第20話 前半終了

ピーーーーーーー!!


「ここで試合終了です!内容は一対一と互角でしたが、どうでしたか?」

「そうですね〜。内容に差は無いのですが、点の決め方が全く違いましたね」


「ですね。フランスは、日本のファウルで鮮やかすぎるフリーキックで。対する日本は、完璧に崩し簡単に決めてしまいましたから、フランスのDFは衝撃が抜けないでしょうね」

「そうですね。いかに強豪といえどもあれをされると精神的にくるものがあるでしょう」


「その、日本のゴールまでのプレーを振り返っていますが、これを見てどう思いますか?」

「そうですね。三条選手が圧倒的でしたね。おそらく、前半が始まってから三島選手にボールを集めていましたが、全て奪われていましたよね」

「そうでしたね。あれも何か意味があったのでしょうか」

「おそらくあれは、佐伯選手から意識を外らせるためでしょう」

「しかし、佐伯選手はバロンドールの候補に上がるかもしれないと言われる選手のため、常に警戒されていると思いますが」

「そうですね。それは、試合開始前にも話し合ったはずですが、試合の切迫した状況で最後の最後まで一本もパスが出ないとなると隙は必ずできるものです」

「では、三条選手はそこを狙ったと」

「そうでしょうね。それに・・・・・・」



実況と解説が流れる中、日本代表の控室では


「すごいなお前!!」

MFの鴨居と竹崎が背中を叩きながら褒め称えた。

「ありがとう」

傑も素直に喜んだ。


「いや〜、最高だったよ傑。少しは君の理想に近づけていたかな?」

佐伯も最後のパスを受けることができたのが相当嬉しかったのか、テンションが高くなっていた。

「そうだな。もうちょっとだな」

「厳しいな〜」

傑の周りには、笑い声が広がりいい雰囲気が漂っていた。



それに対して、傑のパスに一度も答えることのできなかった三島の周りには負のオーラが漂っていた。

「あんな、あんなの・・・・・」

ぶつぶつ言っている三島には、誰も近づこうとしなかった。


正と負のオーラが見事に分かれる控室に監督が入ってきた。

「前半お疲れ様。いい形で終われたな」

「監督、約束通り・・・・・」

「ああ、わかってる。田中後半からだ」

「は、はい」

監督の言葉を聞いて、田中は緊張した様子を隠せず、三島は、傑と田中を睨んでいた。


「よし、後半の作戦だが、おそらくあっちはアランを中心に攻撃的サッカーでくるだろう、そうでなければ嬉しいが、そうはならない」

格上フランスが日本に負けるなどプライドが許さないだろう。

なんとしてでも点を取ろうとしてくる。


「だが、守ってばかりでは勝てない」

監督は、傑に任せることにした。

「行けるか三条、田中」

「行けますよ」

「が、頑張ります」

田中は、やはり慣れてないみたいだ。


そこから、前半の反省を行い、後半に向けての打ち合わせは終わった。



◆◆



フランス代表の控室


「おい、アラン」

「なんだい?」

DFの一人がアランに話しかけた。

「あれはなんだよ」

「傑のこと?」


「彼は、僕の目標だよ」

「・・・・・・そうか」

「あれ、もういいの?」

「ああ、それだけ聞ければ十分だ」

彼は、他のメンバーと話をするためにその場を離れた。

アランが目標とするぐらいだ、どれだけ危険かは聞かなくてもわかるのだろう。


「やれやれ、ここまでみんなが焦るとは・・・・」

さすが、『悪魔』だよ。君は。

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