「Yogibo WEリーグ」開幕戦、「アルビレックス新潟レディース対AC長野パルセイロ・レディース


※文章中の選手の敬称は略しております。男尊女卑的な意図はありませんのでご了承下さい。



 さて、9月12日の記念すべき「Yogibo WEリーグ」の開幕日、「AC長野パルセイロ・レディース」は同じ北信越地区の強豪「アルビレックス新潟レディース」と、新潟の本拠地デンカ・ビッグスワンスタジアムで対戦しました。


 「Yogibo WEリーグ」の試合は全試合DAZNで見ることが出来ます。

 私もDAZNで観戦しました。


 対戦相手の「アルビレックス新潟レディース」は昨年なでしこリーグ1部5位で、東京オリンピック女子日本代表なでしこJapanのGK平尾知佳を中心に守りが固いチーム。攻撃力の上積みのため、元代表で新潟一筋16年目の大黒柱、上尾野辺かみおのべめぐみの他、共にアンダー代表でエース格だったFW道上彩花と児野楓香このふうか、やはりアンダー代表でなでしこJapanには怪我などで入るタイミングを逃していた攻撃的な大型SB北川ひかる、更には2018年に高卒で「AC長野パルセイロ・レディース」に加入し、新エースとして期待されていましたが2019年の2部降格のタイミングで「アルビレックス新潟レディース」に移籍したMF滝川結女ゆめを補強。この日の試合には全員先発してきました。


  「AC長野パルセイロ・レディース」はこの2年間、トレーニングマッチでも「アルビレックス新潟レディース」には勝っていません。

 正直、何とか点を取った上で引き分けに持ち込めれば、緊張感のある開幕戦としては上出来だと思っていました。


 「アルビレックス新潟レディース」の不安材料としては、8月のコロナウィルスの流行第5波の時にチーム内に複数の感染者が出て、チーム練習ができない期間があったことでしょうか。

 それでも日本の女子サッカーは技術と経験のある選手が多い方が勝つことが多いため、何度も言いますが引き分けられれば上等、と思っていました。


 キックオフ直後から「アルビレックス新潟レディース」にボールを保持され攻め込まれます。

 「AC長野パルセイロ・レディース」は若く大舞台の経験が少ない選手が多く、開幕戦の緊張からか相手のマークに付き切れない場面が目立ち、失点は時間の問題かと思われました。

 3バックの3人のCB、3番五嶋京香、2番肝付萌、本来の中盤ではなくCBとして起用された30番國澤志乃が何とか水際で相手の攻撃を防ぐ展開が続きます。

 

 しかし、最初にゴールを挙げたのは 「AC長野パルセイロ・レディース」でした。

 最初に掴んだ決定機をものにしたのです。

 9分、自陣左サイドから30番國澤志乃が入れたスローインを、中盤ボランチに入った長野県出身の高卒1年目の18番伊藤めぐみが頭ですらすと、ボールは18番伊藤を追い越した15番瀧澤莉央の足元に収まります。15番瀧澤莉央はそのまま中央にむかってドリブルを開始し、後ろから戻って来た相手の20番山谷瑠香やまやるかをブロックし倒れ込みながらスルーパスを出します。 

 瞬間的に速度を上げて相手DFを振り切った長野県出身の10番高卒2年目20歳瀧澤千聖たきざわちせがそのスルーパスをダイレクトで右足シュートすると、GK平尾が伸ばした左手の先を抜け、ゴールに突き刺さったのです。


 見ていた私は、最初に掴んだチャンスをこれ以上ないほど綺麗にゴールにつなげたことに驚きましたし喜びました。とはいえまだ時間は十分に残っているし、これで1失点まではできるな、というネガティブな安心感が大きかったのですが。


 この得点で落ち着いたのか、「AC長野パルセイロ・レディース」の守備が少しづつ安定してきます。


 とはいっても地力で勝る「アルビレックス新潟レディース」は早い時間帯に同点にしようと攻撃のギアを更に入れてきました。

 13分、「AC長野パルセイロ・レディース」の左サイドのCKを得た「アルビレックス新潟レディース」は、キッカー10番上尾野辺かみおのべめぐみが直接ゴールを狙います。この試合、10番上尾野辺かみおのべめぐみのCKは2本とも直接ゴールを狙ってきており、2本ともかなり際どく危険なボールを入れて来ました。13分のCKは、GK長野県出身の高卒2年目20歳21番伊藤有里彩いとうゆりあが辛うじてゴールマウス外に弾き出します。

