後に勝手にこけたので」

「はぁ……昨日言えよ」

「だって……恥ずかしいじゃないですか。ズッコケたって」

「っか。病院行ったか?」

「今日は閉まってるのでこのまま様子見で週明けもダメだったら親に連れて行ってもらいます。まあ今の私とっても大切にされているみたいで――パパもママもめっちゃ優しいのでこのままでもいいんですけどねー」


と。笑顔でそんなこと言う……古市、うん。これは頭も打っているかも……とか俺は思いつつ――。


「……」

「……」


うん。何も言えなかった。ちなみに吉野も何も言わずに古市を見ている。すると――。


「なんで2人とも黙るんですか。って、そうですよ。なんで夜空ちゃんと葛先輩はとっとと仲直りしてるんですか!?一緒に来るとか思ってませんでしたよ!」

「あー、だってこいつ俺の家着てたし」

「先輩。それ言わない約束—―」


と。慌てた様子で吉野が言うが……既に言った後だ。うん。


「誰だよ。甘えてきて、そのまま人の家に来て。寝てたのは」

「あれ?私が心配しなくてもむしろ前より仲良しになった……?」

「いや、昨日から叩かれまくっている。仲良くはなってない」

「それは朝先輩が私と一緒に寝たりしているからですよ!」

「えっ!一緒に寝たの!?」

「—―あっ……」

「……また自滅したよ」

「むー。先輩の馬鹿ー」


と、それからしばらく俺と吉野、古市は。古市の部屋にて雑談を続けて……ちなみに古市の部屋はおしゃれだったな。うん。綺麗にまとめられていて。古市らしいというか。いい部屋だった。かわいい置きものとかいろいろ置いてあったし。


それからしばらくして。古市の母親がお昼ご飯をごちそうしてくれた。

とまあなんやかんやで休日は古市の家で、という感じで時間が過ぎていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る