初日ゲット出来ず沈没する俺
「つらい……」
俺はいま地獄の砂漠にいる気分だ。
昨日夕方までは天国いえっふぅー帰ったら天使がまってるぜ! だったんだよ。
昨日は、超人気ゲームざくもんの発売日だった。ナップザックを背負ってたくさんのモンスターの卵を集める。集めた卵を孵化させて育てる。育てた卵をそのまま育て続けるか、交換したり。育成ゲームだが、育てたモンスターで戦闘もできる。
「なぜだ、なぜ直販売に予約しなかった俺ぇぇぇぇ」
いつもの通販サイトに頼んでいたら、そう……ごめんちゃいと言わんばかりのてへぺろ画像が載っていた。
いや、悲しすぎて幻影を見ただけかもしれないが。
「一日後に到着――」
俺の! 初日、配信がぁぁぁぁぁぁ!!
次々初日ゲット配信が始まっていく。何でこのビッグウェーブに乗れないんだ。乗れないんだよ!!
◇
「はぁー」
そんな事があって今日の俺は朝からどんよりしている。だからさ、この男の言ってる意味が理解出来なかったんだ。
「マリヤさんに近付くな」
「はぁ……」
そうは言うがな、お前。マリヤの方からこっちにくる場合どうすればいいんだよ。
この男は俺とはまったく違う世界に住んでそうなクラスメイト。名前は確か、
スポーツ万能の爽やかイケメン。
「で、俺が何?」
「だから、マリヤさんに近付くなと。僕は彼女に一目惚れしたんだ。僕の彼女になってもらう」
「で、俺が何?」
面倒だ。俺の彼女はマリヤではない。マキちゃんだ。告白なんて勝手にやってくれ。俺は、初日ゲット出来なかった恨みを全力で学にぶつける。
「マリヤが俺にくっついてくるのはマリヤの自由だろ」
友達として、これからVの世界でも付き合っていく仲間だ。近付くななんて無理なこと言われても困る。
呼び出された教室はあまり授業が入らない第二美術室。最上階はじっこという場所だから人はそうそうこない。
普段はあまり大きな声で話さない俺が堂々と喋ったのがかなり珍しかったのだろう。学は罰が悪そうに口を閉じた。
「俺は別にマリヤと付き合ってない。マリヤが俺にくっついてるのは幼なじみだからだよ」
そう言ってやる。まあ、こう言っとけばいいだろとはっきりつげる。
「いや、彼女には、好きな人がいるんだ。だから、――もういい! とりあえず、マリヤさんは僕の理想の人なんだ!!」
あぁ、そこは一緒だな。うん、マリヤは理想の美少女だ。それは認めよう。俺のVアバターミツキにそっくりだからな!!
でも、マリヤに好きな人なんているのか? 引っ越してきたばっかりなのに何でコイツがわかるんだ?
ドアから出ていくスポーツマンを眺めながら俺はゆっくりと鞄をつかみ、初日ゲット出来なかったゲームをゲットするために家路を急いだ。
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