 連続した14分の右サイドからのCKは、16番園田悠奈が低い弾道で入れて来ましたが、これをニアサイドに飛び出して長野の6番大久保舞の前に出て先に左足で触った14番北川ひかるがコースを変えたボールはゴールに飛び込みました。


 同点。

 リードした時間帯を続けられれば少しづつ「アルビレックス新潟レディース」にも焦りが出てくるかも、と期待していただけにこの失点は地力の差を見せつけられたようでがっくりしてしまいました。


 でも守備が上手く周り出したので、何とか同点の時間帯を続けてワンチャンスをもう一度モノに出来れば……と考えていたのですが。


 15分、失点した「AC長野パルセイロ・レディース」のキックオフで一度下げたボールを、2番のCB肝付萌が右サイド縦に大きくフィードします。

 そのボールを相手14番北川ひかると競り合いながら追った10番瀧澤千聖たきざわちせ。体格差のある相手に体をぶつけられ一度大きくバランスを崩しますが何とかボールをキープし、切り返して中央に鋭くボールを送ります。

 そのボールを相手DFと競りながら、本来SBを本職としながらも今日はFWで期用された19番藤田理子が左のスペースへ流すと、そこに走り込んで来た時々ヤフーニュースに記事が上がる「AC長野パルセイロ・レディース」のビジュアル担当11番三谷沙也加がフリーでPAのすぐ外から右足を振り抜くと、シュートは相手の20番DF山谷瑠香の右足をかすめてコースが少し変わりゴールの左隅に入りました。


 同点にされてから僅か1分での勝ち越し。

 なかなかお目にかかれない展開で、こんなに上手く行くことがあるのか、という喜びと戸惑いと。

 素直に喜べばいいんじゃないかと言うなかれ。

 J3で昇格を逃し続けた男子チームと、一昨年、昨年と何もできずに相手の良さだけが刻み付けられた試合を何度も目撃しているレディースチームの姿を見ていると、簡単に手放しでは喜べなくなるのです。


 試合は「アルビレックス新潟レディース」が気落ちしたのと、「AC長野パルセイロ・レディース」が勝ち越して意気が上がったのとで、徐々に「AC長野パルセイロ・レディース」のペースに傾き始めました。

 中盤でのセカンドボールが拾えるようになり、少しづつ攻めの形も作れるようになりますが、「アルビレックス新潟レディース」も流石の守備の固さで、シュートまでは撃たせてもらえません。

 奪われて相手の長身FW11番道上彩花にいい形でボールを納められると、とたんにピンチになります。

 何とか1点リードして前半を終えます。


 両チーム交代は無く開始された後半、立て続けにチャンスを掴んだのは「AC長野パルセイロ・レディース」でした。

 48分、50分と左サイド深い位置からPAに侵入しマイナスのラストパスを入れます。どちらも僅かのタイミングで合わないという勿体なさでした。

 往々にしてこういったチャンスを立て続けに逃していると、展開が相手に傾くものです。

 51分に直前にPA手前までドリブルで仕掛けた9番児野楓香このふうかを「アルビレックス新潟レディース」はスパッと変え、ボランチに6番茨木美都葉いばらきみつばを投入し10番上尾野辺かみおのべめぐみを1列前に上げます。7番園田瑞貴が中に入れたクロスを11番道上彩花が頭で合わせますが、「AC長野パルセイロ・レディース」の30番國澤志乃が体を付けていたため綺麗にヒットせず、ボールと一緒にPA内に倒れ込みます。GK21番伊藤有里彩いとうゆりあが道上と一緒にPA内に倒れていた國澤の体越しにボールを掴もうとしますが、後ろから走り込んできた10番上尾野辺かみおのべにボールを突かれ右に持ち出されそうになります。ですが上尾野辺かみおのべも道上の体で進路を遮られPA内で転がったボールを何とか3番五嶋京香が保持し、11番三谷沙也加がタッチライン外に蹴り出してこのピンチを危うく逃れます。


