第15話 果樹園

驟雨に濡れた果樹の葉たちが

ひかりを孕み、生まれ変わる


(祖父の足跡、祖母の足跡、その曽祖父たちの……)


濡れた青草を蛙や虫、人が踏み分け

果樹の根本で今まさに死にゆく獣をみる

みるみると青草が死骸を呑み、空には


驟雨をもたらした雲と風が戯れ、影が延びる


刻一刻と果実のときが重みを増す

地に落ちるのか、腑に落ちるのか

そのときは確実に俄かにくるのだ


だが今だけは時の軛から抜け出して

お前は歌っている、光の反射のなかで

乱舞する、地平線の彼方と踊っている


(はじめて果実を齧ったとき、

   一日は二十七時間みたいだったよ)


たくさんの足音が果樹園に溢れ、山法師の実が

ほんのりと赤く染まり始め、夏が歩いていった

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