彼女と転校生と俺

「樹君」

「マキちゃん! これは別に、誤解だ」

「……理想の美少女ですね。おめでとうございます」

「マキちゃぁぁぁん!!」


 駄目だ。こんな結果しか想像が出来ない! 妹に話がいったということはマキちゃんにも知られただろう。俺は顔をさぁっと蒼くする。確かにマリヤは俺の理想に近い女の子だけど、今はマキちゃんのことが大好きなんだ。


「だからさ、なんでついてくるんだよーーーー!」


 転校生マリヤは帰り道もずっと一緒についてくる。久しぶりと言われたけれど、正直記憶にない。こんな銀髪美少女なんて知らない。


「ひどいなぁ。昔一緒にお風呂に入った仲じゃないか。それにお嫁さんになってくれるって約束は?」

「ないないない。俺そんなことしてないよ!」


 いや、ほんと、待ってくれ。知らない、知らない!

 誰だよ、こいつは!!!!

 ユウキは無情にスマホを打つ。家路が別れる場所まで、ずっと。


「あ、樹君」


 そして、会合してしまった。俺の彼女と銀髪美少女が。


「マキちゃん!」

「マキ!」


 俺と同時にマリヤがマキちゃんの名前を呼ぶ。


「イツキ君と同じクラスになれたんだよー! いいでしょ!」


 スカートをふわりと揺らしマキちゃんに制服を見せるマリヤ。


「……」


 マキちゃんの次の言葉が出てこない。って、二人はお知り合い? なんだ、何が起こっている?


「……ずるいです」


 口を尖らせる彼女、可愛い。じゃなかった、フォローしなければ。


「マキちゃん、この子は」

「マリヤ!」


 名前を呼ぶようにと、マリヤが迫ってくる。


「マリヤさんはただの転校生で、……なんかついてきたんだ。それで」


 マキちゃんが首を傾ける。


「もしかして、樹君、覚えてないの?」

「え?」


 覚えてないって何をですか? 俺、銀髪美少女をお嫁さんにするとか、一緒にお風呂に入った覚えはありません。


「マリヤの名字、川井マリヤだよ?」

「え?」

「イツキ君、マリヤの事は覚えてないのかぁ」

「え?」

「マリヤは私の従兄弟いとこ。小さい頃一緒に遊んだ一人じゃないですか」

「あーーー!!」


 いた、確かにいた! 銀髪の子猿みたいな、木登り大好きなのが一人。ってアイツはたしか、男じゃなかったか? 短髪、タンクトップ、短パンの立派な元気男子スタイル。俺に「お嫁さんになって!」って言ってきて断ったヤツが!! 目の前のこの銀髪理想の美少女!?


「大阪からこっちにきたんだ!」


 マリヤがにこりと笑う。


「今日からまたよろしくね」

「ちなみに部活メンバーにもなりたいそうです」


 待って、俺のアレを見られたら、色々いろいろいろいろ……。


「よろしくお願いします」


 冷や汗を流しながら俺は立ち尽くしていた。

 いったい、何が起ころうとしているんだ……。

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