第34話 その一方で②
「アレンさん、また期間オーバーで依頼失敗です。いいかげん学んでもう少し難易度の低い依頼を受けるべきです」
「まて! あと少し時間をもらえれば絶対達成できる。だからっ」
「以前もそう言って納期をずらしても結局やれなかったじゃないですか。パーティリーダーならもう少しパーティの実情を客観的に見れないとこれから先困りますよ?」
「くそっ」
アレン達は依頼失敗を繰り返していた。
以前は難なくこなすことができていた討伐依頼ができなくなっている。その変わらない事実にパーティメンバーは気付き始めている。だが、リーダーのアレンだけがそれを見て見ぬふりをしようとする。
前はできた。だから今もできるはずだと信じて疑わない。
それでも、結果は失敗が積み重なるという望まぬ形で現れる。
「くそ、やっぱり白魔導師を追加して以前と同じ編成にした方がいいのか……?」
「だが、俺達のパーティに入りたいと言ってくれる白魔導師は早々見つからないと思うぞ? ヒナはどう思う?」
「そうですね。ザックさんの言う通りだと思います。短期間で何人もパーティメンバーを入れ替えていることが原因で、ギルドの方も人員の斡旋にいい顔はしていないようです」
戦士の大男ザックに話を振られた魔法使いの少女ヒナは困ったように同意した。
アレンはカンナを初めとして何人もの白魔導師をパーティ追放した。それは人員を斡旋したギルドの方にも伝わっている。パーティメンバーの募集に関して足りない職業の冒険者を紹介するなど人員斡旋も仕事の一つではあるが、何度も入れては追い出すを繰り返すパーティを手放しで紹介はできないし、進んで入ろうとする冒険者も中々いない。
「依頼も失敗続きです。あの人の言う通りもうひとつ依頼の難易度を落としましょう。そうすれば私達でもなんとかなるはずです」
「そうだな。これ以上失敗して恥はかきたくないからそれが一番だろ」
「いいのか? 今回のヴェノムスパイダー討伐の依頼だって前は簡単に達成できてたんだぞ? 今回は白魔導師を連れて行かなかったのが裏目に出ただけだ。そうじゃないのか?」
アレンは今回のヴェノムスパイダー討伐の依頼をザック、ヒナ、自分の三人で受けた。これまで追加した白魔導師がみな役立たずだった、それならば余計なメンバーを入れずこのメンバーで挑めば以前のように上手くいくのではないかという淡い希望。
しかし、原因はやはり白魔導師の有無ではない。
「アレンさん、そうは言っても依頼を達成できないと報酬はもらえません。パーティの懐事情を考えると小さな依頼でも成功させておくべきです」
「ちっ、仕方ないか。分かった、次の依頼は少し簡単なものにしよう。それまでに今後のパーティをどうするのかよく話し合わないとな……」
「……ああ、そうだな」
アレンは現実が見えていない。
だが、ザックとヒナは薄々気付いている。
このパーティを上手く回すために必要なのはただの白魔導師ではないと。
誰がこのパーティを陰で支えていたのか、それを今更になって実感していたのだった。
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