第54話 わがまま
なんか大丈夫大丈夫と言いつつ。
先ほどよりも足を引きずっている感じだった古市を先ほど家へと送った。
そしてずぶ濡れの俺は家の前で古市と別れた。
まあこの姿を古市の家族に見られてもだからな。
「もう親も帰ってきているみたいです」
とか古市が家を見て言っていたのでそれを信じて、家の前で古市に荷物を渡して古市とは別れた。
そしてずぶ濡れの俺。
先ほど歩いて来た道をまた戻り。橋を今歩いている。
もちろんまだ全身ずぶ濡れ。上から下まですべてが濡れているから気持ち悪い。うん。ってか。なんか知らんが怒っていた吉野に上着を貸したから……今度は俺のカッターシャツが肌に張り付いているという状態。
――まあ……これは問題……無いよな?不審者とかにならないよな?透けてますとか……うん。大丈夫だろう。とっとと帰ろう。
俺は足早に家へと向かった。
そして自宅マンション到着。本来ならエレベーターで上がるところを今日は普通に階段で上がって来た。いや、濡れたまま乗るのも……だったのでね。
そういえば触れていなかったかもしれないが。
このマンションもちろん非常階段とは別に普通の階段もあるのでね。
ってこっちの階段使ったの……久しぶりかも。うん。非常階段は無駄に使っているんだがな。屋上行くときとかに。うん。で、最近は吉野とよく使ってる気がするし。
とりあえず家に帰って来た俺は玄関に荷物を置くとそこで濡れている服を全て脱ぎ。風呂場へと直行。うん、1人だからな。こういうのが出来るから楽だ。
ちなみに……川の水はあまりきれいじゃなかったのか。脱いでいる時に感じたが。なんか泥臭いような……ってまあ土手やらで泥が付いたのもあるか。とかそんなことを思いつつ。とっとと洗い流した。
さっぱりした後。俺はタオルを巻いて濡れた服やらをとりあえず洗濯していた。明日休みで良かった。とか思いつつ。
「……ってか上着吉野に着せたままだ」
とかいうことにここで俺は気が付いた。
「あれは……取りに行った方がいいか……邪魔だよな。うん。吉野が洗濯してくれるかもしれないが――ってあの吉野の態度だと……どうだろうか。うん。最悪捨てられてそうなので……早めに回収に行くか」
俺はそんなことを思いつつ。片付けをしてから。着替えて。
スマホを手に取ったのだが……。
「……果たして、吉野はメッセージを見て返事をくれるか……」
先ほどの態度を見ると……どうだろうか。
無視……される気も……って俺は何をしたんだ?何があったんだ?なのだが……全くわからん。
「まあ古市がなんか連絡してくれるとか言っていたが。早く解決した方がいいか。またあいつ飛ぶかもだからな。さっきのは……ちょっとミスとかまあ。事故と思うが……事故だよな?」
とかつぶやきつつ。俺は貴重品を手に取り。
吉野の家へと向かうこととした。
2日間の遠足で結構な体力を使った気がするが。俺はまだ部屋でくつろぐとかいうことにならない。っか腹減って来た……うん。帰りにコンビニでなんかついでに見てくるか。
俺はそんなこと考えながら暗くなった道を吉野の家へと向かって歩く。
しばらく歩くと……目的地が見えてきた。家の電気はついている。
まあちゃんと吉野は帰った……いや、ばあちゃんとかが居る可能性もあるのか。とか思いつつ。
一息ついてから、インターホンを押した。
ピン――ポン。
うん、なんか独特な鳴り方をした気がするが……いいか。
「……」
「……」
「……あれ?」
おかしいな。電気は付いているが。返事がない。
もしかしてすでに中からは俺が来たとわかっており。無視している。とか思っていると……。
「……すみません。ちょっと待ってください」
と普通に中から吉野の声が聞こえた。
そして室内でバタバタしている音が聞こえてきて――。
「すみません。お待たせしました。どちら様ですか?」
そんな声が再度中から聞こえてきたので……。
「吉野。俺だ俺」
ってこれじゃオレオレ詐欺になるか。とか思ったが――。
ドアの向こうの奴はちゃんと理解してくれたらしく……。
「……先輩?」
「今いいか?」
「…………嫌です」
「おい」
うん。俺とわかったからか。少し間があってから拒否された。
って何でだよ!俺は何したんだよ。である。とか俺が玄関の前で思っていると――。
「……5分待ってください」
「えっ?」
そんな声が聞こえて来た後—―静かになった。
「えっと――待てってことか」
と、俺は大人しく。吉野の家の前で5分いや10分弱待機した。
――ガラガラ。
しばらくしてやっと玄関のドアが開いた。
「……何ですか」
「……あー、悪い。風呂入ってたのか」
ドアを開けてくれた吉野は……まあ風呂上りというのがよく分かった。
髪もまだ濡れていたし。タオルも持ってるし。ちょっと汗かいているし。
「……めっちゃ入ってました」
「いや、上着をな。取りに。あれは邪魔だろうと思ってな」
「あっ……そういうことですか」
「それだけもらったら帰るよ」
「えっ……」
俺が言うと何故か……悲しんでいる?ような声を出した吉野だった。
「なんだよ」
「……何でもないです。こっちです」
と、吉野は中へと入っていった。これは……自分で取りに来いというやつだろうか。とか思いつつ。
「お邪魔します」
と、室内へと入る俺。中は綺麗に整理されている。おじいちゃんかおばあちゃんの趣味なのだろうか。玄関付近にはいろいろ置物などが飾られていた。
そしれどうやら洗面所に俺の上着はあるらしく。玄関からすぐのところにあった洗面所へと吉野が入っていった。
「……ありがとういございました」
そう言いながら上着を吉野は渡してきた。
「ああ。っか吉野もゆっくりしろよ。明日休みだし。風邪ひくなよ?」
「……」
「何故に無言。暴れるつもりか?」
「暴れませんよ……ってその……先輩怒ってないんですか?」
「えっ?何に」
「……ならいいです」
「うん?まあ俺が居ても邪魔だろうし。とっとと帰るよ。腹も減ったしな」
俺はそう言いながらちゃんと袋に入れてもらってあった上着を吉野から受け取った。
すると……。
「あ、あの!」
「—―うん?」
「……晩ごはん……食べていきませんか?」
「はい?」
急に後輩にそんなことを言われた俺だった。うん。何を言いだすんだ?ってマジで思ったな。
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