第7話 プロポーズくらいちゃんとしろ
急に…いきなり…珍しく名前を呼ばれたと思ったら
「結婚してやってもいいぞ」
とバルトルトがそう言った。因みに顔は別に照れたりしてはいない!!むしろ無表情に近い。
「はあ?」
と冗談返されたのかと思ったら
「別にいいだろう?家政婦よりかはマシだろ?お前のベッドを作ってやろうと思ったんだ。もう外で寝なくていいし」
「いや…夫婦って普通一緒に眠りません?」
「……そうだが…お前いきなり俺と……いや…そういうことは落ち着いてからだ。別に…嫌なら家政婦のままでもいい」
とか訳わからんことを言い出したバルトルト。
「もしや…他に女性がいないからって私で妥協したとかいう!!?そもそも私たちって好き合ってましたっけ?一度も甘い雰囲気になった事無いですよね!?」
「はぁ?わざわざ甘い空気になる必要もないだろ?」
「はぁ?バルトルトさん何を言ってるんですか?アホなんですか?結婚とは…愛し合う二人がするものですよ?」
「いや、違う。結婚とはお互いの利益になるからするものじゃないか」
何を言ってるんだこいつは!?
「それは…バルトルトさんの言うのは政略とか契約結婚じゃないですか!!私達…貴族じゃないんですよー!?」
と言うとバルトルトさんが思い切り悩み始めた。
「くっ…、そ、その通りだ。俺は貴族じゃないし、お前なんか死人にされてるしな。そ、そうか恋愛か!俺は…れ、恋愛を…したことがないっ!!」
とおかしなことを言い始めた。
いや、何となく彼の過去は思い切り暗そうだからそうかな?とか、こんな綺麗な顔なのだから実は高貴な人なんじゃと思ってはいたが、詮索しなかった。
「じゃあもう無しで。家政婦でいいですよ。私は。バルトルトさん…貴方は顔がいいから私なんかでは釣り合い取れませんよ。私…背も貴方より少し高いし。バルトルトさんにはこう…背も小さくて女の子らしくて可愛らしい守ってあげたくなるお姫様タイプがお似合いです。
私は真逆ですからね。別に淑やかじゃなくて大らかですし、正直結婚してもガミガミと口煩い女です。辞めといた方がいいですよ」
と私が言うとバルトルトは
「俺のタイプの女をお前が勝手に決めるなよ。そもそも俺はどんなタイプが好きかとか今まで考えたこともなかったし、女はお前を除くと皆似たようなもんだと認識してる。どんなに可愛らしい奴でも媚びて誘惑してくるんだ。
色仕掛けで陥落してくる奴もいたな。香水のキツいババアもいた。化粧の濃い女は中でも最悪だった。紅が肌につくとベタベタして気持ち悪いし…」
「ちょ、ちょっとどんだけ女関係あったんですか!!」
と引いた。確かにこんな顔がいいと色々な人から言い寄られ…アハンウフンな展開になっててもおかしくない!!そうかこの人…女の人が苦手なのって…無理矢理犯されてたってこと!?
地味に可哀想と思った。
「おい、なんだその哀れむ顔は!辞めろ!」
「いやいや…女の人が苦手なのによく私にプロポーズなんかできたもんだと思いましてね」
「知らんけど…お前はグイグイ来ないし安全だと思ったから別にいいかと思ったんだ。結婚したら家政婦じゃなくなるからお前…その…この家から出ていかないだろう?」
ともじもじしだした!!
そうか!つまりバルトルトさんは単に私にこの家から出て行って欲しくない…一人ぼっちになるのが嫌で下手くそなプロポーズをしたんだ!!
バカだわ。
「はー…まぁ…それは置いといて…」
「置いとくな!!」
「そんなに言うならもっと納得のいくプロポーズをしてください!!大体私と貴方はなぁんにも始まっちゃいないのです!!バルトルトさんが恋を知らないからです!」
「こ、恋…知らんそんなの…俺は女に襲われるばかりであまりいい印象はもっていない。……お前は恋を知っているのか?」
「私ですか…まぁ、義妹に取られましたけど婚約者がいたんでね、一応。今はなんとも想っていないけど……いや一応顔は良かったんで引き受けましたけど別に恋はして無かったような…」
「何だ、お前も恋したことないんじゃないか!人のこと言える立場か!」
「はぁ!?バルトルトさんと一緒にしてもらっては困ります!別に婚約者ができる前は叶わない恋くらいしたことありますよ!夜会で見かけた男性とか!憧れの騎士様とか!!どれも叶いませんでしたが、恋心くらい知ってますよ!!」
とドヤっと言ってやると
「な…そ、そうかお前…恋をして来たのか…叶わなかったが…たくさんしたんだな…羨ましい!」
とか言い出した。たくさんして告白しないうちに勝手に自滅していったんだけどね。皆他に好きな方とかいて、次々と恋人になってしまわれたっけ。
やだ、虚しい!!惨めだわ!!
「じゃあ、俺に恋を教えてくれ!ちゃんと恋をマスターしたらお前にもう一度プロポーズする!きちんとな!」
と言い出した。恋なんて教わるもんじゃねーつの!!
と突っ込みそうなのを堪えて苦笑いした。
*
家の近くの森からこの家を眺める男がいた。
「……生きていたのか…」
そう呟きニヤリと口元を歪めた。
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