第一章 その二十二 情報収集
コマルの爺ちゃん失踪事件。その概要は分かったものの、現時点では何の手掛かりも無い事も分かった。鳴神と失踪した中田史郎が同じ鬼倒士だとして、果たしてそれが史郎発見に繋がる手立てになるのか皆目見当がつかない。これは地元警察の仕事なのではなかろうか。
本日色々あった中の『次の』件はリナッパの事だ。号泣後にメイク直しを終えたツユから語った内容はこうだった。
先の『コンビニエンスストア老人頭部遺棄事件』のニュースを見るとすぐさま「シロちゃんだったらどうしよう」の言葉と共に様子がおかしくなったリナッパのその後だ。ツユの話によるとリナッパは帰宅後その日の夜の仕事を休み、昼の介護の仕事も休みを取るように薦めたのだが「確かめなきゃいけない事がある」と出勤する気でいたらしい。
リナッパの言葉に出てきた『シロちゃん』なる人物は彼女の昼間の勤め先である介護施設の利用者で、やや認知症気味老人だそうだ。数日前に介護施設から姿を消し、捜索願が出されているらしい。
「また爺さんの失踪か。しかも史郎さんにシロちゃんと来た。シロちゃんのフルネームは聞かなかったのか?」
妙な共通項に溜息をつき、新屋敷はツユに質問した。
「そこ聞くほど頭回んなかったよ。りなはそのシロちゃんが何かの事件に巻き込まれたんじゃないかってトコが不安だったみたい。確かめたい事ってのも職場でシロちゃんの状況聞きたかったんじゃない?・・・んー、でもそれだけじゃない気もするんだけどね。」
ツユの目がすっと冷めるのを感じた。その街の夜の蝶や蟷螂達を散々見てきた彼女には何か別のものを感じる所があったと見える。
「まぁ、そっちは俺関係無さそうだからいいけど。」と鳴神が無神経な言葉を吐く。と同時に新屋敷の拳が鳴神の脇腹にクリーンヒットした。
「今夜もアタシ早めに帰るね、コマルちゃんここには置いとけないし、今夜はアタシんちに泊めるから。コマルちゃん!お姉ちゃんのおウチ行こうか♪」
ツユの顔は先程とは打って変わり期待と喜びが隠せない様子になっている。返事もせずに笑顔で帰る様子を見せるコマルを見てもう涙ぐむツユ。・・・史郎が見つからなかったら引き取りそうな勢いだ。
「ツユさん、気を付けて下さいね。俺も今日捕まったんすから。」
ツユは「どういう意味だ。」と「お前と一緒にするな。」を合わせた眼光で鳴神を射抜くと、鳴神はその場で崩れ落ちた。もちろん新屋敷のしつけによる失神だが。
「ありがと、また明日ね。」
ぺこりと頭を下げるコマルの手を取り、ツユは店を出て行った。
入れ違いに今日の客が続々と来店し、今に至る。
鳴神が起き上がったのはカウンターが満席になる頃だった。
さて、私は店内の客の噂話から情報収集する事にしよう。色々あった本日の問題の最大点。コンビニに捨てられていた老人の頭の件についてだ。
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