やらない夫は52歳で孤独な人生を送っているようです



 久々のやる夫スレ紹介ですが、何でか次はこれを紹介したいな、と思ったのがこの「やらない夫は52歳で孤独な人生を送っているようです」です。


 まあ、私の実年齢が徐々にこのタイトルの年齢に年々滑り落ちるように近づいている、というのもありますが……


 私の小説「王子に転生してこりゃあいいやと思っていたらこれはこれで苦労があるようです。」の主人公、ジョアン=ニールセンの前世の男を53歳にしたのも、この作品の影響が多少あるかも知れません。

 とは言っても、ジョアンの前世はしっかり結婚していたので、このスレのやらない夫とは境遇も職業も違いますが……


 さて、紹介です。

「やらない夫は52歳で孤独な人生を送っているようです」

 2010年10月9日から同年10月30日までやる夫板Ⅱに投下されました。全5話。

 もう10年以上前の作品になります。

 作者は◆JFX1bAxiSY氏。

 氏は初期のやる夫スレで人気のあった4大長編と呼ばれる作品のうちの一つ「やる夫が徳川家康になるようです」の作者です。この方は作品ごとにトリップを使い分けている方で、やる夫wikiで確認できる作品履歴では活動期間は2008年頃から2011年頃となっていますが、もしかしたら今でもトリップを変えて活動しておられるかも知れません。

 活動していて欲しい、と願っています。


 ストーリーです。

 やらない夫は52歳で職業は漫画家。独身です。

 漫画の才能はやらない夫本人曰く「良いのか悪いのか、俺には程ほどの才能があった。おかげでこの齢まで、一応漫画家として食っていけている。……だが……」とのこと。

 連載はなく、マイナー雑誌の読み切り作品を年に何本か書き、安アパートで独り身ならば何とか食べていける程度の収入があります。

 これまで女性と付き合ったことはなく、過去に1人だけ何となく近しい関係だった漫画家志望の女性(AA:真紅 原作 ローゼンメイデン)がいましたが、告白することもなく関係は自然消滅。童貞は1度だけ行った風俗で捨てました。


「ある日のことだ。背中が妙に痛かった。」

「骨とかの痛みじゃない。なにか、出来物のような痛みだった。」

「背中に吹き出物でも出来たのか? そう思って、俺は自分の背中を鏡で見たんだ。」

「オデキが出来ていた。だが、それは問題じゃない。」

「……俺の背中は完全にジジイの背中だった。」                         「顔や手は、ふだん見慣れている。」                               

「だが背中は違う。めったに見ない。それだけに、自分が老いている事が解った。」

「改めて顔をアップで見ると、老けたことを実感した。」

「そりゃあジジイにもなる。俺はもう今年で52歳になるのだから……。」

 

 のっけから自身の老化を自覚するシーンからこの話は始まります。

 何と言うか、52歳の老いを、淡々と、抜かりなくこの先も描いて行くのです。


 第2話で、東京に住んでいるやらない夫が、実家に帰省し同窓会に出ます。

 今まで殆ど帰省もせず同窓会にも出席して来なかったやらない夫は、数十年ぶりに会う同窓生たちの変わりようとともに、自身の老いと、地元に残り家族を作った同窓生たちを羨ましく思い、そして疎外感も感じます。


【同級生のハルヒと結婚し、孫もできたキョン氏52歳】

              +  ____       +

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         +  /  +       ヽ、   + 

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          r'ヽ、                .! +  

          /:.:.:.:.ヽ、              .!

         イ.:.:.:.:.:.:.:..:ヽ、  !ナ-、       .!.       

          l:.:.:r‐i:.:.il:.:.:..! =こヒr`i`´ _ュ=-..|

          |,イ !i^)レ'l:.:.:./    ´ノ   l´ヒr ,/        

          ! !:ヤヽ、.ヽ/     ̄   ヽ   ,|         

           k.l,`-ァi           '´  /

            ヽ_.l .l  / ヽ'´ ̄`ア /..

