バービーボーイズ




 何か、昔活動してたバンドを紹介し、再販する時にメディアでは「伝説のバンド」とか書かれることが多いです。


 伝説のバンド、BO∅WY。

 伝説のバンド、THE BLUEHEARTS。

 伝説のバンド、レベッカ。

 伝説のバンド、ユニコーン。

 伝説のバンド、etc、etc。


 多分、一度は解散してるのが条件なのかもしれないですね。

 リンドバーグは伝説のバンドのラベリングされたのは見たことありますが、PARSONZは見たことなかったりします。彼らは解散は一度もしてないですから。

 解散して再結成した場合でも「伝説のバンド」の冠は付くみたいです。

 ユニコーンとかTHE YELLOW MONKEYとか。


 1980年代半ば~90年代半ば頃のバンドがけっこう「伝説のバンド」扱いされやすいみたいですね。

 70年代から活動してるRCサクセションとかサザンオールスターズも「伝説のバンド」と言ってる人もいますが、メディアでそう挙げられてることはあまりないように見えます。RCはともかくサザンはまだ活動中だからですかね。

 同じような時期に活動していたのに、何かあんまり「伝説のバンド」の冠を付けてもらえないハウンドドッグや爆風スランプにちょっぴり同情します。

 まあ80年代後半~90年代にかけては滅茶苦茶バンドブームで、それはもう多くのバンドが活動してましたから、一曲だけでなく複数のヒット曲を持っているだけでも十分振り返って「伝説のバンド」と言ってもいいのかな、とも思ったり。


 何か「伝説」の大安売りな気もしますけどね。


 同時代に青春を迎えた私たち世代にとっては、リアルタイムで様々な音楽を聞けて良かったと思いますし、あの頃のバンドを「伝説のバンド」と言ってしまうのも何か違和感はあったりします。


 というわけでバービーボーイズです。


 何かリアタイで活動していた時期は、凄くお洒落で大人の世界観のバンドってイメージでした。

 何つーか、歌詞がエロい。

 歌詞をそのまま書いてしまうとJASRACがすっ飛んできそうですから書けませんが、男女の夜の駆け引きを、ツインボーカルのコンタと杏子が掛け合いして歌うんですが、どちらもハスキーな声で声量があり艶っぽい。

 しかもどっちかっていうとコンタの方がキーも声質も高いっていうね。

 何か他のバンドとは違って特異な立ち位置のバンドでしたね。


 暗闇でッ、ダンス!


 バンドの楽曲はリーダーでギターのイマサが殆ど手掛けていますが、何か凄く当時の他のバンドの曲にはない、面白いギターのフレージングとアレンジがされています。

 詳しい人にはわかるのでしょうけど知識の貧しい私には、イマサの音楽ルーツがさっぱり見当つきません。

 同じ言葉を繰り返し使って恥ずかしいのですが、とにかく当時のビート系が主流だったサウンドの中で、彼らのサウンドは何か他とは違って特異だったのです。


 く・ら・や・みでダ~~ンス!


 バンドの土台を支えるリズム隊も個性的です。

 ドラムスのコイソは小柄なのにパワフルで、ジャストかやや前気味のリズムを刻むんですがベースのエンリケはスタジオ録音だと凄んごく下の方で鳴って動いて、後ろ気味のリズムなんですね。

 パッと聞くと何かそれが独特のリズムのうねりを作ってます。

 一歩間違えると合ってない感じになってしまいますが、絶妙なバランスでズレを感じさせないという。

 自分でベースをコピーしてみたら普通に遅れてしまってました。

 そんでジャストで合わせると気持ちいいんですが、あのグルーブにはならず、綺麗すぎに感じてしまうという。

 難しいです。

 独特です。


 そこにイマサの単音が際立つギターが乗り、コンタの吹くソプラノサックスがアクセントをつけ、コンタと杏子がパワフルに掛け合いハモり、バービーボーイズ独特の世界観に聞く者を引き込んでいく。


 当時生でステージを見たことはないのですけど、今YouTubeで見ると圧巻のパフォーマンスですね。

 杏子のステージパフォーマンスもくねって回って何となくフラメンコの踊り手の妖艶さがありますし、コンタはサックスにボーカルに忙しいですけど、男の粋がったアクションを所々入れてますし、意図してるのかどうなのかステージングでも自分達の世界を出してます。

 フェスなんかで一緒になった他のバンドも困っちゃいますね、本当に。


 バービーボーイズに私が最初にハマった曲は「何だったんだ!? 7days」でした。

 えへ、中学も学年が上がると私もいっちょ前に愛だの恋だのが気になってきたんでござんす。

 特徴的な仄かにバグパイプ風味のギターリフから入り、コンタと杏子のオオーオーオーのハモリからの、コンタの振られた男の嘆き節。

 この曲はコンタパートが殆どで、杏子は曲の一部を歌う以外はコーラスに回ってるわけですが、この杏子の歌う一部が、コンタの歌う嘆き節の強烈なカウンターになってるんですよ。

 コンタは杏子に振られたと思ってずーっとめっちゃ嘆いてるんです。7日間無駄にしたよー、他の男と遊びに行ってるよーって。

 それが杏子からすると、コンタは一人相撲で、全然杏子に気持ち伝えてないんです。

 杏子は嘆くコンタを見て、別に嫌ってないし、もっと気軽に遊びに行こうよって、本当にあっさりしたもんなんです。

 女々しい男の思い込みの浅はかさを歌ってるんですね。


 これを聞いて勇気づけられる中学生、高校生は結構いたでしょう。

 最も現実ではこんな勘違いで浅はかな男に、こんな寛大な態度を取ってくれる女はあんまりいないと思いますけど。


 これを3分47秒で表現してるんです。


 いや、凄いですよ。

 文章で同じ内容を表現しようとしても、そこそこの文字数食うと思うのです。

 音楽だからこそですね。



 バービーボーイズは1984年からメジャーで活動して6枚のオリジナルアルバムを出して1992年に解散します。

 その後何度か再結成して、2018年からまた活動再開しています。

 再結成した時のライブ映像もYouTubeには挙がってますけど、何か面白いなと思ったのは、解散前はボーカルの印象がコンタ>杏子だったのが、再結成後はコンタ≦杏子になってるように感じたことです。

 杏子はバービーボーイズ解散後も「福耳」などで歌ってましたから、コンタにボーカルとして追いついたのかなって思いました。


 私の何となくのイメージですけど、彼らの特異なスタイルはデビューアルバムの頃からのものですが、2枚目のアルバム「Freebee」3枚目のアルバム「3rd BREAK」4枚目のアルバム「LISTEN!」が絶頂でした。

 セールス的にはオリコンチャート1位を獲得した5枚目のアルバム「√5」が代表作になるのかも知れませんが、何となく「√5」の頃にはパワーが落ちたように思います。


 でもとりあえず、彼らを知らない人がもしもいるのでしたら、一度聞いてみる価値はあるバンドだとお勧めいたします。

 歌詞の中に電話するのにコイン使うとか、携帯が無い頃の情景を歌ってたりするので今の世情とは違うと思いますけど、男と女の間の感情は時代が変わってもそんなに変わらないと思うので。


 素敵な目くるめく大人の恋愛ゲームの世界にHey C ‘m’ on Let’s go!


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