第33話 丸見え

翌日。今日は短縮授業とやらの日。短縮授業はまあその名の通り。授業時間がいつもより短い。なぜかというと先生らの会議が午後からあるから。


なのでいつもより1時間くらい早く帰ることができるのだが――。


それは昼休み。


「久遠。久遠」

「なんだ?」

「今日は放課後生徒会室な」

「まてまて。今日はせっかく早く帰れるんだぞ?」

「まあまあいつも通り暇だろ?あと古市がご希望だ。今日呼び忘れたら俺が1人で作業することになる」

「古市が?」

「ああ昨日大変だったわ。久遠来ないからで拗ねてよ」

「うん?古市がか?」


うん。古市が拗ねている姿……うん。珍しいか。


「そうそう。結局作業は山のまま。期限は今日。明日集会だからな。だから久遠。吉野さんも捕まえて生徒会室な」

「いやいや、って吉野の予定は知らんぞ?」

「まかせた」

「おい」


讃大は言うだけいって他に用事があるらしく。教室から出ていった。


「はぁ――」


俺はせっかく早く帰れる日に帰れなくなった……。


そんなこんなで今日は昼からは体育があり。それが終わったらさようなら。である。あったはずだった。


が、俺は帰れない。手伝いが強制で決まったからな。

最後の授業が体育だとそのまま帰ったり部活に行けるので荷物を持ってくる生徒が多いが俺は手ぶらだ。何度も言うが帰れないからな。


ちなみに体操服短パンは吉野が昨日返してくれたからセーフであった。なんか香りがな。吉野の香りというか。うん。変なことになるとだからあまり触れないでおこう。って古市とは電話で話しただけだからまだ返してもらってない。忘れてはないと思うのだが……。


とか思いつつ。体育終了後俺は誰も居ない教室で着替えて生徒会室へ向かった。まあ普通はみんなあのまま帰るからな。教室に戻って来る奴が居なかったから。パパっと着替えれた。


ちなみに吉野へはメッセージをいれてあり。返事もあった。


「すでに古市さんに捕まりました。放課後連れて行かれます……」


と、返事が来た。あちらもおつである。


讃大は職員会議が始まる前に先生に確認やらやらで職員室に向かっているから今はいない。なので俺は1人で生徒会室へ。


「入るぞー」


そう言いながらドアの閉まっていた生徒会室のドアを開けると。


ガラガラ。


「……えっ?」

「—―へっ!?」


生徒会室のドアを開けたら段ボールが数箱……。


じゃなくて。後輩が下着姿になっていた。いや上はシャツを着て……いやボタンは外れたままだから下着が見えてるか。ってこっちを向いているから……お腹から下丸見えだよ!結構可愛い下着。

――じゃなくて。下着の感想言ってどうする俺。捕まりたいのか?


「きっ――きゃあ!?」

「わ、悪い」


はい。すぐに生徒会室のドアを閉めました。よし。見えなくなった。ほぼ下着姿の古市は見えなくなった。

うん。って何してるんだ古市のやつ。とか思っていたら。


「先輩?」

「……う、うん?あ、ああ吉野か」

「なんで入らないんですか?古市さん先に行きましたよ?」

「いや……ちょっと事故で」

「うん?」


吉野がちょうど生徒会室にやってきたのだが。

説明が大変難しく。いやうん。難しいだろ。なんて説明すれば正解なんだよ。


とりあえず着替え終えた古市が廊下に声をかけてくるまで吉野を足止め?という形になった俺だった。


そして――。


「先輩のエッチ、変態。反省してください!土下座してそのまま窓から飛んでください」

「よ、夜空ちゃん。私が鍵閉めたつもりだっただけだから。恥ずかしかったけど……」


ちなみに下着姿を見られた古市の方が俺の弁護をしてくれている。まあ吉野には飛べやらいわれてるから……ここで下手な対応。反応すると俺の命に関わるからな。大人しく俺はしている。


「ダメだよ。古市さん。先輩はすぐ調子乗るから」

「葛先輩だから大丈夫だよ。ちょっと見られただけだし」


ちなみに現在は俺は生徒会室で床に正座し吉野に怒られている。吉野に。である。

ほぼ下着姿を見てしまった。古市は恥ずかしそうにはしていたが。まだ顔赤いし。でも自分が鍵をしめたつもりだったやらですぐに許してくれたのだが――。


吉野がね。めっちゃ怒っている。オバケちゃん怖い怖い。なんで自分の事のように激怒しているのでしょうか……。


「古市さんそんな簡単に許しちゃだめだよ?」

「夜空ちゃん……もしかして先輩となんかあった?」

「あっ……うっ……」


うん。吉野はまあ、うん。自分の過去がいろいろあるからかね?ちょっと言葉に詰まっていた。


「葛先輩。夜空ちゃんがなんで怒っているかわからないんですが……」

「まあ、前にいろいろあったからだろな」

「いろいろ?」


まあ、その後もなんやかんやあったが。ふと、このまま過ごすと作業がやばいと古市が言い出して。まあかなり作業開始が遅れたが讃大が来るまでは3人で頑張り……讃大が来たら4人でなんとか。なんとか作業を終わらせた。


