介護度の決定について


 介護保険サービスを利用したい場合、お住いの市町村の介護保険課(市町村によって名称は違ってます)に、介護保険被保険者証の申請をします。


 介護保険被保険者証を申請できるのは、65歳以上で心身に何らかの老化等による障害が出て介護保険サービスの利用を希望される方と、65歳以下の方でも16種類の特定疾病(末期癌、関節リウマチ、ALS、脳血管疾患など)の罹患者で介護保険サービス利用を希望される方となります。

 窓口に行くことが難しい本人に代わって親族が申請を代行することもできます。


 申請時に必要なものは各市町村に問い合わせるのが一番確実ですが、本人と申請者のハンコと、本人と申請者の身分証明書があれば大抵大丈夫です。たまに申請代行者に対する委任状が必要な自治体もありますので、問い合わせはした方が無難です。

 

 事前に確認した必要な物を持って市町村の介護保険課の窓口に行き申請書に記入すれば申請はOKです。

 申請書に記入する内容は、介護保険被保険者証の申請者の生年月日、住所氏名、申請する具体的な理由、かかりつけの主治医の氏名、病院、診療科名、所在地電話番号などの連絡先です。

 主治医の連絡先はご家族が申請代行する場合忘れがちな部分なので、必ず控えて持って行き記入してください。

 2回目以降の申請は、ケアマネジャーが付いていればケアマネジャーが申請の代行を行っています。


 申請を受理した市町村の介護保険課は、後日に本人、家族と面談して行う「認定調査」を実施します。「認定調査」を行う認定調査員は市町村職員か委託を受けたケアマネジャーです。「認定調査」ではご本人の身体状況、認知機能の状況、日常生活における自立状況などを調査します。


 また、市町村の介護保険課は、申請書に記載された主治医に、本人の状態を医学的見地から見た「主治医意見書」を記入し提出することを依頼します。


 「認定調査」をした結果の「認定調査票」と、「主治医意見書」を基に検討して介護度が決まってきますが、実際に介護度を決めるのは市町村介護保険課ではなく、市町村が設置した介護認定審査会という会議で決定されます。

 介護認定審査会の構成員は、市町村や関係団体から推薦された医師や歯科医師・薬剤師、看護師や保健師・歯科衛生士、介護福祉士や社会福祉士・介護支援専門員が務めています。常設ではなく週に何回、と定期開催されています。

 大体申請してから介護度が決まり、介護保険被保険者証が発行されるまでの期間は早くて1か月、遅いと3か月近くかかることもあります。

 認定されるまでの期間にバラつきがあるのは、「認定調査票」と「主治医意見書」が揃っていなかったり、上手く介護認定審査会が開催されるタイミングに合わなかったりするためです。



 長々書いてきましたが、今回この文章を書こうと思ったのは、けっこう事前に思っていた介護度と違う、と言われるご家族が多いことを受けて、です。


 「うちの婆ちゃん、隣の婆ちゃんに比べてもこんなに動けないのに、隣の婆ちゃんより介護度が低いって、どうゆうことだ!」というような。


 あまり逆のパターン、「うちの婆ちゃん、隣の婆ちゃんよりしっかりしてるのに、隣の婆ちゃんより介護度が高いって、どうゆうことだ!」は聞きません。


 まあ、それはともかく、ご家族が事前に思っていた介護度よりも低いと判定されるのは何故なのかと言いますと、それは「認定調査」の性質をご家族が少し誤解して捉えている場合が多いから、です。

 

 「認定調査」では、ご本人の身体状況、認知機能の状況、日常生活における自立状況などを調査するのですが、この時に認定調査員が確認するポイントというのは「その方がその状態で生活するために、どれだけ周囲の人や環境の手助けが必要か」という部分なのです。


 介護認定審査会でも見る部分はそこで、「どれだけの手助けがその方が生活していく上で必要なのか」です。各項目で、家族の介護の手間がどれだけ掛かるかを時間化した合計時間が介護度を決定する重要な目安になっています。


