怪人ニシキの一念発起 5
もちろんその性根を容赦なく叩きのめすという意味だが、それはニシキにもちゃんと伝わったようだ。
「すいまえんでした容赦多めでお願いします」
声が震えていた。
「ふむん、まぁいいでしょう。先輩は見栄えはかなり良いほうですしよほど無理と言うのでなければ万人受けするコミュ力もあります」
「ほう、ニノマエちゃんの彼氏と比べても?」
空気のひび割れる音を聞いたような、そんな錯覚をするほど冷たい目でニノマエに睨まれた。
「この一回だけは聞かなかったことにしますが次それを言ったらこの件を即座に新聞部員にバラします」
「ほんとうにごめんなさい」
「次は無いので覚悟して喋ってくださいね。続きですけど、だからスペック上の不安は無いと思って良いんです。生徒会長が特殊な趣味だったらわかりませんけれどそれはもう回避できないので考えても仕方がありません」
「なるほど…それはまあ、そうかな」
「とりあえず怪人ニシキはあだ名の割に一般受けする人物だと思います」
「凄く頷き難い振りだなー!!」
「その名の通り存在自体が一般的にはドン引きですが相手も変人であることにワンチャン賭けろって言われたいんです?」
「いや、過分な評価恐れ入りますありがとうございます」
「素直な態度は美徳だと思います。そんなわけで、つまりもう他人からアドバイスしても修正できそうなところは特にないです」
「言い切るなー。えっと、性格とかは」
「性格なんて大して関心のない他人に言われた程度でおいそれと変えられるもんですか。ぶつかったらあとは折るか折られるかだけです」
「わあすごくちからづよい」
「仮に先輩が変われるとしたらそれは」
ニノマエは一度言葉を切ってじっと見つめる。その空白に引き寄せられるようにニシキも黙って聞く姿勢に入った。
十分な間を取って、続ける。
「ニカイドウ生徒会長に何か言われたときだけじゃないですか?」
長い、長い間があった。
ニノマエは床に視線を落として石のように微動だにせず考え込んでいるニシキを、やはり微動だにせずじっと見下ろしている。
「そうだな。それもそうだ」
すっきりしたような表情で顔を上げる。
「理解してもらえたようで嬉しいです。先輩は立場も生徒会長と副会長で絶好のポジションにつけています。目に余るような減点ポイントも無いと言って差し支えありません」
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