睨まれる俺

『樹君、おはようございます。昨日は寝てしまってごめんなさい。今日あのアイス屋さん、帰りに一緒に行きませんか? 朝は先に行っているので、会えないと思います』


 目を覚ますとそんなメッセージが届いていた。


『了解、もちろん行く。楽しみにしてる』


 俺が送るとすぐに返事がきた。


『アイス屋さんのところで待ってます。今日は来て下さいね』


 マキちゃんの返事、少しだけ怒ってる気がした。

 別に何か怒ってるマークとかついてないけど。俺がかってにおもっているだけかもしれないけど、そんな気がした。


「あー、とりあえず会ったらそっこう謝る。それで一緒にアイス食べるんだ!」


 叫びながら俺は勢いをつけてベッドから立ち上がった。


「お兄、朝から何騒いでるの?」


 ナミがくくっと笑いながら制服姿で廊下を歩いていく。え、はやくね?


「お先、いってきまーす」

「「いってらっしゃい」」

「おー、いってらー」


 ナミは父さんよりもはやく出かけていく。あ、父さん、やめたんだっけ。いや、まあそれにしてもはやい。

 俺はそれを眺めつつ、顔を洗いに洗面所へと向かった。

 朝はメッセージの通り、マキちゃんにも出会えなかった。


 ◇


「あれ、ユウキ」

「おっ、おはよう。樹」


 ユウキとマリヤが並んでいた。なんだ、いつの間にそんな仲に!? おい、ナミはどうするんだ。いや、別にどうでもいいけど。なんて思いながら近付いていく。すると、ユウキから耳打ちされた。


「マリヤさんを一人にしないようにってナミちゃんから言われてるんだけどさ」

「へ?」

「マリヤさん言ってもいい?」


 マリヤがこくりと頷く。


「えーっと、ネット上によく似た女の子がいるらしくて、その人に間違われてるらしいんだよ。マリヤさん」

「え、……」


 それってまさか……。俺はなんとなく嫌な予感がした。マリヤを見る。ネット上のマリヤに似てる女の子。それってやっぱり俺(ミツキ)のことなのか?


「それで、引っ越し前からストーカーされてて、またソイツがあらわれたんだって」

「え……」

「教室以外は彼女のお兄さんが出来るだけ一緒にいるってさ。だから教室では」

「――犯人は?」


 マリヤとユウキが首を同時に横にふった。


「わからないんだって」

「……」


 なんだ、なんだ……。俺の知らないところで俺は誰かの迷惑になってたのか。

 でも、こんなに似てるなんて、俺にはどうしようもなかったし。引っ越してくるまで彼女のこと忘れてたし……。


「まあそういうことだからさ、にらんでるのがいるけど樹と僕とマリヤさん。出来るだけ三人でいてください、お願いします。だって」

「いいかな、イツキ君」


 理想の美少女がうるんだ瞳でお願いしてくる。これは断れる訳がない。


「わかった」


 俺はこくりと頷く。

 教室の真ん中にいる菊谷がこちらをじっと睨み付けていた。

 まさかな……?

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