怪人ニシキの一念発起
怪人ニシキの一念発起 1
【眼鏡っ娘ニノマエ曰く:驚くべきヘタレ具合です】
「それではお先に失礼します」
生徒会室の扉を閉めて、男女の影が廊下に並んだ。
「解せないですね」
女子生徒が呟く。
「ん?何が?」
男子生徒が問う。
「何が、と言いますか」
女子生徒、ニノマエは立ち止まって男子生徒、ニシキを見上げた。
片や身長140cm台のややふっくらした小柄ながら凹凸のくっきりしたスタイルで銀縁丸眼鏡の少女。
ヘアバンドでぴっちりと前髪を上げた整った黒髪や手入れの行き届いた細い吊り眉から絶え間なく神経質そうな気配が立ち込めている。
片や身長180cmを超える筋骨隆々と言っても過言ではない少年。
青年と呼んだ方が相応しいかもしれない精悍さと、加えて整髪料で逆立った真っ赤な髪とその割に人懐こそうな垂れ目が絶妙な胡散臭さを醸し出している。
身長差40cmにも及ぶ高低差でありながら二年生のニノマエに萎縮の気配は微塵も無く、むしろ三年生のニシキが気を使っている雰囲気すらある。
「さてさて目途も立ってきたことだし、あとは私がやっとくから君らは先に上がっていいよ」
ほんの数分前、我が校自慢の美人生徒会長ニカイドウがそう言ったのは確かで、彼女の指す君らというのはその場に居た生徒会メンバーのことであり、今日の場合は副会長のニシキと書記のニノマエのことでなんの間違いも無い。
日頃からニシキの仕事を手伝って居残り気味だったニノマエはこれ幸いと、そそくさと荷物をまとめて引き揚げてきたのだが。
「私が帰るのは当然として、どうして先輩は残って会長を手伝わなかったんです?」
「どうしてって、だって帰っていいって言われたら普通帰るでしょ。つーか俺が好き好んで仕事すると思ってるならまだまだ分かってないなニノマエちゃん」
胸を張って答えるニシキを見据えてキリリと柳眉を吊り上げるニノマエ。
「分かってないのは先輩ですよ!?もう!残れば会長とふたりきりになるチャンスだったじゃないですか!」
「あ。うーん、まあそう言われりゃそうだけどさぁ」
「会長のこと好きなんでしょ!?」
「ちょっまっ」
「まさかもう諦めたんです!?」
「ニノマエちゃん待って!声が大きいから待って!」
血相を変えたニシキの制止にハッとして周囲を見回す。
幸い誰かに聞かれた様子は無さそうなことを確認してふたりして胸を撫でおろす。
「そのために生徒会に入ったんでしょう?こういうチャンスを生かさなくてどうするんですか」
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