 55分に「AC長野パルセイロ・レディース」も選手を2人変えます。この交代策が数分後にズバリとハマるとはこの時は思っても見ませんでした。

 FW19番の藤田理子に替えて16番鈴木日奈子、右のWB8番住永楽夢らむに替えて29番川船暁海かわふねあきみ

 29番川船暁海かわふねあきみは「AC長野パルセイロ・レディース」の下部育成組織「AC長野パルセイロ・シュヴェスター」に所属する選手で市立長野高校3年生の17歳です。昨年なでしこリーグ2部で13試合に出場し2得点。本来はFWの選手ですがこの日は右WBとしての出場になります。


 とはいえ56分にはシュートを撃たれ、59分にはまた左サイドからのCKで10番上尾野辺かみおのべに直接狙われ、ニアサイドのポストに当たりサイドネットに外れるという危険が続きます。

 

 61分、相手陣内の左サイドタッチライン際で相手と競り合って6番大久保舞が残したボールを11番三谷沙也加が中に入れ、PA角で受けた16番鈴木日奈子が中に入れて10番瀧澤千聖たきざわちせに渡ります。10番瀧澤千聖たきざわちせの前にはDFが二人いましたが、自分で打てなくもない。

瀧澤千聖たきざわちせは大きくスペースができた右サイドに上がっていた29番川船暁海かわふねあきみへのパスを選択します。

 右サイドの大きく開けたスペースでパスを受けた川船暁海かわふねあきみはトラップをミスり、少し外にボールが流れてしまいます。その間に相手14番北川ひかるが付いてシュートコースを消してしまいます。

 川船暁海かわふねあきみは中に切り返すとゴールに向かってパス。

 そのパスに16番鈴木日奈子が走り込み足を振りますが当たらず空振りしてしまいます。

 しかし16番鈴木日奈子のシュートモーションに集中したGK平尾知佳の逆を突くように抜けたボールはゴールに転がりこみます。


 これも滅多にない形での追加点、3点目。


 リプレイ映像を見ると、川船のパスを鈴木が空振りした時に見事に鈴木の足の間をボールが抜けていき、まるでスルーの声が掛かって意図的にスルーしたかのようでした。

 得点の記録は29番川船暁海かわふねあきみのゴール。 


 まだ時間は20分近く残ってはいますが、追加点を取られた「アルビレックス新潟レディース」は、直後の62分に7番園田瑞貴がシュートを放ちますが、GK伊藤有里彩いとうゆりあが正面で危なげなく抑えます。


 気落ちもあるのか徐々に数人の選手の運動量が落ちる「アルビレックス新潟レディース」。

 そんな中でも10番上尾野辺かみおのべめぐみは勝利への執念を見せます。

 67分に左サイドを7番園田瑞貴とのコンビネーションで突破した上尾野辺かみおのべ。ゴールライン付近で長野の10番瀧澤千聖たきざわちせとの1対1を仕掛けゴール前に切り込もうとします。ボールを奪い合う両チームの10番の対決は、瀧澤千聖たきざわちせ上尾野辺かみおのべを倒してしまい、いい位置でのFKを取った上尾野辺かみおのべに軍配が上がりました。

 このFKを上尾野辺かみおのべは低く鋭い弾道でゴール前に入れようとしますが、壁に入って読んでいた瀧澤千聖たきざわちせがブロックします。弾かれたボールは新潟16番園田悠奈が拾い、長野ゴールのファーサイドに鋭く上げたクロスを入れました。そこに新潟4番三浦紗津紀が飛び込みましたが僅かに合わず。抜けたボールを11番三谷沙也加がヘッドでクリアしタッチラインに逃れます。


 その後も1点を取り返そうと攻め込む「アルビレックス新潟レディース」。10番上尾野辺かみおのべめぐみや14番北川ひかるのドリブルやワンタッチパスでエリアを前進し、11番道上彩花や途中投入2番浦川璃子など長身選手にクロスを入れ、高さで守備を打ち破ろうという意図の攻撃が多くなってきます。高さで劣る「AC長野パルセイロ・レディース」の弱点を突き続けます。

