第36話 賑やかな結婚式
明日が結婚式なのでバプティスト様の男爵家に泊まる事になった。
「とうとう明日ですね。おめでとうございますヨハンナ様!バルトルト様!」
とバプティスト様が夕食の席で労ってくれた。
屋敷の飾り付けや街でもお祝いムードが高まっている。シェフ達は徹夜で料理を作ったり、街でもお祝いの屋台が並び準備万端と言った様子だ。
「そう言えば知ってます?領民達が新しくヨハンナ教を作ろうと騒いでおりまして」
と言うからギョッとする。
「ええっ!?何ですかそれ!嫌ですよ!」
「しかし既に信者ができ始めておりヨハンナ様大人気ですよ!!街の中心に聖女ヨハンナ様が邪神の化身である神子を殴るあのシーンの銅像を作りたいと相談を受けました。
私としてはその像を建てたら観光地としてうちの領地も儲かるのではと考えております!もちろん神竜様の像も建てて…」
と言い出すので青ざめる。
「絶対に嫌よ!辞めて!!恥ずかしくてもう街に来れないわ!」
と抗議すると
「では顔だけちょっと変えましょう。そうしたら誰かわかんないですから!」
「……それもう私じゃなくない?」
「狐は金儲けが好きなんだ。ほっとけ」
とバルトルトは肉を頬張った。
明日はいろいろあるし新郎と花嫁は食事も満足に取れないかもしれないから今のうちに食っておけとバルトルトは言うが、お腹ぽっこりで式に出たくないしほどほどにしておく。
食べても太らないバルトルトが羨ましい。
「コルネット教会の奴らは邪魔しに来ないだろうな?」
とバルトルトが聞くとバプティスト様が
「自警団と雇ったり傭兵等を一応配備済みですよ。うちの領民達はヨハンナ様を守る為なら何でもしますよ」
とにっこり言った。
「じゃあ、街に買い物行った時は負けてくれるかもね!!」
と言ってみると
「むしろただでくれるかもしれませんよ?ふふ」
と言われたので思わず生活の心配が無くなりガッツポーズする!!
「そう言えば私の神竜ちゃんて皆に見えるし名前つけたいんだけどどんなのがいい?」
と相談してみるとバルトルトは呆れて
「おい、式は明日なのにまだ決めてないのか。何でもいいだろシロとか」
とバルトルトが投げやりに言い、
「流石にそれは安易過ぎます。そうですね…【パレスルビィナーガ】様とか?」
とバプティスト様がカッコいい名前を付けてくれた!!
「わ、それにします!!カッコいい!流石バプティスト様!!」
「ちっ、シロのが呼びやすいのに」
とバルトルトが言うが犬じゃないし!私の守護霊。
「バルトルトさんの蜥蜴は?名前つけてるんですか?」
「あ?俺の蜥蜴?チョロだが…」
と言うからバプティスト様と爆笑してしまった!!チョロチョロするからつけたのが丸わかり!!
しかし私はある事が気になった。
「ちょっと待って?もし私に子供ができたらバルトルトさんに名付けて貰うのがとても不安になってきたので名付け親はバプティスト様にお願いしてもいいでしょうか!?」
「おい!!ヨハンナ!それは無いだろ!!」
「ありますよ!チョロとか正直安易過ぎるし!!変な名前になったら子供が虐められそう!!」
と言うとバルトルトは黙った。
「勝手にしやがれ。領主様に付けてもらえ!」
とふんと横を向く。
「ふふふ、さあ、そろそろ明日の式に向け早く眠ってくださいね?睡眠しっかり取っておかないと!」
とバプティスト様が言い、私達は早めに眠る事にした。
*
結婚式当日の朝…清々しい朝ではなく…曇っていて今にも雨が降りそうであった。
「降ってきませんように!!」
と祈るばかり。
早めに到着したお父様とお母様にセルバが私の花嫁衣装を見て感動していた。
「お義姉さま!すっごく似合っています!!」
「ありがとうセルバ!!」
「ヨハンナちゃん!とても綺麗だわ!そのドレスよく似合ってる!」
とお母様も褒めてくれた。お父様は既に泣いている。
「あの…お父様…もう籍は入れてるからそんな泣かなくても」
「娘の花嫁姿を見るのが夢だった!ヨハンナが結婚できて良かった!!」
と泣いていた。もしかして若干結婚できるとは思われてなかった?