 つまり、同じ状態の人であっても、同居している家族の助けを借りずに自分で様々なことを行って生活できると判断されれば介護度は低くなる傾向にあります。


 「認定調査」時、まだまだしっかりしていると周囲に認めてもらいたいので「自分でやれてる」と返答するお年寄りはけっこう多いものです。

 普段は立ち上がる時に家族を呼んで手伝って貰うことが多いのに、「認定調査」の時だけ頑張って自分一人で立ち上がったりとか。

 「認定調査」は本人の状態を確認するもの、と思ってご家族の誰も立ち会わなかったりすると、ご本人から聞き取った内容を「認定調査票」に記入せざるを得ないので、老化などによる障害があって大変だけど日常生活をご自分で殆ど行えている、という調査結果になってしまいます。


 そうすると、介護度は軽く判定されることになります。


 認定調査の立ち合いは、ご本人が病院入院中に認定調査を行う場合以外は必ずご家族が立ち会って、ご本人以外の家族の客観的な介護状況を伝えていただきたいと思います。

 

 家での介護の担い手がお嫁さんで、ご本人の前で普段の本人の様子を認定調査員に伝えると本人の機嫌が悪くなって認定調査後にギクシャクするので何も言えない、というような事もあるかと思いますが、認定調査員に本人との面談調査後に時間を取って貰いたいと伝えておけば、ご本人に席を外してもらって普段の様子を伝えることができますので、「認定調査」の日程の調整の連絡が認定調査員からあった時や、認定調査員が訪問した直後などに後で家族から普段の様子を話したいと伝えておくのもいいと思います。


 また、家族が認定調査員に普段の様子を伝える時でも、事実を単純に伝えるのではなく、そのことで家族がどれくらいの頻度でどういう手伝いをしているのか、を伝えるようにして下さい。

 認定調査の時に頑張って本人が立ち上がっているけど、普段は……という例で言うと、転倒が多いので見守りをする、というのも立派な手助けです。

 立ち上がる時に転びやすいのでいつも家族の誰かが見守りをしていて、バランスを崩したら支えているので怪我には繋がっていないが、今月だけでバランスを崩して家族が支えたのは覚えているだけで何回あった、というような伝え方をすると良いかと思います。


 介護度を決定するプロセスが、その方の状態を支援する家族や支援者の介護にかかる時間で測る、という性格上、「こういう状態の本人を支えるため、家族はこういう支援を日に、或いは週に何回行っている」という伝え方をしていただくと、より正確に認定調査票に反映されると思っていただいていいかと思います。


 ただ、実際にご家族が介護するのに掛かっている時間の単純合計で決まる訳ではなく、調査項目ごとに決まった時間に決まった手順で変換されますので、実際の時間を多く伝えればよいというものではない、というのはご承知おき下さい。


 調査項目の中で結構家族が普段の本人の様子を良く知らなくて、本人がやってると答えてしまいがちな部分としては、着替え、口腔ケア、爪切り、本人が管理している場合の服薬の部分です。

 認知面の衰えが出始めた方の場合だと、この4項目を本人に任せていて、家族が普段の様子を全く見ておらず、認定調査の時に「本人がやってるんじゃないかな」と答えると、家族が思っている以上に軽い介護度になることが多いです。

 本人は自分で出来なくなってきたことを家族には隠したがったりしますので、普段の様子をそれとなく見るようにして下さい。

 見るポイントとしては、着替えは下着や靴下の着用を自分でできているか、口腔ケアは入れ歯を外してうがいをしているか、入れ歯の洗浄はできているか、爪切りは手だけでなく足の爪も切れているか、本人が管理している場合の服薬は、薬を飲み忘れずきちんと処方通りに飲めているか、です。定期通院して毎回処方を受けている方だと、同じ処方薬の薬袋が2つも3つもある時は飲み忘れています。

 

 デイサービスやデイケアを利用されているお年寄りの場合は、デイサービスでこの4部分の介助をされていて、家族はそれを知らずに本人がやっていると思っている場合などもけっこうありますので、デイサービスでどんな介助をされているのか、認定調査の前に連絡帳などで確認したり、記入がなければ職員の方に問い合わせて普段の様子を知っておくのも良いと思います。


 余談ですが、家のお爺ちゃんお婆ちゃんの物忘れ始まってるのかな、と気になる方は、お爺ちゃんお婆ちゃんの買い物の様子と、お財布を見て下さい。

 買い物の支払いの時に札ばかり出して支払い、財布に小銭がやたらと多くなっているのは、買い物の時に小銭を計算して支払う力が衰えてきています。

 


 



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