AC長野パルセイロレディース対サンフレッチェ広島レジーナ





 本日11月14日、AC長野パルセイロレディースはホーム長野Uスタジアムにて、サンフレッチェ広島レジーナと対戦しました。


 サンフレッチェ広島レジーナは、WEリーグ開幕にあたって新規参入したチームです。

 広島には元々なでしこリーグに所属しているアンジュヴィオレ広島というチームが有り、そこが母体になるのかと思っていましたが、そことは別に全く1からチームを立ち上げました。

 ちなみにアンジュヴィオレ広島は今年もなでしこリーグに所属しています。


 サンフレッチェ広島レジーナは1からチームを立ち上げた訳ですから選手も1から集めています。ただ、昨年のなでしこリーグ1部、2部からけっこう有望な選手を集めています。


 代表歴のある選手で言えば、10番の近賀ゆかり選手。2011年の世界一になった時のなでしこJapanのサイドバックでした。その頃はスピードと強さ、上手さを兼ね備えていましたが、現在流石にスピードは全盛期より衰えてはいるものの、経験は積んで強かさが増しています。


 8番増矢理花選手も昨年までINAC所属で、東京五輪の代表からは漏れましたがここ数年のなでしこJapanには常に召集されていたサイドアタッカーです。


 31番福元美穂選手も2011年のなでしこJapanの一員でGK。強烈なキャプテンシーで味方を鼓舞する闘将で、ベンチにいるだけでもいい影響をチームに与えてくれます。


 9番上野真実選手も東京五輪代表は逃しましたが、ここ数年は代表召集され、次の代表トレーニングキャンプにも召集されている選手。体幹がしっかりしていてポストプレーに安定性があり、自ら得点も取れるため、要注意です。


 他にもセレッソ大阪レディースやノジマステラ、アルビレックス新潟、愛媛FCレディースなどから昨季のレギュラー選手2番松原優菜、3番呉屋絵理子、4番中村楓、7番川島はるな等を獲得。

 オルカ鴨川FCから獲得した昨年の2部得点女王11番中嶋淑乃は開幕戦でもゴールを挙げており、高い得点感覚を披露しています。


 監督の中村伸さんは長年J1サンフィレチェ広島で森保一さんや城福浩さんの元でコーチを務めておられた方です。

 開幕戦では4-4ブロックを敷いて固く守り、ボールを奪ったら丁寧に繋いで攻撃を組み立て、サイドを使って攻撃してくるチームに仕上げてきた印象でした。



 さて、そんなサンフレッチェ広島レジーナをホーム長野Uスタジアムに迎えての1戦、1,231名の観客の前で14:00K.Oキックオフ


 サンフィレチェ広島レジーナがボールを保持し、AC長野は高い位置でプレスを掛けてボールを奪ってショートカウンターを狙う展開。

 サンフィレチェ広島のサイド攻撃を、スピードに乗る前に対応して防ぐAC長野。

 最初に決定的なシュートチャンスを掴んだのはAC長野でした。


 25分、相手DFラインでのボールの繋ぎを読んだ7番八坂芽依がボールをカットし、ゴール真正面のスペースへ。

 そこに16番鈴木日奈子が入り込みワントラップしてシュート! はGK真正面でセーブされます。

 この時のプレーで7番八坂が足を傷め、14番泊志穂が投入されます。

 7番八坂はこの試合、このプレーの前にもいいクロスを何本も送っており、攻撃面において期待が持てていただけに残念な負傷交代でした。


 その後も展開は変わらずでしたが、43分、AC長野が中盤で激しくプレスに行きバックパスを誘います。そのバックパスを体を入れ替えて奪った10番瀧澤千聖がPAペナルティエリア内ゴール真正面からシュート! 

