第42話 指名依頼、失くしものを探せ
ルーミアはある人物から指名依頼を受けることになった。
指名依頼というのはその名の通り依頼者が特定の人物を指名して依頼をするというもの。失敗できない依頼を実績のある高ランク冒険者に遂行してもらいたいといった理由で行われるパターンが多いが、今回ルーミアが指名されたのはそれだけの理由ではない。
依頼者はキリカ。以前盗賊団のアジトにて捕まっていた姉弟の姉の方だ。
その内容はかつてルーミアが捕獲した盗賊団がアジトにしていた洞窟の調査。そして、彼女達が捕まった際に取られてしまっていたペンダントを見つけてほしいというものだった。
彼女は一度ルーミアに助けられている。それだけの関係ではあるが、信用に値し心を許すには十分すぎる。短時間で盗賊団を壊滅させられるだけの実力もあり、口約束もしっかり守り救出してくれたという事実。暫定一番頼りになるということで彼女の元に指名が舞い込んだという訳だ。
指名依頼は指名を受けた冒険者が了承をして初めて成立する。ルーミアはキリカの名前を出されただけで二つ返事で了承した。
「さてさて……問題はまだ残されているか、ですね」
盗賊団を一斉捕獲したのち、アジトの入り口は封鎖されていた。
そのため、ルーミアが大暴れした後は誰も出入りしておらず、そのままの状態で保たれているはずだ。
どこかにペンダントが隠されているのなら根気強く探すだけだが、ルーミアが突入する前にどこかで売られてしまっていたりともうアジトに残されていない可能性もある。
それを分かっているからこそキリカも依頼のメインは残された盗品がある洞窟の調査としたのだろう。その盗品の中に自分たちの物があるかは定かではないが、万一なかった場合でも依頼として成立するような依頼内容にしているということだ。
仮に依頼達成の条件があるかも分からないペンダントの発見だとしたら、最悪の場合依頼を成功させる芽が残されていない可能性もある。
無かったらそれはそれで仕方ない。でも、もしあるのなら見つけてほしい。
キリカはそう思い、ルーミアに依頼を託したのだ。
◇ ◇
「一応ここから見てみますか」
ルーミアはヴォルフと戦闘を行った大部屋へと来ていた。
そこは広く、あちこちに盗品らしきものが見受けられる。もしあるとするのならそこが一番可能性が高いだろうと踏んでいの一番にその場所を探しに来た。
「えっと、星形のペンダント……キリカさんとユウくんのお揃い、だったよね。見つかるといいけど……」
姉弟でお揃いのペンダントということで、もし見つかるのなら二つセットで見つかるはずだ。主な特徴は星形ということしか分かっていないが、その情報だけを頼りにあちこち漁る。
「あっ……なんだっけ? サイクロン……何とかって剣だ。そういえば放置してたっけ」
盗品の山を掘り起こしながら移動していくルーミアの目にふと入り込んだのは、かつて苦渋を舐めさせられた緑色の魔剣。ヴォルフとの戦闘際に蹴り飛ばしたそれがそのまま抜き身のまま転がっていた。
「すごかったよねぇ、これ。あの斬撃、私でも出せるのかな?」
そういって拾い上げたサイクロン・カリバーを両手で持ち、構えて魔力を込めてみるも何も起きる気配はない。
「うんともすんとも言わない……。やっぱこういうのって使い手を選ぶんだよね。剣に選ばれないと無理か」
薄々は分かっていた。剣の才能のないルーミアがそれに見初められることはないと。
魔剣は魔剣と呼ばれるだけあって凄まじい力を秘めている。その代わり誰でもその力を使える訳でなく、平たく言ってしまえば魔剣との相性というものが存在する。
「魔剣に認められるだけの実力があるなら、盗賊団の親玉なんてやってないで冒険者でもやってればよかったのに……って今更言ってもしかたないか。そんなことよりペンダント、探さないと……!」
手に持ったサイクロン・カリバーを見よう見まねで数回振ったルーミアは、少し離れた場所に落ちていた剣と同じ色の鞘を拾い剣をしまう。少し考えが逸れてしまったが本来の目的は見失っていない。気を取り直してキリカのペンダントを探すのだった。
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