🙀パペット勇者無双~顔面偏差値が低いと馬鹿にされ神殿を追われました。世の中、顔じゃないはず。無敵の力を誇るパペット装備で闘います~
朝比奈 呈🐣
リシャール国編
第1話・自称聖女がやってきた
森と湖に囲まれた美しい国リシャール。リシャール国の守り神は猫のような、熊のような愛らしい見た目をした小さな神獣の白猫熊さま。その白猫熊さまの聖女であるマダレナは穏やかな気質でのんびりしている。
中央大聖殿で聖女にお仕えしている神官達も大体が聖女マダレナと似たり寄ったりな性格をしている。その為、事なかれ主義である俺、アフォンも平穏な日々がこのまま続くのだと信じて疑わなかった。
ところが平穏な日々は、突如打ち破られた。予想もしてなかった招かれざる訪問者によって。
聖女マダレナのお世話係担当神官である俺は、崇高な使命を果たすべく彼女の部屋に向かった。
寝起きの悪い彼女は朝、一人ではなかなか起きられない。俺の一日の仕事の始まりは彼女を起こすことから始まる。
いつものようにマダレナを起こすために部屋に向かったのにそこに彼女の姿はなく、代わりに黒髪に黒目をした見知らぬ少女がいた。マダレナは? と、思う間もなくその少女から指を指された。
「あんたがアフォンね? 話は聞いているわ。今日限りあんたはクビよ。クビっ。即刻出て行きなさい」
「それは何の冗談でしょうか?」
初対面の少女からいきなり突きつけられたのは当然の解雇。ふざけているのかと思うぐらい馬鹿げた話だった。自分はこの聖殿に赤子の時からいるのだ。死ぬまで神官として一生仕えることになっている。それを出て行けとは訳が分からなかった。
「まあ、太々しいわね。あなたはキリルの才能を妬んで影で虐めていたと言うではないの。そういうのあたし許せないのよね」
黒髪の少女は忌々しそうに言ってくる。この少女には今日初めて会った。彼女に厭われる理由に心当たりなどない。しかも妬む? 俺が誰を? キリルを虐めた? キリルって誰だ???
不審に思うと少女は後ろを振り返る。彼女の背後に金魚の糞のようについてきた男がいた。金髪に青い目をした綺麗な顔の男。それは女性神官達の間で噂となっていた男だった。男は愉快そうに口角を上げていた。
────おまえがキリルだったのか!
名前なんて覚えてなかった。こいつのことなど顔が良いけど中身は残念なやつとしか認識してなかった。女性神官達がよく「顔はいいけどあれはないよねぇ」と、散々馬鹿にしていたから。
キリルは自分の容姿が良いことに絶対の自信を持ち自己愛が強すぎて仕事にならないらしい。鏡の前で自分の姿のチェックを何度もしてウインクしているだの、汗水流して鍛錬することを嫌い、訓練の時間は休んでいるだの聞いた。それなのに聖殿から出ると若い女性を口説きまくり、筆頭聖騎士からお目玉を食らったと笑われていた。
そのお馬鹿さんを背後に付けて、黒髪女は胸を張った。
「聖女のあたしが決めたことよ。意義は認めないわ」
「聖女?」
「今日からあたしが聖女になったの。そのあたしがあんたはもういらないって言ってんのよ。分かった?」
目が点になった。何を根拠に自分が聖女だと言い張っているのやら。こいつら類友かよ。賢そうには思えない。これ、絶対おつむが弱いだろう。
当代聖女マダレナは十六歳。蜂蜜色の髪に薔薇色の瞳をした清楚な感じの美少女だ。のんびり屋だけど、目の前の少女のように馬鹿じゃ無いし、お馬鹿さんでも無い。
「聖女さまなら別にいらっしゃいますが?」
こいつらと同じ土台に立つつもりはない。内心苛立ちながらも平静を装って言えば相手は目をつり上げた。
「何よ。このブサ男(お)は。ムカつく」
「こいつはマダレナの従者なので態度が横柄なのですよ。ユカさま」
「へぇ。この男が? マダレナも見る目がないわね」
黒髪女はユカと言うらしい。俺のことを良く知りもしないくせにキリルが知ったかぶりの様子で言った。それにユカがなるほどねと頷く。
「この人、髪が灰色でお爺さんみたいだし、重苦しく前髪なんて下ろしちゃってさ。きもーい。どっから湧いてきたの? オジさん」
────悪かったな!
内心苛つく。外見で人を貶めるって幼稚だな。俺は襟足を短くしているが、前髪は目元が隠れるようにわざと伸ばしていた。瞳の色が他の人とは違っているのであまり人目を集めたくないのだ。
俺のモットーは、目立たず平凡な人生を送ること。
年は十八歳だし、オジさんと言われる年齢でもない。どちらかと言えば馬鹿キリルの方が五つ年上だから、あいつの方がオジサンのはず。でも、俺って老けて見える? ショックだ。
「こいつ、こんな身なりをしていてマダレナさまの情夫だったのですよ。そのせいで自分達はどんなに辛い目にあわされたか……」
「キリルったら可哀相に。マダレナも趣味悪いわね。こんな男のどこに惚れる要素あるの? 顔面偏差値低すぎ」
なんだって? 情夫? 聖女マダレナの? 老けて見えるという言葉に軽くショックを受けていたらとんでもない話になっていた。こいつらどこまで俺を貶めれば気がすむんだ。しかも俺ばかりか、聖女マダレナも巻き込みやがった。
俺はぐっと拳を握りしめた。
「俺とマダレナさまはそんな仲ではない」
「どうだか。ねぇ」
ニヤニヤ笑うユカとキリルが気持ち悪い。キリルに足を蹴られた。
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