見せてと言われる俺
「ただいまー!」
マキちゃんが扉をあけて、中にいる由香さんにむかって声をかけた。
「あら、樹君。いらっしゃい」
顔を出した由香さんはおたまを持っている。料理中だったのかな? やたらと可愛い新しいエプロンを着けていた。
俺はペコリと頭をさげる。
「由香さん、お邪魔します」
「今日もいつもの?」
「うん。行こ。樹君」
だいぶ通いなれてきたマキちゃんの部屋に向かう。二人きりでないのが少し悲しいが。
「お菓子とりにきてね」
「はーい」
マリヤとマサユキ、二人も一緒にマリヤの部屋に入る。マサユキはかなり驚いた顔をしてた。
それがマキちゃんの部屋に初めて入ったからだったのか、配信用の色々があるのを見てだったのかは、俺にはわからない。
「そこ、座っといてね。私はお茶をとってくるね。あ、マリヤ。ナミ呼んでおいて」
「うん、わかった」
マリヤはスマホを取り出し、マキちゃんは部屋を出ていく。
俺はマキちゃんが示したクッションのところに座った。
「お、にいっ!!」
マキちゃんがお茶を持ってくるのと同時に元気いっぱいナミが飛び込んできた。
「っと、マサユキ君?」
急にナミがトーンダウンする。
「どったの? これ」
「あー、えっとな」
そういえば、なんでマサユキもここにいるんだ?
マリヤの事を話し合うためか?
マキちゃんに聞こうにもいまはお茶を並べてくれているところだ。
「あのな、ナミ、今日――」
俺が話そうとした時、マサユキが急に話し出した。
「見せてくれるか?」
「へ?」
見せるって何をだ?
「あ、マサユキ君! それはね」
ナミが焦っている。あのナミが!! マサユキ、いったい何が見たいんだ?
「チームけもラブとやらを」
あ…………、これってまさか。
マサユキの前で、ミツキになれってことかぁぁぁぁぁぁぁ!?
って、まさかまたナミからの
聞きたい事はたくさんあるが、今は目の前で見せろと言ってくるコイツの対処だ。どうすれば……。
「わかりました」
マキちゃんが立ち上がり、配信機器に向かう。
「準備して下さい。チームけもラブ、配信開始です」
きりっとしたマキちゃんがゲーム機を構える。なんかやけにカッコよく見える。
「りょーかい」
「おっけー」
マリヤ、ナミも用意しだす。俺、置いていかれないようにゲーム機をナミから受け取った。
女の子の前では何度かしたけれど、男の前でミツキになるのは初めてだ。
なんか、よくわからんがなるようになれだっ!!
それぞれのアバターを起動していく。
俺はマリヤによく似たミツキの電源をオンにする。
「笑うなよ」
それだけ言うと、やたらと熱くなった顔をぷるぷるとふり俺はミツキになった。
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