「疲れたー」

「動けないです」


終了と同時に俺と吉野は机に潰れた。


ちなみに作業をしていたら。吉野のお怒りも冷めたらしく。まあうん。いつも通りとなった。よかよか。俺飛び降りなくて済みそうだ。


「お疲れお疲れ。いゃー、ギリギリだったな」

「讃大が戻ってくるの遅いからだろ?」

「先生に捕まってな」

「にしても疲れた。って、マジで遠足泊りがけなのかよ」


俺は今さっきまで作っていた冊子をみる。うん。日程がやっぱり2日間なんだよなぁー。遠足なのに。何度見ても2日と書かれている。


「マジだよ」

「生徒会長よ。なんとかしろよ」

「葛先輩。諦めましょう。もう何を言っても決まっていることですから」


古市が横にやってきた。先ほどの事故はもうよいらしく。いつも通りに接してくれている。こっちもよかったよかったである。


「っか遠足休みたいわ。って、内容は普通に……テーマパークで遊び。泊まり……翌日自由行動。まあみんな喜びそうだが……グループ。部屋がな。他学年交流って、でおまけに男女ミックス可。ツッコミどころたくさんだぞ?」

「……うん。おかしい」


隣で吉野もボソッと言っていたが……うん。まあ一生徒が何を言っても決まったことはかわらんか。


なんでこんなことになったのか。って、ちなみに日中のグループと部屋のグループは別でも可能やらやら、と、把握がめっちゃ大変そうだったが……学校側もどうするんだか。ちなみに部屋は3人までとか。多分ベッドか布団が3人分なんだろうな。と、冊子を見ていると。


「じゃ葛先輩。当時はお願いしますね?」

「なにが?」

「同じグループですよ」

「……あー」


すると古市は俺の耳元で。


「……さっきのことがありますからね。断ったり、休んだから……高くつきますよ?もしかしたら言いふらしちゃうかもですよ?」

「……こわー」


高くつくって……あれ?俺金払わないとなのか?やばいな。高額請求されそう。って、変な噂は流すなよ?マジで。


とか思っていたら。


「先輩。変なこと考えてる」

「ないからな」

「ある」


吉野が横から入ってきた。


「なんか最近久遠のまわりが楽しそうだな」

「原因は讃大だな」

「なんでだよ。っかここまで付き合ってくれたんだから。久遠段ボール体育館まで運ぶのも手伝てくれ」

「いやいやいや下校時間とっくに過ぎているんだが?」

「明日すぐに必要だからな」

「……残業手当出せよ」

「あいにくないな。自販機のジュースはいける」

「なんたるとこか……安すぎるが……まあ飲み物はもらう」

「了解」


それから俺と讃大は段ボールを持って体育館まで往復……ってまあ1回では到底無理なので数回往復が必要だったのだが……。


「悪い久遠先生に呼ばれてな。ちょっと行ってくるわ」

「……」


また讃大に逃げられた。まだ半分だったんだが……このくそ重い段ボールどうしろと?1人でやれと?自販機でのジュース馬鹿買いするからな?とかいろいろ考えつつ段ボールをまた取りに生徒会室へ戻った。


ちなみ女子2人。吉野、古市にこの重たい荷物を運ばせるのは……と、いうのと下校時間を過ぎているからやらですでに帰ったかと。まあ讃大が帰らしていた。あとはやっておくやらやら。言って古市たちの評価上げ頑張っていたな。って、讃大はいつも通りか。まあ古市の讃大に対する評価がガタ落ちしたからな。讃大頑張れ。まあ「ありがとうございます。讃大先輩」とか古市が感謝していたみたいだし……ちょっとは評価上がってるだろ。


……って、なんか1人で段ボール運んでいたら悲しくなってきたな。

なんで俺こんなに頑張っているんだろうか……。


まあ結局なんやかんやで1人で残りの段ボールを体育館のステージ横まで運んだ。そしてこれが最後1箱。ラストの生徒会室から体育館である。ってか讃大戻ってこないし。


「……しんど」


紙ってな。めっちゃ重いんだよ。それがたくさん……マジしんどいである。階段とか怖いし。うん。危険。とか思いながら1人で廊下を歩いている俺。


ちなみに下校時間なんて1時間以上前だから……校舎内は誰もいないし。静かだし。なんか薄暗くなってきたし。なんか……嫌な雰囲気だった。


ここに吉野がいたら叫ぶな。間違いなく。ホラー!とかな。


そんなことを思いながら階段降りて体育館への通路。校舎から体育館までは少し外を歩くんだが。そこに差し掛かった時だった。


「あっ、先輩居た」


急に横から影が……長い髪を揺らしながら……。


「ホラーだ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る