第35話 結婚準備と女装
「えっ!?特注!?」
バプティスト様の男爵家で私は目を丸くした!
なんと私の背の高さが災いしてウェディングドレスは従来の女性モノと合わないので型を取り特注になると言われた。しかもバプティスト様の金で!
これと言うのもバルトルトの稼ぎが少ないから悪い!と夫を睨むと
「……何だ?俺の方は別にどうでもいいな。そこらにあるヤツも入る」
とちゃっかり何でも着こなすバルトルト。そんなん似合うに決まってるだろ!!
「でも神父はどうすんの?教会で式はしなくてここでするんでしょ?」
とアメリーさんが言う。
アメリーさんはバプティスト様と婚約したのでこちらにもお邪魔している。
「まぁな。街の連中なんて呼ばなくてもいいのにな!」
とバルトルトが睨むがバプティスト様は
「いやあ!うちの領民たちもヨハンナ様には感謝してるくらいで。結構、教会側が治療代高く取りまくってたみたいでね。神子様を殴りつけたヨハンナ様を見て皆スッキリしたようですし、あれから治療代も少し安くなったみたいです」
「それは良かったですね!流石ヨハンナちゃん!!」
とアメリーさんも喜ぶ。
「でも確かにここで挙げるにしても神の前で誓いとかどうするの?」
「神の前では誓わん!俺が冥界から死霊の神父を呼び寄せてやる。それなら金もかからん」
と言うバルトルトに
「えっ!?それはどうなの?死霊の神父って!結局神父だから神には敬意を払ってるんじゃ!?」
「いや、冥界に堕ちた神父は悪い事して死んだから大体神なんて信じてねえ」
とバルトルトが言う。それもどうなのか!?
「まぁ呼んでみるか」
とバルトルトが陣を描き
『冥界より我の声に応え参られよ!魂の神父よ!!』
と唱えると陣から険しい顔したおっさんの死霊の神父が現れた。
因みに額に大きな剣で斬られた傷がある。
怖っ!
『なんですかな?この私…スチール・バレリアンに何か用が?』
とその死霊の神父さんが言う。
『用があるから呼んだ。俺と妻の結婚式の神父を務めてくれ』
と私を引き寄せた。バレリアンさんは
『え!?私死んでるんですけど?何で生きてる神父に頼まないんですか!?』
最もである。
『煩え。ネクロマンサーである俺に従え!後、誓いの時は神じゃなくて冥界の王にでも誓え』
と注文をつけた。
『うわあ…へ、変なネクロマンサーに当たったもんだ…』
とバレリアン神父が嘆いていた。
段取りが進む中、バプティスト様が呼びつけたデザイナーの人はいくつかサンプルで持ってきたドレスを仕舞おうとしていたので止めた。
「あのーすみません、そのドレス少しだけ貸してください」
「?ん?どうかしましたか?これはヨハンナ様のサイズには合いませんが?」
「はい、でもうちの夫には合うのかと」
それを聞いたバルトルトは青ざめ、バプティスト様とアメリーさんがニンマリして
「よし取り押さえろ!」
「や、辞めろ!!」
と影に潜ろうとするバルトルトだがアメリーさんが魔術で拘束し
「一回だけですって!!ね!?ちょっとだけ!見せてくださいよ!バルトルトさんの女装!」
「お前等!!ふざけんな!なんで俺が女装なんてキモいことしないといけないんだ!!?頭おかしい!」
とバルトルトが抵抗するので久しぶりに腕輪を外して私の守護霊に頼んでみた。
「お願い、神竜ちゃん」
と言うと神竜ちゃんがバルトルトの小さな蜥蜴を持ち上げて食おうとしたのでバルトルトが青ざめて
「辞めろ!辞めろ!わかったから辞めろ!やるよ!一度だけだぞ!!畜生!」
と嘆いた。私は腕輪を嵌め直し
アメリーさんとにっこりしながら奥のスペースへバルトルトを引きずって行く。
「ぎゃっ!別に胸に詰め物はいらんだろ!ひっ!変なとこ触んな!!ばか!化粧までするな!!臭え!!」
とギャーピー騒ぐがようやくバルトルトの女装花嫁さんが完成してうっとりした!
「ひい!すんごい美少女!!」
「くっ!完璧だわ!悔しい負けた!!」
とアメリーさんも肩を落とすくらい綺麗だ。
バプティスト様もにこにこしている。
「この野郎…」
と悪態をつくバルトルト。カツラをつけて美しく長い黒髪に真っ白なリボンを巻いてウェディングドレスは詰め物の胸を入れてフリルのついた裾を翻す。まるで物語のプリンセスだ。
デザイナーも拍手した。
「私の作ったドレスがこんな美少女に着られて幸せだと囁いておるようです!」
と言ったがバルトルトは
「俺は美少女じゃねぇ…クソが」
と言うので姿見の前に立たせるとバルトルトは
「ふーん。まぁそこらの女よりは綺麗に仕上がってるな!流石俺」
と言い出したので今度は私がぶすーとした。
死霊のバレリアン神父が
『今、仲間達からコンタクトがあり、バルトルト様に救われた霊達も結婚式に参列したいと申しております。どうなさいます?』
と聞かれバルトルトが
『ああっ!?そんなん俺の魔力が尽きるだろ!!』
『ご心配なく、特別に冥界王の許可を得てこちらに門を出して参るそうなので魔力は必要ないとのことです。終わったらきちんと冥界に帰るので』
とバレリアン神父が言い、バルトルトはチッと舌打ちした。
結局死霊達も交えた変な結婚式になりそうだ!
街の人達も協力してくれて結局王族でもないのに街の広場まで練り歩く事になりバルトルトはゲーと言う顔をしていた。いや、元王子だけどうちの夫は。
その時に私は腕輪を外し、また神竜ちゃんを皆の前で少しだけお披露目する事になった。街の皆は聖女さまと私を呼ぶけどそんな柄じゃ無いんだけどね。
腕輪を外すと私の力は溢れて凄くて殆どの人に神竜ちゃんが視えてしまうしね。私もネクロマンサーでもないのに陣から呼び出した霊はともかく普通は視えない守護霊までアクセサリーを外すと視えてしまう。アメリーさんの守護霊は黒猫だったしバプティスト様は狐だった。彼等には守護霊は視えてないけど私の神竜ちゃんだけは力が強すぎて視えるらしい。因みに神竜ちゃんが綿毛だった時は視えなかったとバプティスト様が言っていた。
*
着々と準備が整い始めている。
街の人達が飾り付けや料理の屋台もたくさん出してまるでお祭り騒ぎのようになりつつある。
バルトルトはもはや憂鬱で森の中の家で寝転がりため息ばかり吐いた。
「なんか段々いい見せ物みたいになってきた。何でこうなった!?」
と嘆いている。
「うちのお父様達も楽しみにしているし冥界からも沢山霊達がきて賑やかになりそうね!バルトルトさん、式の途中倒れないでくださいよ?しっかり運動と栄養とらなきゃね!」
と私は腕をめくり料理を始めた。
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