第三十回 キングスは今も健在。


 ――昨年の優勝者だったの。千佳ちか先輩と太郎たろうさん。


 今も健在なのは、第一試合を観た感想だ。僕の憧れは、やはり千佳先輩だ。



 可愛いルックスとは裏腹な逞しさ。……そういえば、怜央れお君と同じタイプ? 全く同じではないけど、似ているとは言える。僕は百四十センチもない身長だから人のことは言えないけど、千佳先輩も中等部三年生にしては小柄な方……とはいっても、怜央君と同じくらいだけれども、王者の風格を感じさせるほどにビッグな御方なの。


 なぜなら……


 太郎さんと二人で昨年の王者だから。



 そのあとは少しばかりの小休止……


 とはいうものの、人によってはガチのレース。モリオカートのお時間だ。


 参加は自由だったから、思いのほか参加者が多かった。運営している人々も、きっと想定外な人数だったことだろう。そこからはレース大会と転じた。℮スポーツは予定通り行われるのだけど、並行して随時、レース大会も行われることとなったのだ。


 原因は一般客。


 御家族でお買い物の序でとか、バンプラのコンテストで来訪された方々も気軽に参加できるというコンセプトを謳ったことによるものだ。そうであるなら大歓迎。


 存分に楽しんでほしい。僕と怜央君が楽しんでいるから。そのお隣では、試合を終えたばかりの千佳先輩と、そして瑞希みずき先生……のお母さんが対戦していた。周りもまた、その中でも瑞希先生はもう釘付けだ。瑞希先生のお母さんのカートがピッタリと、千佳先輩のカートに横付けしている。――速い。速過ぎるのだ。二人のカートが。


 まさかとは思うけれど、千佳先輩はモリオカートも御得意なの? いやいや、もっと驚くべきことに、瑞希先生のお母さんもモリオカートが得意と見た。そこで僕は思うの。


 ――瑞希先生と瑞希先生のお母さんとの親子対決が、是非とも見たいと思ったのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る