 「AC長野パルセイロ・レディース」も身長では劣るものの、パスの出所や相手のヘディングに体を付けて自由にやらせないことを徹底し守ります。

 2点差はあるものの、1点取られるとバタバタっと流れが相手に傾くことは往々にしてあるもの。「AC長野パルセイロ・レディース」も相手を上回る運動量でプレスをかけます。

 特に10番瀧澤千聖たきざわちせと、29番川船暁海かわふねあきみは終盤になっても相手に対する献身的なプレスを続け、奪ってはカウンターを仕掛けることを続けていました。


 何度か危ないシーンを凌いだものの、決定的だったのは86分。

 「AC長野パルセイロ・レディース」の自陣右サイドタッチライン際でファールを取られ、「アルビレックス新潟レディース」のFK。

 キッカー16番園田悠奈が鋭く蹴ったボールはPA内で待ち構えていた11番道上彩花の頭にピタリと合い、これ以上ないスピードと軌道でゴールマウス左側に飛びます。

 

 完璧に合わされたそのヘディングを見た瞬間「やられたっ!」と思いました。


 しかし、思い切り横っ飛びしたGK21番伊藤有里彩いとうゆりあが右手を伸ばし弾き出します。値千金のビッグセーブでした。


 残り時間が少なくなる中、2点リードの「AC長野パルセイロ・レディース」ですが、決して守り一辺倒ではなく、プレスをかけてボールを奪ったらカウンターを仕掛けて点を取りに行くという姿勢は最後まで失いませんでした。

 10番瀧澤千聖たきざわちせに替わって投入された7番八坂芽依と29番川船暁海かわふねあきみ、やはり途中投入された長野県出身の高卒ルーキー28番稲村雪乃が何度もパスカットからカウンターを仕掛けて行き追加点を狙って行きます。

 こうした姿勢が残り時間が少なくなるにつれ徐々に「アルビレックス新潟レディース」の攻めを鈍らせていきます。


 90分が過ぎアディショナルタイムは4分。

 相手ボールを奪い「アルビレックス新潟レディース」陣内まで押し上げ追加点を狙いに行く「AC長野パルセイロ・レディース」。

 相手にボールをカットされカウンターを受けそうな部分を6番大久保舞が献身的に潰していきます。

 93分42秒、相手陣内でルーズボールを拾った7番八坂芽依が左サイドのスペースにボールを展開したところで主審が試合終了のホイッスルを鳴らしました。

 4分間経たずの終了でしたが、「AC長野パルセイロ・レディース」がボールを保持し攻撃中だったためもあってか、「アルビレックス新潟レディース」の選手たちから抗議などもありませんでした。


 スコア アルビレックス新潟レディース1ー3AC長野パルセイロ・レディース


 開幕戦を見事に勝利で飾りました。


 いやいや、望外の結果です。


 「アルビレックス新潟レディース」にとっては、8月にチーム内でクラスターが発生したことが調整に影を落としていたのかも知れません。元日本代表の大型中盤川村優里が出場していなかったのも痛手だったと思います。


 「AC長野パルセイロ・レディース」にとっては、若い選手たちが「やれる!」という自信を掴むことができた一戦になったのではないでしょうか。


 「AC長野パルセイロ・レディース」の小笠原唯志監督はこの日が52歳の誕生日だそうです。勝利監督インタビューでそのことに触れられ、はにかむ小笠原監督を見て、「すえひろがりず」の三島に似ているとどうでもいいことを思いました。


 この試合はDAZNの見逃し配信で見ることができます。

 スポーツ観戦好きの方、是非DAZNで!


 また、「Yogibo WEリーグ」の開幕戦第1節の5試合はDAZN JapanのYouTubeチャンネルで無料で見ることができます。


アルビレックス新潟レディース対AC長野パルセイロ・レディース

https://www.youtube.com/watch?v=FTOq_dZR8mw



 「AC長野パルセイロ・レディース」の次戦は、ホーム長野Uスタジアムに3強の1角「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」を迎えます。

 見ているこちらからすると、どうあがいても勝てる気がしないのですが、監督と選手たちは勝利を目指して戦うでしょう。

 9月18日17時、本来でしたらUスタジアムまで行きたいところですが、まだコロナワクチン接種が1回目しか済んでいないので自重してDAZN観戦になると思います。











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