冒険者ギルドの受付さん

ゆう@地球

第1章(全6回)

初心者さん襲来!§1 日常の終わり

 みなさん、はじめまして!


 冒険者ギルドの受付さんです。

 ソフィア・リンデル・フェレンディルと申します。

 こう見えても、貧乏貴族の三女という設定なんです。

 よろしくね!


 受付さんと言っても、受付業務だけやってる訳ではないんです。

 書類の作成とか、書類の提出とか、書類の整理とか…

 報酬額の査定や税務処理なんかもありますね。

 こういった事務処理だけではありません。

 

 うちのギルドでは装備品や魔法の品マジックアイテムの委託販売及び直販も扱ってます。在庫管理なんかも業務になります。


 受付さんなのに?


 そうなんです。受付さんと言ってもギルド職員、いろんな業務があるんです。


 チャラいナンパ男をあしらうだけが仕事じゃないんです!


 早速お客様が参りましたね。冒険者の方です。


「今日は依頼を出しに来たんだが…」


 この人はサラディオールさん。

 凄腕さんです。

 貧乏貴族の三男坊という設定のレンジャーさん。


 あれ?キャラが被ってます?


「ごきげんよう。サラディオールさん。お久しぶりですねー」


「ソフィアさんもお元気そうで何よりです」


「はぁい、とっても!それでご依頼というと、どの様な案件で?」


「人手が足りない。戦闘が出来る5〜6人ほどのパーティーが欲しい。」


「ふむふむ」


「ウンブラ州にある都市遺跡の調査なのだが、期間は1ヶ月以上になると思う」


「ご予算の方は?」


「依頼人からこれを預かっている」


 ベテラン以上になると、ギルドを介さずに依頼を受けることがあるんです。信用が出て来ますからね。


「これなんだが。報酬用に充てて欲しい」


 綺麗に飾られた宝飾箱です。

 中には、高価そうな宝石類が。


「それとこちらが依頼人からの委任状。こちらがお宝の鑑定書」


 さすが凄腕さん!助かるー。

 駆け出しさんだと上手く回らない事あるんですよ。

 特に書類関係。


 因みに受付業務で誰かから物品を預かる時には、ギルド謹製の魔法の手袋をつける規則になっています。


 何故って?

 稀に呪われた物品とかが紛れる事もあるんです。


 わたしの場合、魔法が使えるので、自力で対処可能なんですが、そうでない職員もいますので。


 もっとも凄腕さんになると、既に対処済みだったりもしますが…


 そういう手順になってますので!


「わあ!すごいじゃないですか。売却ですか?」

 と声をかけてきたのはジェシカ・ナウエンダさん。

 この子も受付さんです。

 商家の生まれで貴金属や宝飾品の鑑定・査定が出来ます。


 ついでなので今回は彼女にも手伝ってもらいましょう。

 鑑定手伝って貰いました。

 全部本物!額も相当なものです。

 気前いい依頼人さんですねー。

 お釣りもきちゃいそうですね。


「確認しました。これからの募集になりますので、数日かかると思いますが…」


「構わない」


「では、此方を確認の上、ご署名を」


 書類を確認し、署名をするサラディオールさん。

 

「ではよろしく頼みます、ソフィアさん」


「はい、もちろんです!」

 満面の笑みで微笑むわたし。

 え?なんですか?他意はありませんよ。


「あ、ソフィアさん」


「はい、なんでしょうか?」


「依頼人ともども、北門近くの『オリーブの輝き亭』に宿泊しています。何かあったらそちらへご連絡を」


「かしこまりました」


 実にスムーズ。

 それにしても朴念仁ですねー。


 でも、いつもこんなにすんなり進むとは限りません。


「ねえねえ、ソフィアさん」

 とジェシカさん。


「どうかしましたか?」

 にっこりと微笑むわたし。


「ガランディールさん、いないみたいですけど…」


「ああ、それでしたら、知人の子どもたちが冒険者志願なんだそうで、今西門まで迎えに行っていますよ」


 ガランディール・サラマットさん。

 顔に刀傷のあるゴツめのおじ様なんですが、受付さんです。

 以前、他所の小さな町でギルド長兼受付さんをしてたナイスミドルです。


 セクハラ男をねじ伏せてくれます。

 受付女子の心強い味方です。

 因みに妻子持ちですよ。


「えー!初心者さん来ちゃうんだ。大丈夫かな」


 ……そうなんです。

 初心者さん。やらかします。

 やらかすだけならまだ良いんです。

 はっきり言って生存率低いです。


 ベテランさんや凄腕さんまで行くと生存率上がるんです。

 でも初心者さんや駆け出しさんは実力が足りなかったり、ついつい無理をしちゃいがちなんです。


 玄関エントランスの方が騒がしいですね。


 ガランディールさんが、二人の若い子を連れて帰ってきた様です。


「お前ら、うましかやらかしやがって!」


「だっておやっさん!冒険者が武器持って何が悪いんっすか!」


 あー。早速やらかしちゃいましたか。


 このギルドのあるマルサルドール市は、ラメント州の州都でして、人口も多い港湾都市です。

 かつては、盗賊都市と呼ばれた時代もありましたが、今では比較的治安は良い方です。


 一定以上の長さ、大きさを超える武器類を城内に持ち込むには、布などで包むかケースに入れるかする必要があります。

 もちろん登録も必要です。

 武器ですからね。殺傷能力あります。

 護身用として短剣ダガー細身の剣レイピアなどは認められています。


 武器用ケース各種!

 全てオーダーメイドで承ります!

 よろしくね!


 煩わしさを嫌って、傭兵さんや冒険者さんの中には、城内ではなく、城門のすぐ外にある隊商宿に居を構える方もいます。


「おう、ソフィアちゃん、すまないがコイツらの面倒見てやってくれ」


「ガランディールさん?」

 ちょっとー!


「俺は警備隊のお偉いさんに詫びいれてくるから…じゃあ!」


 ……はい。そう言うの大事ですよね。分かります。

 分かりますけど…


「よろしくっす!」

「お願いします!」


 元気な男の子と女の子を任されちゃいました。

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