第3話 アーカイブされる日々 episode3
「ようやくとれたね」
きらっと光る免許証の裏面に記載された「自動二輪限定解除」の印字。
麻奈美がにっこりとほほ笑んで言ってくれた。
印字は多少曲がってはいたが、これで俺は1000CCだろうが、実際あるのかどうかは分からねぇけど5000CCだろうが運転することが出来る。(興味本位で調べてみたらなんとアメリカで実在しているようだ。だがアメリカの様な広大な大地を想像してみれば、あっても不思議では無い様な感覚に陥ってしまう)
免許取得は教習所に行くと言うのもあるが俺は一発免許にこだわった。
中型はあるがそれでも教習所に行けばかなりの費用が発生する。
最も確実性を見るのなら教習所の方が部が高いのは言うまでもない。
しかし、そんなに金をかける訳にはいかない。
費用を向けさせるのなら、少しでも彼奴(ホンダCB1000R)にかけてやりたいからだ。
だが、一発免許は思っていたよりも難関だった。
中型(普通自動二輪免許)を持っていたにせよ、乗る機会は少ない。
最近ずっと原チャリ、スクーターしか載っていないのが現状だ。そこで麻奈美の愛車『ホンダCBR400R』を借りて乗ってみた。
重い! 正直よくこんなにも重い車体を麻奈美は女のあの非力な躰で、乗り回しているものだと感心してしまう。
「ああ、倒さないでよ郁美」
「わぁかってるって!」
ま、普通に乗る分には難なく運転は出来る。
特にレーサーでも目指している訳でもなく、ただ単に日常乗りやツーリングを楽しめればそれでいい。
そんなもんだ……と、まぁ普通の事だと思うが、乗るには俺はCB1000しかねぇと心に決めていた。
まず一発免許って言うのは、取得させるための物じゃない。しいて言うならば、今すぐにでも乗りこなせる技量があるから、免許を発行してもらう。いわば『お前はもう乗っても大丈夫だぜ』と、お墨付きを頂くという事だ。それは、裏を返せば、受けるのなら受けてもいいが、俺らはお前を試して落としてやる! という事だ。
少しのミスが大幅な減点になる。
何も練習せずに乗り込んでみろ、まさにそれは自爆を意味している。
かと言い、何か特別な技は必要なのかと言えばそうでもないらしい。
おやっさんが言うには「バイクって言うのはな、排気量が大きくなれば、なるほど扱いが難しい。確かに重量もあるがそれよりもパワーをいかに自分がコントロールしてやるのかが重要だ。ま、簡単に言えば全てに言えることなんだが、馴れだな実際」と簡単に言っているが、試験場に行ってその事を思い知らされて帰って来た1回目の試験。
見事に落ちた。
試験に使った教習車は750CCのバイクだった。
正直に言おう。400CCと750CCの違いは思っていたよりもはるかに違い過ぎた。
「慣れか」
確かに言われる通り、次の試験の予約をすぐに入れ、また落ち。またすぐに試験の予約を入れる。
一回目よりも二回目。二回目よりも三回目。
試験の減点される要因を気が付けて来たのと同時に、750CCと言う排気量にも躰が馴染んできたような気がし始めてきていた。
四回目の試験。
試験が終了して、結果が発表された。電光掲示板に俺の番号は今回も点燈することはなかった。
その日の結果は事前に分かっていた。
技能試験は一通りほどなく終え、全ての項目をこなしてゴール出来た。
「よしゃぁ! 今日は合格できるぞ」そうイキ込んで、ワクワクしていたが、試験管から思いがけない言葉が帰って来た。
「君18歳になってまだ間もないよね。たぶん相当練習はしてきていると思うんだけど、なかなかいい感じだったよ。……今日は」
「ありがとうございます」もう合格確定だ。そう思っていた。
「うん、そうなんだけど、君の場合少々辛めに採点させてもらったよ。わかるよね。その意味」
なんだその意味って?
そして試験官は言う。「君さ最後のつめが甘いんだよね」
その一言で今回もダメだったという事が言い渡された。
「はぁ」とため息をしながら次の予約を入れた。
バイトの予定を入れると次に受けられるのが2週間後だった。
18歳の誕生日を迎えてからすでに1ヶ月が過ぎている。
教習所だったらもうすでに講習時間もクリアーして免許を取得出来ていたかもしれない。
それにだ、練習に麻奈美のバイクを使う為に……基、見るに見かねてなのかはわからねぇけど、おやっさんが廃車寸前の750CCのバイクを貸してくれた。
「此奴は、もう車検切れだし、あちこちかなりガタが来ているが走ることはまだ出来る。公道を走らせるにはかなりオーバーホールしねぇといけねぇがな。うちの裏で乗る分には道交法には違反しねぇ。ま、此奴で少しは感覚をやしなうんだな」
と、後押しをするように差し出してくれたバイク。
本当に助かる。実際400CCでは物足りないと感じて来ていた。
まぁそう言うのもあり、この1ヶ月間ほとんど自分の家には帰っていない。
親父は帰って来ることはまずねぇだろう。仮に帰ってきたにせよ俺がいなくたって何も気にすることはない人だ。
第一家に帰ってもバイクの練習は出来ねぇからな。
こうなれば麻奈美の所はすでに自分の家化しているような、そんな錯覚さえも起こし始めていた。
「なぁ郁美よ。お前、麻奈美と籍入れてしまえよ」
晩酌してほろ酔い気分になっているおやっさんがニまぁ―とした顔で言う。
「な、なに言ってんだよおやっさん。俺たちまだ高校生だろ」
麻奈美も「そうねぇ、校則に結婚しちゃいけないって言うのは書かれていなかったと思うよ。確か男女交際については『節度ある交際』をしろってしか書かれていなかったと思うけど。高校生が結婚しちゃいけないって言うのもないんだし、郁美は18歳、私は17歳。女は16歳から婚姻が認められているんだから条件はバッチリだよ」
「まて、麻奈美は俺にとって幼馴染だし、ちいせい時からずっと一緒だったから……」
「だから何?」
だから何って……。え―――――っと!
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