           _,イj  ヽ     ヽ-―´./..

          /´r'´\   \.    `´ /

    _,.ィ=''7´;;;;;;;|   \   `ー-ェ-‐'´

 _,.ィ='''´;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;!    \   ノ \  

 谷口よ、そりゃお前、まだ早いよ。

 孫の顔を見るまでは終わりじゃない。 

 孫ってなァ、お前、すごく可愛いぞ。 

 すごくすごーく、可愛いぞ! 


 しかし、地元に残った同級生たち(AA:涼宮ハルヒシリーズの登場人物たち+ギャル夫)を羨ましく思うやらない夫を、地元に残った同窓生たちは内心逆に羨ましく思っています。

 「マイナーだろうが何だろうが、自分の実力で飯を食っていけてるお前は、やっぱり、羨ましいよ。俺だって……できるものならそうありたいけど……」

 同級生たちも彼らは彼等で苦労しているのです。


 東京に戻ったやらない夫は、過去の自分のアシスタントで現在では少年週刊誌で連載を持つギャグ漫画家のやる夫の作品がアニメ化されるということを知ります。そして資料探しに立ち寄った本屋でバッタリやる夫本人と出会ってしまいます。


 過去、やる夫はやらない夫のところに押しかけアシスタントとして居付いたのですが、描いた読み切りをやらない夫が知己の編集者に渡したところそれが雑誌に掲載され好評を得ます。

 独立しようと焦るやる夫に対して、やらない夫は焦らずじっくり実力を蓄えろとアドバイスしますが、やる夫はそのアドバイスに逆らい、喧嘩別れのように出て行きます。

 そうした経緯もあって、やる夫はやらない夫を見下したような物言いをして本屋を立ち去ります。


 アパートに戻ったやらない夫はやる夫に対する怒りや羨望、嫉妬が入り混じった気持ちで寝付けず、頼まれていた読み切りのネームを徹夜で仕上げます。


 52歳の肉体は徹夜に悲鳴を上げ、数日後やらない夫は過労で倒れ入院することになりますが、一人暮らしで入院中に必要な着替えを持って来てもらう人の当てもないやらない夫は、考えた末ファンレターを貰い一度だけ面識のあったアパート近くに住む朝倉涼子(AA:朝倉涼子 原作 鈴宮ハルヒの憂鬱)に電話し、着替えを持って来てもらうことに……


 ざっくり途中まで紹介するとこんな感じです。

 ちょっぴり男の生態に触れていて、若い女性の裸体を妄想する場面などもありますが、概ねR18の内容ではなくどなたでも読めると思います。

 常識を持って行動しているやらない夫の内面の葛藤が、こうした妄想することも含めてリアルで、男性が読むと身につまされて心の奥を曝け出されているような痛みを感じてしまいます。


 自分の好きな創作の道に進んだ結果、作品を大ヒットさせる程の力量はないものの、完全にその道を諦める程才能がない訳でも無い、何とか生活を成り立たせることが出来ている状態のまま年齢を重ねてしまった男のお話。


 決してバッドエンドで終わる話ではありませんが、創作で食べて行きたいと考える方は是非読んでみることをお勧めします。


 創作で食べて行きたいと考えてない方でも、ゆっくりとやってくる自身の老化、衰えについて考えるきっかけになると思います。

 まさかカクヨムを利用している方の中にそんな方はいないと思いますが、健康保険料を払っていないと人生詰みますよ。リアルにそれが伝わってきます。


 まとめサイトは、 

 やらない夫オンリーブログ(全5話)

 それにつけても金のほしさよ(全5話)

 AAまとめブログ(全5話)

 やる夫ブログ(全5話)


 やらない夫オンリーブログ やらない夫は52歳で孤独な人生を送っているようです

 http://yaranaioblog.blog.fc2.com/?cat=105&page=0

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