純白のウェディングドレスは私の背丈に合うように作られたものである。平民はこんなに豪華なドレスなんて着ないのに。籍を入れて皆と騒いで終わりと言うものが多いのに。
するとゴゴゴっと地響きがした。
私は腕輪を外して窓の外を見ると庭園の方にこの世ならざぬ門が現れていた。
もちろんセルバ達には視えなかった。
門が開き霊達がゾロゾロと出てきた。
子供やら女や男…中年やお爺さんにお婆さん赤ん坊…ゾロゾロと参列している。
私と出会ってない1人の時ちょこちょこ霊達を助けてたんだな…。
するとバプティスト様が
「そろそろお時間ですよ。ヨハンナ様。バルトルト様は待ちくたびれてます」
と庭園の方に案内されるとバルトルトが霊の神官と話をしており、こちらに振り返り停止した。
バルトルトも今日はきちんと正装し、髪もカッチリ決めてカッコ良い。やっぱり王子様だった。参列者が霊達を含めて集まり設置していたベルを鳴らした。
カーンカーンカーン
『それでは…2人の結婚式を始める!』
神父の挨拶で皆が静かに見守る中式が始まった。
どこからかピアノが1人でに鳴り出し皆はギョッとしていたが霊が弾いているらしい。
『ネクロマンサー…バルトルト・バルタザール・ブルーノ・レーリヒよ。ヨハンナ・アンネリース・レーリヒを数々の困難が立ち塞がろうとも妻を守り一生愛すると冥界王ハデス様に誓いますか?』
「ハデス様に誓います」
『聖女ヨハンナ・アンネリース・レーリヒも誓いますか?』
「はい…誓います」
『よろしい。二人の誓いはハデス様の元へ届きました。では結婚指輪の交換を』
と指輪係が指輪を持ってくる。
それぞれに嵌め合った。
『二人の愛の証となる指輪は二人を夫婦として永遠に繋ぐだろう。では次に誓いのキスを…』
と言う所でドドドドと音がして振り返ると白い馬に乗ったあの神子様が現れた!!
は!?
と全員嫌な顔になった。
「その結婚待ってください!!聖女ヨハンナ様!!僕と!この僕カイル・ボールドウィン・アストンと一緒にここから逃げましょう!!」
と美しい所作でひらりと馬から降り立った。
なんだこの人?完全に場違い!
「ラブレターのお返事が中々来ないものでとても寂しくてね!君に殴られてこんな聖痕までつけられ僕の力もだいぶ弱まってしまったけど…やっとの思いで聖痕を剥がす事ができたよ。」
とべちゃりと袋を落とす。うえええ!!まさかあれ自分についた聖痕の皮膚!?キモォ!!
「やはりこの結婚だけは反対するよ!!君は僕のものだ!」
と無駄にキラキラしながら言う。
「あの…すみません。帰ってくれませんか?」
「そーだ!そーだ!帰れや!!クソ神子!!」
「場違いだぞ!聖女様は俺たちが御守りするぞ!」
「奴に触るな!また洗脳されちまう!」
と自警団の皆さんが武器を取る。
バルトルトやバプティスト様やアメリーさん、うちの家族達も皆私を守るようにしてくれた。
私も腕輪を外して神竜パレスちゃんで威嚇した。
「くくく!素晴らしい!!では僕も神降しをして如何に僕が相応しいか示そう!!神よ!!コルネット神様!!どうぞ!!この身体にご降臨くださいませ!!」
と手を広げ天を仰いだ。
そして稲光が走りバシィィとなんと神子様に直撃したのだった!!
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