第12話 知りたくなかったこと
休暇与えられた一年が過ぎようとしていたとき、施設内に同じくらいの子供を見つけた。子供を初めて見た綾人は、何も考えずに追いかけた。しかし、一年近く休んでいるとはいえ体はボロボロで全力は出せなかった。
追いつけはしなかったが、入って行った部屋は見ることができた。
部屋の前まで行きノックしようとしたその時、中から大人の声が聞こえた。
「いいか、後三週間だ。後三週間予備実験に耐えたらここを出してやる。
もし耐えきれなかったら、あの子たちと同じようになる。わかったな」
「・・・・・・はい」
予備実験?なんだそれ。実験って何?
そんな疑問が綾人の頭の中を駆け回る。
綾人にとってこれまでの日常が当たり前の生活と思っているため、実験体という自覚がない。
会話が気になった綾人は、残りの休暇は、その疑問を晴らすことに専念しようと決めた。
散々探し回り、ついに休暇残り2日というところで見つけることができた。
「何これ」
目の前には、あの時の子供と思われる体が横たわっていた。
その周りには同じような子供が男女問わず横たわっていた。
綾人は思わず駆け寄った。子供の体を揺らすが返事はなかった。
子供達の体をよく見ると、注射後のようなものが全身にあった。
「おやおや、見つかりましたか」
そこに現れたのは、両親といつも一緒にいる大人だった。
「この子達は何?」
「スペアですよ」
「すぺあ?」
「ええ、あなたの代わりです。あなたが休んでいる間もデータを取りたいとあの二人が孤児院から連れてきた子達です」
連れてきた?なんで・・・・・
「お優しい両親で良かったですね。あなたのために休息を用意したんです。だから君の代わりにこの子たちが連れてこられた」
僕のせい・・・・
綾人の頭は真っ白になった。僕のせいでこの子達が・・・・・
「また新しい子が来る予定らしいですよ?ここにいる子たちは一週間と持ちませんでしたから」
「もういいです。休みなんか要らない。僕が一人でするから」
「ふふっ、その言葉待ってましたよ。綾人くん」
では、早速始めましょうか。
その言葉を聞き綾人は覚悟を決めた。いつかこの子達に償うと直接は無理でも彼らの人生を奪ったものとして。
その日から綾人は、これまで以上のペースで実験を繰り返した。綾人自身が自らやると言ったことを聞いた両親は大いに喜び今まで以上の実験を行った。
朝起きて、注射を打ち、そのままありとあらゆるプログラムを行い、その後に脳の状態を確認する。
両親の予想では、すでに脳細胞はもちろんのこと体の細胞すべてがボロボロになっているはずだった。しかし、綾人の体はところどころボロボロになっているが以上をきたすレベルではなかった。
綾人に対してさらに期待した両親はあの試合の日、前日まで実験を繰り返した。
その日も実験の予定があったがある男が実験のことについて口を滑らせたせいで、綾人が帰ってくることはなかった。
「・・・・・・・・」
「まぁ、こんなところか」
傑は、簡単に自分の過去を話し感想を聞こうと遥を見た。
「どうした?」
遥は、ただただ泣いていた。
「いや、そのごめん」
その日、遥は傑にくっついて離すことなく眠りについた。
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