 完全に入ったと思いましたが、僅かに左に外れゴールならず。

 これはちょっとチームにとっても瀧澤千聖にとっても後を引きそうな嫌な外し方でした。


 前半はこのまま0-0で終了。


 後半は開始早々、AC長野が攻め込みます。ハーフタイムに小笠原監督から何らかの指示があったのでしょう。

 49分に10番瀧澤千聖が、50分に30番國澤志乃がシュートを放ちます。


 52分にスコアが動きます。

 サンフレッチェ広島レジーナDFラインから長い縦パスが相手9番上野真実に入り、AC長野の左サイドに展開されます。

 左サイドで回された後、PA外3mの場所にフリーでいた2番松原優菜にパスが入ります。

 2番松原はゴールに向かうクロスを入れ、そこにAC長野2番肝付もえと競り合いながら11番中嶋淑乃よしのが飛び込みますが、触れず。

 GK21番伊藤有里彩ゆりあは11番中嶋の動きに注意が行っており、抜けて来たボールに膝を落として触ったものの止め切れずボールはゴールに転がり込みます。


 記録は2番松原優菜のゴールで失点、0-1。


 1点を返すため反撃に出たいAC長野ですが、サンフレッチェ広島レジーナは1点取ったことで落ち着いたのか、集中して守備をし、セカンドボールも殆ど回収し、攻撃時のパスミスも無くなっていき、AC長野はロングボールを多用せざるを得なくなり、精度の低いロングボールを回収され攻められ、と失点後は殆どの時間をサンフレッチェ広島レジーナに支配されてしまいます。


 途中交代で65分に29番川船暁海、6番大久保舞、19番藤田理子の3枚替えをし、82分には8番住永楽夢らむを投入するなど交代カードを切りますが効果は出ず、かえって守備のマークで混乱も見られるようになります。

 

 67分、CKコーナーキックからヘディングシュートを受け、完全にやられたと思ったところ交代で入っていた29番川船暁海のゴールライン上でのミラクルなクリアで難を逃れ、 82分のカウンターの1対1をGK21番伊藤有里彩ゆりあが必死で押さえるなど何とか1点差のままで試合は90分を過ぎ3分間のATアディショナルタイムに。


 せめて1点返して同点に……しかしATアディショナルタイムに入った時は攻め込まれていて、サンフレッチェ広島レジーナのCKコーナーキックでした。

 ゆっくり時間を使ってボールをコーナーアークにセットし、当然のようにショートコーナーでサンフレッチェ広島レジーナは時間を使って来ましたが、一瞬あまりにフリーになったためか、サンフレッチェ広島レジーナ15番小川愛が中にクロスを入れてきました。

 ここで失点すれば当然敗戦濃厚。サンフレッチェ広島レジーナ17番大内梨央のヘディングは、3番五嶋京香と30番國澤志乃に挟まれていたためゴールには飛ばず、そのボールをGK21番伊藤有里彩ゆりあが押さえます。


 ボールを持ったGK21番伊藤有里彩ゆりあは、大きく手を振って上れ上れのジェスチャーをし、前線に大きく蹴り出します。


 このボールはサンフレッチェ広島レジーナDFに大きくはじき返され、そのセカンドボールもサンフレッチェ広島レジーナに回収されます。

 そしてAC長野左サイドのスペースにパスを出されますが、10番近賀ゆかりが追い付くにはやや長く、AC長野17番岡本祐花が前に大きく蹴り返します。

 このボールがサンフレッチェ広島レジーナのDFラインとMFのラインの間に居た10番瀧澤千聖に渡り、瀧澤千聖はドリブルを開始。

 瀧澤千聖に対しサンフレッチェ広島レジーナのDF、4番中村楓は下がらず残って当たりに行きますが、瀧澤千聖は左前に位置した29番川船暁海あきみにパス。

 29番川船はDF2人を背負っていたためダイレクトで右側に流れた14番泊志穂にはたきます。

 14番泊も後ろ向きでボールを受けますが、密着されていた相手DF5番木﨑あおいを軸に右側にターンしてボールを運ぼうとし、たまらず5番木崎は14番泊を倒してしまいファールとなり、AC長野が直接FKフリーキックを得ます。


 泊が倒された時、時間は90分57秒。

 FKの準備中は主審が時計を止めているとはいえ、殆ど時間はありません。

 このFKが得点へのラストチャンスでしょう。


 AC長野から見てPA右側手前2mからの位置。

 直接狙える距離です。


 ただ、2年前まで横山久美が在籍していた時なら、横山が直接狙う期待が持てましたが、今のAC長野に直接狙えるキッカーは心当たりがありません。

 誰がキッカーを務めるのか、と思っていたら3番のキャプテン五嶋京香がボールをセットします。

 五嶋は自陣からのFKの場合はキッカーをすることは度々ありましたが、敵陣で、なおかつ直接狙える位置からキッカーを務めたことは、これまで見て来た昨年までのなでしこリーグの試合も含めて一度もありません。

 五嶋の隣には6番大久保舞も並んで立ちます。

 6番大久保はこれまで敵陣でのFKのキッカーを何度も務めていますが、味方に合わせるボールを蹴るのが殆どで、直接狙って決めたことはありません。

 味方にふわっと合わせるボールを送るのか?

