罰ゲームに向かう俺

 俺の貴重な休日が、まさかの圭さんとでぇとになるなんて……。

 とりあえず、何度も頭で想像するが、無理がある。マキちゃんとデートしたいよー!!

 マキちゃんの家の前に立つ。呼び鈴を押しても出てくるのは圭さん……。


 ピンポーン


「はーい、今出るね」


 由香さんの声。

 扉を開けて出てきたのは――。


 ◇


 近場にあるショッピングモールに来た。

 電車で二駅の場所。


「それじゃあ、樹君。行きましょうか」


 マキちゃんの隣にはマリヤ。


「あ、駄目だから。今日はオレが横に立っとくように言われてるんだ。マキはマリヤとだろ」

「むっ、少しぐらい黙っててくれても」

「駄目だ」


 横にイケメンがいる。マサユキというイケメンが。いや、なんで俺の横にイケメンなんだよ。


「圭さんと由香さんがデートするから、代わりにオレが一緒に行くことになった」


 マキちゃん家で告げられたのはこんな話だった。

 俺が帰ったあと由香さんが拗ねたらしい。

「私だって、デートしてないのに」と言われて、速攻でそっちと行くことにしたって。どうりで由香さんの声が嬉しそうだし、可愛らしくお洒落している訳だ。

 そんなわけで俺の横はマサユキ。マリヤに似た端正な顔だが、しっかり男である。俺と違って……。


「マサユキ! マリヤと代わってよー」

「駄目だ」


 そして、約束はきっちり守るタイプらしい。そこは代わってやれよ!! あ、マキちゃんでお願いします。


「まあ、しょうがないです。川井家で樹君を愛でる会発進しましょう」


 あー、それならいいのか? 今度はマサユキは何も言ってこなかった。どうやら四人でなら一緒にいても問題ないようだ。良かった。会ったばかりの男と二人きりになっても正直何を話せば言いかわからなかったから助かった。


「おー」


 大きな画面がモールの入り口で宣伝している。


「あ、凄い。あの人は」


 Vの世界の先行者、『日向ぽか』。名前の通りぽかぽかした日向みたいなキャラクターで、本当あちこち引っ張りだこの人気Vの女の子だ。

 あそこまで行くと企業からも声がかかるんだろうけど、まあ俺とは無縁な話だ。覗いてみたい世界ではあるけれど。


「何がすごいんだ? 全部同じだろ」


 マサユキはそう呟いた。

 まあ、この世界に興味がないヤツからしたらそうなんだろうな。


「樹君、あそこ入ってみましょうよ!」


 先ほど日向ぽかが宣伝していたショップをマキちゃんが指差す。


「行こうか」


 女の子のファッションを見られるいい機会だからな。ミツキのパワーアップアイテム探しもかねて、俺はショッピングモール入り口に向かった。隣、男だけどっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る