第168話 爛れた性活

「……お嫁にいけません……」


「どこの嫁にいくつもりなんですか? 絶対に逃がしませんよ」


 一線を越えた。もっと簡潔に言うのならばなすすべもなく捕食された。ルーミアは真っ赤になった顔を手を隠して、声を震わせた。

 それに反応したリリスはルーミアの背後から身体を密着させたまま、ムッと頬を膨らませて抱きしめる力を強めた。


 お互いに裸であるため、リリスの胸が背中に押し付けられ、ルーミアはその温もりとやわらかさにドギマギしていた。

 すでにやることはやったというのに初心うぶな反応をみせるルーミアに、リリスは「かわいいですね」と耳元で囁いた。

 そのまま首筋に顔をうずめ舌を這わせると、ルーミアの身体が小さく跳ねた。


「それっ……嫌です」


「……そうですか」


「ちょ、やっ……ひゃっ、だめ……っ」


「ダメじゃないです」


 徹底的にイジメられた首はすでに弱点と成り果ている。ちょっとの刺激で身を震わせるほどに調教されてしまったルーミアは涙目になりながら呟くも、リリスもまた性格が変わってしまったかのように強気に責め立てる。

 自分の気持ちに正直に、すぐに行動に移すようになった彼女は、以前のようにルーミアのちょっとした悪戯で手玉に取られてしまうようなことはない。


 以前まではからかい、からかわれ、主導権を奪い合うような関係だったが、今はもうどちらが捕食者なのかはっきりしてしまっているようだった。


「はぁ……はぁ……。リリスさん……こんな意地悪な性格でしたっけ?」


「人はちょっとしたきっかけで変わるんですよ? それに……変えたのはあなたです」


 リリスは滑り込ませた手でルーミアの顔を自身の方に向け、赤らんだ頬と潤んだ瞳を見つめる。そのまま顔を近付けて、かわいらしく尖らせている唇に狙いを定めて塞いだ。


「……このキス魔……っ」


「ルーミアさんがかわいいのが悪いんですよ」


「……バカ」


 不意打ちを受けて嬉しいやら恥ずかしいやら様々な感情が入り混じる表情をしているルーミアに、リリスは囁いた。

 すっかりリリスの虜であるルーミアは、その一言で語彙力を奪われた弱々しい返ししかできなくなる。


「しかし……本当に綺麗な身体ですね」


「な、何を言っているんですか?」


「あ、そっちじゃなく……いや、そっちの意味でもそうですが、あれだけ酷い傷だったのに、ちゃんと治っているんだなと思いまして」


 もれなくリリスに剥かれて、生まれたままの姿を晒したルーミアはリリスの発言を少し勘違いして、顔が燃えるように熱くなり声が裏返った。

 しかし、リリスの発言はそのような意図をしたものではない。


 ルーミアはその身体を剣で貫かれている。

 背中もお腹も穴が空いた身体だったが、その傷は見る影もなくきれいさっぱり消え去っている。ルーミアの白魔導師としての能力の高さに感心したリリスの一言だったが、盛大に自爆したルーミアは恥ずかしさで顔を背けた。


「大丈夫です。ルーミアさん、綺麗ですよ」


「……あ、ありがとうございます。あの……くすぐったいです」


 ルーミアの勘違いに乗っかって、リリスはすべすべとしたお腹に手を這わせ指を沈める。柔らかくも引き締まり、リリスは撫でまわしていると、ルーミアはムズムズとする何かを感じて訴える。しかし、その指は一向に止まる気配も離れる気配もない。


 やがて、その手がゆっくりと下に向かっていき、太ももに差し掛かったところで危機を察知したルーミアはその手をがっちりと掴んだ。


「リリスさん?」


「ルーミアさん、離してください」


「……一応聞いておきますが、離したら何をするつもりですか?」


「何って……ナニですが?」


「あの……身体がもたないので勘弁してください……」


「仕方ありませんね。一回休憩で一緒にお風呂に入りましょうか」


 激しい運動を繰り広げてルーミアは疲弊していた。間髪入れずの二回戦突入は今度こそ死んでしまうかもしれないと顔を青くさせて懇願する。またしても無慈悲な笑顔で断られてしまうのかとびくびくしていたが、リリスは意外にも素直に聞き入れた。


 ちょうど身体を綺麗にしたいと思っていたところなので、その休憩はありがたいと思うルーミアだったが、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、むしろそちらの方が危険なのではないかと気付いてしまった。


「あのー、休憩なんですよね? 私、休めますか……それ?」


「さぁ? それはルーミアさん次第じゃないですか? あんまりかわいく煽られると我慢できずに手が出てしまうかもしれません」


「あの……別々にとか」


「今からもう一戦ヤリます?」


「……はい、すみません……」


 身の危険を感じるルーミアは念のためにおずおずと確認を取るが、リリスは心配になるほどいい笑顔で不穏なことを告げた。

 重ねてもう一つ尋ねるも、有無を言わさぬ圧力でリリスの笑顔が真顔に早変わりし、ルーミアは諦めて降伏を決め込んだ。


「早めに旅行を切り上げて帰ってきてしまったので、その分しっかり楽しみましょうね」


「ひぇ……」


「ね、ルーミアさん」


「ひゃい……」


 上擦った声を絞り出して返事をする。

 同居しているということもあり、これからこのような日常が紡がれることになるだろう。

 タガが完全に外れたリリスと送る、爛れ切った性活。身体はもつのか、命はもつのか。愛する彼女との新生活を不安に思うルーミアだった。


 ◇


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