 2人の様子を見ていると五嶋が蹴りそうですが……


 敵味方がゴール前に壁を作り、主審が笛を吹き、


 キッカー五嶋が蹴ったボールは直接サンフレッチェ広島レジーナゴール右上隅に、綺麗な曲線を描いて飛び込みネットを内側から揺らしました。


 サンフレッチェ広島レジーナGK1番木稲このみ瑠那るなも反応はしていましたが届かない位置。


 ゴール! 1-1。


 この時中継で表示されている時間は92分ジャスト。

 主審の時計は笛を吹くまで止められていて中継の表示時間とは違っているとはいえ、残り時間2分を切った時間での値千金の同点ゴールです!


 選手皆FKを直接決めた五嶋選手に駆け寄り祝福しますが、その場で長々喜ぶのではなく、自陣に走って戻りながらの祝福。


 この時は中継を見ている私も、ゴール裏で歓喜に沸くサポーターも、残り時間僅かでの同点ゴールに喜びで頭が一杯でした。

 この文を書くために映像をDAZNで見返しているのですが、選手たちは更にもう1点取りに行くつもりだったのでしょう。


 中継の映像が歓喜のサポーターや、同点ゴール時のAC長野パルセイロレディース側のベンチでの様子をリプレイで流している間に、サンフレッチェ広島レジーナのKOキックオフで試合は再開されていました。


 中継が試合に戻った時、AC長野の左サイド深くへロングボールが送られています。

 もうこの時は残り時間の表示は中継画面に表示されていません。

 プレーが切れればいつ主審がタイムアップの笛を吹いてもおかしくない状況です。

 17番岡本と29番川船が相手26番立花ようと競り合ってこぼれたボールは3番五嶋京香の前のスペースに勢いよく転がります。

 敵に触られる前に五嶋が右足で前に大きく蹴り出したボールは、19番藤田理子が落下点で頭で後ろに反らします。

 DFの前に転がったボールを14番泊がコントロールし運びます。

 泊の前には相手DFが一人、そして右斜め前を走る10番瀧澤千聖にも1枚DFが付いていますが、数的には同数。

 後ろからサンフレッチェ広島レジーナの選手数人が戻り泊を囲みに来ますが、その前に泊は相手DFから右へ逃げる動きをした10番瀧澤千聖へのパスを選択。

 これが通り、フリーとなった10番瀧澤千聖は左から迫る相手4番中村楓が足を出す前にGK1番木稲このみ瑠那るなの位置を確認しグラウンダーでシュートを放ちます。


 見ていた私は43分の瀧澤が外したシーンが一瞬脳裏に浮かびましたが……


 グラウンダーのシュートはサンフレッチェ広島レジーナゴール左隅に入り、ネットを揺らしました。


 ゴール! 逆転! 2-1。


 その後、サンフレッチェ広島レジーナボールでのKOキックオフで試合は4たび再開されます。


 AC長野右サイド深い位置に蹴り込まれたボールは相手11番中嶋淑乃よしのが追うものの先に余裕を持って2番肝付もえが追い付き、大きく蹴り返したところで主審のタイムアップの笛が響きます。


 2-1の逆転でAC長野パルセイロレディースが勝利を収めました。


 後半は殆ど試合を支配され、まったく点を取れるビジョンが浮かばず、敗因はパスのスピード不足と、シュートレンジの狭さかな……そんな敗因分析をATアディショナルタイムに入った時には考えていた試合でしたが、僅か3分間で2点取って逆転勝ちするなんて、これまで男子のAC長野でも、レディースでも見たことがありません。


 すまん!

 ごめん!


 本当に選手、監督にそう言って謝りたくなる程に、見事な試合でした。


 試合が終わった後、選手の何人か、逆転ゴールの瀧澤千聖選手も涙を浮かべていました。

 これまでホームゲームでは未勝利、得点も挙げられていなかったのがプレッシャーだったのでしょうか。


 なんにせよ、一つ吹っ切れるきっかけになる試合だったと思います。



 来週AC長野パルセイロレディースは理念推進日(WE ACTION DAY)ということで試合がなく、次の試合は前期最終戦12月4日(土)ホーム長野Uスタジアムにマイナビ仙台レディースを迎えての試合です。


 ちなみにJ3長野パルセイロも本日アウエーで福島ユナイテッドFCと13時から対戦しており、53分に佐野翼のゴールで1点リードしていたもののATアディショナルタイムにトカチに同点ゴールを食らい悔しい引き分け。

 DAZNでこちらも見ていましたが、男子も女子もサッカーはATアディショナルタイムまで何が起こるかわからない、ということを体現したような日でした。








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