第4話 強化倍率
不運な事故であったが機転を利かせて何とか凌ぎ切り、己の新しいスタイルのきっかけを掴んだルーミア。
自分で自分を強化して己の力で肉弾戦を取る、白魔導師らしからぬ戦闘法。
それは一度冷静になって考え直した後でも有用なのではないかとルーミアは感じていた。
だがその戦闘法を身に着けるためにはある程度の強化倍率の感覚と身体を動かすイメージを掴まなければならない。
ルーミアが初めに着手したのは強化の段階分け。
無我夢中というわけではないが、生存本能故か強力な支援魔法がかかってしまったルーミアはその制御に手間取り、身体を思うように動かすことができなかった。
しかし、ルーミアもこれまで白魔導師としてやってきた経験がある。
支援魔法発動にかけた魔力消費量や強化の程度の感覚はなんとなくではあるがすぐにつかめた。
「
その感覚に従って
平常時の強化を一として状況に合わせて強化段階を引き上げていく設定にしたことで、うまく制御できている。
「うん。今は
ルーミアは強化した身体をぎこちなく動かしながら呟いた。
肩を回したり腕を振ったりして確かめているが、これ以上強化段階を引き上げるのは危険と感じたのか浮かない顔だ。
しかし、無理は禁物。
自分の身体で制御できない強化を施す勇気はルーミアにはまだない。
(一歩踏み込んだつもりが次の瞬間自分の身体が前方に射出されていました、なんてことになったら困るからね……)
日頃から身体を動かすことに慣れていなかったルーミアにとって感覚が変わるというのは大きなもので、すぐに適応できるものではない。
故に時間をかけて身体を強化状態に慣れさせないといけない。
「そのためにやってる
ルーミアの言うこれ。
それは
段階的には一段階目の強化なため、劇的な強化を施しているわけではないが、それでもひ弱な少女が一般男性並みの力を得るのと変わらない。
身体能力の向上は戦闘のみならず日常でもかなり役に立つようで、ルーミアはこの試みを実施して以来一度も強化を解除していない。
それでも魔力が尽きることがないのは、彼女の恵まれた資質だろう。
常に魔法を行使している状態ということは、当然己の魔力を垂れ流し続けているのと同義。
魔力を他のもので補うということもしていないルーミアは、自身の魔力だけでも常時
恵まれた魔力を惜しみなく使い繰り出される魔法は、その効果も跳ね上がるのだがルーミアはそんなこと気にも留めていない。
「もう少し馴染んできたら今度は討伐依頼を受けて実戦で試してみようかな」
今はまだ身体を慣れさせることを優先して軽い運動のようなもので留めて調整に努めているが、ある程度馴染んできたら実践に移してみたい。
覚えたての芸を披露したい逸る気持ちを抑えて、ルーミアは引き続き身体の調子を確かめるのだった。
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