第9話 おおきく息を吸って、吐いて、吐いて、吐いて
風にしなる木々の梢のように
私の細胞が揺れてしなるから
世界が廻るように蜜蜂の翅が
鼓動を運んで来てくれるだろう
とても静かに命に運ばれていく
どこへ?どこへかはわからない
風船が幼な子たちの手から離れ離れ
頭上をよぎってすれ違いを繰り返す
そんなことは嘘ばかりじゃないか?
放浪するひとりはもう盲いてしまい
なんて呼ばれているかもわからない
樹木の根本で眠りに落ちて、そこかしこ
身体をまさぐる小さな手足や触覚と、抱きあって
ひとくさりの生命が解けていくのを夢みた
石が水を切り、そのたびに飛び跳ねるから
私と誰かの声が、足が、手が、呼吸する
ひとり立つ朝にはその息が川を流れて
どこに行こうかと私と肩を並べている
そんなものは嘘ばかりじゃないか
なのに虚実と妄執は井戸に
注がれていくカフェ・オレ
入り混じり後戻りはできない
蜜蜂の羽音が敷き詰められた路地を踏みつける
羽音を頼りに肩や脛を擦らせながら歩いていく
ひとりひとり、たしかにそこにいる嘘ではない
時がくれば森に入り、川に入り消え入り、離れ離れ、だが
当たり前のようにカフェ・オレを飲み、嘘を吐くのだ
おはよう、こんにちは、ありがとうございます、さよなら
また会いましょう、楽しかったです、満開の桜が綺麗ですね
すみません、眼が疲れてまして目薬をささせてください
(葉桜が好きなんです、今日はあなたと話して疲れました。時間の無駄です。もう会いたくありません、もう一度言いますが僕は満開の桜より、葉桜が好きなんです。はやくはやく桜が風に散るころ遠くへいきたいのです)
風にしなる木々の梢のように
私の細胞が揺れてしなるから
世界が廻るように蜜蜂の翅が
鼓動を運んで来て樹木の根本で眠りに落ち
そこかしこ身体をまさぐる小さな手足や
触覚と抱きあってひとくさりの生命が
ほどけて運ばれていく夢からさめて
しまう、折り畳み、綺麗に角をなくしたら
蜂蜜を入れた紅茶を飲みほしてせいめいは
今日も足に運ばれて、おはようございます
深呼吸します、朝に、大きく深呼吸しよう
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