第29話 二次予選 第一試合

二次予選の組み合わせは、


グループA

シリア・オーストラリア・ベトナム・日本・イエメン


グループB

サウジアラビア・シンガポール・中国・バングラデシュ・カタール


グループC・・・・・・。


グループHまでの組み合わせが発表され、この各グループで、上位にチームが最終予選へと駒を進める。


日本は、グループAで、中国はグループBと別れた。

前評判通りならば、日本は最終予選に進めることができる。

また、中国も問題なく、最終予選に来るだろう。

つまり、傑にとって、運命の日は最終予選まで先送りということになる。


この結果を美咲は公安内で共有していた。

「いいか。あの夫婦がこの国に来るとしたら、最終予選前だ」

「では、入国が確認出来次第、誰かをつけましょうか」

「いや、あの国のことだから、いろいろ手を回してくる。ギリギリまで放置するが、傑や周辺の人間に接触しそうな時はなんとしてでも止めろ」

「了解です」


会議が解散し、部屋には美咲と保護当時を知る公安第一課の男性だ。

「しかし、国籍まで変えて彼を追いかけるとは。ある意味尊敬しますね」

「まったく、厄介な人種だよ」

傑の両親が、国外逃亡後、国籍を変えてまで、公安にパーソナルデータを何もかも書き換えられた傑を探し当て、発見までするとは思ってもいなかった。


「ここからが勝負どころだな」

「はい」

二人は大きなため息をつき、これから忙しくなることに嫌気をさした。



◆◆



「本日は、サッカーワールドカップ。アジア予選・グループA、注目の一戦。

日本対オーストラリアの試合をお送りします!」


「いやー、それにしても一試合目からこの組み合わせとは、盛り上げてくれますねー」


第一試合から注目の一戦という事もあり、観客も視聴率も今までとは比較にならないぐらいだった。その一つの要因として、突然のスペインからの帰国で、その存在を世界中に知らしめた『三条傑』の存在があった。


「この試合、三条選手は、ベンチスタートということで、どう見ますか?」


「そうですね。彼は、いつでもどこでも対応できると思いますから、相手の出方を見てもらうんじゃないでしょうか。おそらく前回も途中出場した田中選手と一緒に出てくるのではないかと」


「では、おそらく後半だと思いますが、彼らのコンビプレーが見られますね」


「ですね。おそらくあの二人は、普通の人が見えないようなものが見えてるんでしょうね。そうとしか考えられないですからね」


「ははは、もしそうだったら、とんでもないですね」


実況の人は、そんな非科学的なことは信じられないのか、笑って流したが、解説は本当にそうなんじゃないかと思っていた。

実際、二人は俯瞰を持っており、精度は全く違うが上から自分の周囲を見ることができる。



「さあ、選手が入場してきました」


両チームの選手が、エスコートキッズと共に入場してきた。


国歌斉唱も終わり、各チームの選手がポジションに移動する。


ピィーーー!!

「さあ、日本ボールで試合開始です!!」



◆◆



中国対サウジアラビア

こちらも、注目の一戦。


「あれ、こんなもんだっけ?」

中国の選手の中に、日本語で話す選手が一人。


「ここで全部勝てば、兄さんに会えるんだね」

ヂィエは、10−0のスコアボードを見て楽しそうにキーパーをかわし、点を決めた。



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