第47話 スペイン編③
「スグル、今日は地元の少年サッカーチームにコーチとして行ってくれないか?」
早朝、1日の準備をするために専用練習施設へと足を運んだ傑は監督から頼まれた。
「少年サッカー?なんでこんな時に?」
明後日はもうシーズン初日の試合があるにも関わらず、1日を子供達に教えるために使えというのだ。しかも傑は、本格的な試合はこっちにきてから一度も経験していない。
「この前の練習を見学していた子供たちがチームの監督に頼み込んだらしくてな。私としても、お前を知ってもらう機会として了承したんだ」
「はあ、まあいいですけど・・・・」
「そうか!なら、早速頼むぞ。車なら用意してある」
断られることは鼻から想定していなかったのか、運転手(マネージャーだが)までつけて準備万端だった。
「じゃあ、行ってくるよ」
「おう、頼んだぞ」
マネージャーに誘導され車に乗った傑は、地元のサッカーチームの練習場へ向かった。
練習場に着くと、そこではすでに試合形式の練習が行われていた。
マネージャーが警備員に関係者証を提示し、中に入れてもらっていた。
「スグルさん、行きますよ」
「はい」
マネージャーについていくと、子供たちにサッカーを教えている監督のもとについた。
「監督、彼がスグル・サンジョウです」
「初めまして」
その声に反応した監督は試合を中断し、子供たちを集めた。
「お前さんがあいつらが言ってた、日本人か」
「あ、スグルだ!!」
「すげ〜、本物だ!!」
傑を見たことがある子供たちは、すでに興奮し始め期待に満ちた目を向けてきた。
「こいつらがお前さんの練習風景を見たらしくてな、是非とも今日一日、一緒にサッカーをしてくれんか。できれば教えてやってくれ」
「別に、かまいませんが・・・・」
子供たちを見ると、傑を知らなかった子もプロ選手だと聞いたのか断れない雰囲気を醸し出した。
「なら彼らの試合の審判として見学がてら参加していいですか?アドバイスは都度して行くので」
「わかった。よし、お前ら今日はとことん学んで帰れよ」
「「「はい!!」」」
傑を審判兼コーチとし、先ほどの試合が再開された。
日本で言うところの小学生〜中学生年代の子どもたちは、子どもたちらしくサッカーをしていた。
しかし、さすがプロと繋がりがあるだけ、ボールの運び方、スペースの作り方、攻め方に関してはよくできてる。
「子供は点取るのが好きだよなー」
確かに点を取りまくれば、勝てる。
でも、点を取られたら、負ける。
ボールが切れたところで、一度集まってもらう。
「どうだった!?」
いかにも元気小僧と言われんばかりの少年が食い気味に聞いてきた。
「点の取り方はよくできてると思うよ」
「本当に!?」
「ああ」
ここで、全員に聞きたいことがあると言って一つ質問をする。
「試合に負けない方法ってわかるか?」
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