第18話 前半戦②
フランスが三島に狙いを定め始めた。
「あーっと、またも三島選手のところでボール奪取!三島選手、最後も一本が出ない!ゴールキックになりました」
「いや〜、パスのタイミングは奇抜ですが、コースとスピードも完璧なんですけどね」
◆◆
三島は、この現状に試合前のロッカールームでの会話を思い出していた。
「おい」
「なに?」
傑は、三島に声をかけられた。
「今日は、俺の力を見せてやるから、覚悟しろよ」
「え、でもパスがもらえなきゃ見せるもなにもできないんじゃ・・・」
まるで、パスする気がないと言わんばかりのセリフだった。
「それは、おまえたちの出来次第だろうが!」
傑は、びっくりした。
ここまで、頭のおかしい奴だとは思わなかった。
「あ〜、はいはい」
◆◆
「なんだ、これは・・・・・」
これではまるで、俺の無能さも見せつけるような試合ではないか。
だが、三島の頭には、これまで傑が出したパスの全てが頭にこべりついていた。
コースもスピードもそして、タイミングも全てが理想と言えるようなパスだった。
「なんでこんな・・・・・」
その絶妙なパスに全く反応できず、フランスのDF陣に全く仕事をさせてもらえない。
自分で、ロッカールームのチームメイトの前で、何より佐伯さんの前であんなことを言った手前、弱言は言えなかった。
はっ!
ここは佐伯さんのアドバイスをー
と思い佐伯さんの方を見た。
「え、なんで、その・・・・」
佐伯は、もはや興味がないのかチラリと視線を向けそのまま傑の元へと歩いていた。
「クッソタレがぁ」
三島は、傑を睨みつけた。
◆◆
「なんかすんごい睨まれてるんだけど」
「そりゃそうだよ」
佐伯は、傑を呆れた顔で見ていた。
「あそこまでされたら僕だってああなるよ」
自身の自尊心を根本から削ぎ取られるようなものだ。
「そうかなぁ、これぐらいで折れるようならここには要らん」
慈悲のかけらもなかった。
「まぁ、君を知らなければ納得はできないだろうね」
「次からは、いくぞ」
「任せてよ。それなりにできるから」
佐伯は、期待に応えるため自分のポジションに戻った。
「さぁ、フランスのゴールキックからスタートです。セカンドボールはフランスがゲット。またもアランに渡りました!今度は、日本陣地でアランにボールが渡った!」
「日本のDF陣は、警戒してますね。やはり、彼のパス一本がゴールにつながりますからね」
「おっと、アランが自分で行った!!」
アランは、自分でドリブルで持ち込んだ。
「ここは、飛鳥と福田が対応します!やはり、一人ではいけませんね」
「ですね、しかし、二人でいく以上周りをよく見ないと危険ですよ」
飛鳥と福田は、とんでもないテクニックを前に苦戦していた。
「くそっ」
「なんだ、こいつ」
距離を取ったらスピードで千切られ、詰めたら躱され、複数で行っても簡単に対処される。
こんなやつ、相手したことがない。
二人は、試合前にスグルに言われたことを思い出していた。
「飛鳥さん、福田さん、アランは二人で対処してください。点を入れられても構いません。それ以上は求めないです。」
飛鳥と福田は傑より一回り年上なため最低限の敬語を使っていた。
「二人で?無理だろそりゃ」
「はい。最初は無理でも慣れてください」
あのレベルになれるだけで、だいぶ違いますから。
「慣れろって言われてもこれは・・・・・」
「だな、ここまでやばいとは思わなかった」
少しアランが下がり、絶妙な距離をとった。
アランが、目線をサイドに送った瞬間、二人も釣られてしまった。
「あ、やばっ!」
「やられた」
アランは二人の、間を通り、足の出せない状態で完璧に交わした。
「くそっ」
飛鳥は、足を後ろから出して、アランの足にかかってしまった。
ピッ!!
わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「あーっと、フランスにフリーキックを与えてしまった!前半30分、フランスは先制点のチャンスです!」
「アラン選手は、キック精度も抜群ですからね。これは、チャンスですね」
「あ〜やってしまったなこりゃ」
「いや、あーでもしなきゃ、確実に入ってた」
「傑、先に決めさせてもらうよ」
アランはボールをセットしながら微笑んだ。
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